聴神経腫瘍(acoustic neurinoma, vestibular schwannnoma)

うーん、これは聴神経付近の3Dを追加して欲しかったなー。

すみません、気がつきませんでした。

聴神経腫瘍(acoustic neurinoma, vestibular schwannnoma)とは

ほら、よく見ると聴神経腫瘍っぽいのがあるやん?
所見によっては追加撮影が有効だったりする事も多いから、ボケッと撮影してるとアカンで。

聴神経腫瘍の概要

今日は聴神経腫瘍についてレクチャーしてくで。聴神経腫瘍は神経鞘腫の1つなんやけど、神経鞘腫ってどんなのか分かるか?

神経鞘腫ってのは教科書的に言うと、神経鞘のSchwann細胞から発生する良性腫瘍の事を言うねん。Schwann細胞は末梢神経の軸索を取り囲む髄鞘を形成している細胞の事や。

簡単に言うと、末梢神経を保護したり栄養したりしてる細胞や。この細胞から腫瘍が発生する事があんねん。

これは末梢神経がある部位が該当して、頭部やとほとんどが聴神経からやな。

主な特徴としては次の通りや。

  • Schwann細胞から発生する良性腫瘍
  • 脳神経の中で嗅神経と視神経以外はSchwann細胞からの神経鞘を持っているため、神経鞘腫が発生する可能性がある
  • 原発性脳腫瘍の10%未満で、聴神経鞘腫が90%、三叉神経鞘腫が4%、他、顔面神経鞘腫など
  • 中年女性に多い
  • 発育は緩慢
  • 聴力低下や耳鳴り、ふらつきなどで発症
  • 聴神経鞘腫はほとんどが内耳道口に発生して、内耳道を拡大しながら小脳橋角部に進展していく

ちなみに神経線維腫症2型ってのがあって、これは両側に聴神経鞘腫が発生すんねん。発症年齢が平均して20歳と若いのが特徴やで。

神経鞘腫については、こっちでも話してるから参考にしてみてや。

聴神経付近の解剖

解剖も載せておくで。聴神経は蝸牛神経と前提神経から出来てんねんで。学生ん時やったやろ、覚えてるか?

ちなみに三叉神経は5番、顔面神経は7番、聴神経(内耳神経)は8番やで。

ほんで脳幹から脳神経が頭蓋外に出ていく部分を小脳橋角部と呼んでんねん。

聴神経腫瘍のほとんどは、この小脳橋角部に出来るで。

顔面神経 聴神経 三叉神経
脳神経解剖

聴神経腫瘍の臨床症状

主な症状は、聴力低下や耳鳴り、めまいなんかや。

これらの精査で発見される事が多いな。中には突発性難聴がキッカケで発見された例もあったな。

他には顔面神経も近くに走っている事がら、顔面の痺れや麻痺なんかが症状として現れる事もあるで。

聴神経腫瘍の治療法

治療法には大きく2つがあるで。外科的と放射線治療や。

  • 外科的治療 → 完全切除すれば基本的に再発しない。一方で聴力障害や顔面神経が残る事もある。
  • 放射線治療 → 侵襲性が低く術後の後遺症も少ない。しかし再増大する事もあり、その時は手術になる事が多い。

これらは腫瘍の大きさや状態、患者年齢なんかによって決められる事が多いで。

腫瘍が小さくて特に症状も無ければ、経過観察する事もあるわ。

画像所見

聴神経腫瘍の画像所見

次に画像所見についてやな。

MRIやとT1強調で等信号、T2強調やと高信号、造影ではよく濃染されるわ。

石灰化はほぼ無いんやけど、内耳道の拡大についてはCTの方が有用って話もあるな。

内耳道に限局したintracanalicular typeと呼ばれるものや、内耳道の拡大しないmedial typeも5%の割合で存在するで。

T2WIT1WICE
聴神経腫瘍(鞘腫)高信号等信号著明な造影効果内耳道に限局したタイプと内耳道の拡大が無いタイプも5%で見られる
三叉神経や顔面神経鞘腫も同じ信号パターン

ちなみに、三叉神経鞘腫も顔面神経鞘腫も同じ信号パターンやから一緒に覚えとき。

実際の症例

右聴神経腫瘍

実際の症例や。右の小脳橋角部に聴神経腫瘍を認めるで。冠状断と薄層スライスで見やすいな。

頭部MRI-聴神経腫瘍3
上段左から拡散強調、T2WI、T1WI、下段左からFLAIR、T2WI冠状断、HeavyT2

70代 男性 難聴精査

こっちは70代男性の例や。右聴神経腫瘍に造影される腫瘍が確認出来ると思うで。

頭部MRI-聴神経腫瘍2
左上からHeavyT2、T2WI冠状断、下段が造影後の横断像、矢状断像

20代 男性 難聴とふらつき
頭部MRI-聴神経腫瘍
左上からT2WI、T1WI、左下からFLAIR、HeavyT2

あまりパターンとしては一般的やないかもしれんけど、聴神経腫瘍が大きくなって脳幹を圧迫する程度までになると早めの治療が必要になる時があるで。大抵はその前に聴力低下などがあるから発見されてる事が多いんやけどな。

ちなみに最近はオペよりも定位放射線治療を行うケースが増えてきてるみたいやな。

鑑別診断のポイント

髄膜腫や類上皮腫など

鑑別診断の対象としては、髄膜腫や類上皮腫、血管性病変、転移病変などや。

小胞橋角部に出来た髄膜腫は鑑別が難しい事があんねんけど、石灰化があったり、T2強調の信号強度が低かったり、dural tail signがあったり、内耳道の拡大が見られない事なんかをチェックすれば髄膜腫と診断出来るで。

ちなみに聴神経腫瘍からは外れるけども、三叉神経は腺様嚢胞癌や扁平上皮癌の転移の好発部位やから、これも豆知識として知っておくとええで。鑑別方法は多発しているかどうか、脳実質病変を含むかどうかや。

転移の場合は原発がある程度の大きさになると多発している事が多いとされているで。

まとめ

さて、今日は聴神経腫瘍についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

神経鞘腫はシュワン細胞から発生した良性腫瘍で、末梢神経がある部位に発生する可能性がある

神経鞘腫は聴神経と三叉神経で94%を占めて、聴神経腫瘍は内耳道口から小脳橋角部にむけて進展していく

神経鞘腫はMRIで造影効果が高い

他には1度でも実際の画像を見ておく事やな。所見としては特徴的やから、1度見ておけば次に見た時に選択肢に上がると思うで。

画像所見の中には、実は普段ほとんど遭遇せんヤツもあんねん。ワシは、それまで覚える必要はあらへんと思うてる。都度で調べればいいだけやしな。

ただ逆に絶対に知っておかなアカンヤツも沢山あんねん。これは一々調べてたら時間がいくらあっても足りひん。

今回の聴神経腫瘍はたまに見る疾患やけど、必須で覚えておくべきヤツやで。

このレクチャーは頻度が高いやつを中心に話してるから、是非とも覚えておいてもらいたいもんやで。

ほな、精進しいやー!