急性リンパ節炎(acute lymphadenitis)

なんかな、ここ数日間のどが痛いねん。唾飲み込むのも痛くなってきたわ。

風邪じゃないですか?

おうおうおう!自分、勇者やんけ。かなりの勇者やんけ!

医者のワシを診断するっちゅー事は、それなりの覚悟を持って言っとるんやろな?

ワシに弓引くちゅー事はそういう事やで。ええんか?ええんやな?

よし!その覚悟、見事や!せやったら今日のところは勘弁したる。

しかしや、ちゃんとレクチャーは聞いてけや。今日は急性リンパ節炎をレクチャーしてくでからにな!

急性リンパ節炎(acute lymphadenitis)とは

急性リンパ節炎の概要

まずは急性リンパ節炎がどんなのがあるかやな。まず大きく4つに分けられるで。これらの鑑別は重要やねん。治療法が違ってくるからな。

順に説明してくで。

ウィルス性リンパ節炎

1つめがウィルス性リンパ節炎や。頚部における反応性リンパ節腫大の原因では最多やな。保存的治療で自然軽快する事が多いで。

急性化膿性リンパ節炎

2つめが急性化膿性リンパ節炎(acute suppurative lymphadenitis)や。

ブドウ球菌や溶連菌が主でリンパ・血行性経由でリンパ節に到達するパターンや。膿瘍を形成する事もあるで。

発熱や頚部痛と圧痛を認める事もあんねん。オトガイ下、顎下、上内深頚、咽頭後リンパ節に好発するで。

結核性リンパ節炎

3つめが結核性リンパ節炎(tuberculosis lymphadenitis)やな。徐々に増大するんやけど無痛や。

肺結核の合併は1/3~1/2であると言われとる。後頚三角部や内深頚リンパ節に好発するんや。

菊地病

4つめが菊地病(kikuchi disease)や。亜急性に進行する組織球性壊死性リンパ節炎で、原因不明なんやけど自然軽快する事が多いで。若い女性に多いな。発熱とリンパ節腫大が主な症状や。疼痛を伴う事もあるで。

ちなみにこれらは主に頚部に出る事が多いんやで。

急性があるって事は慢性もあるって事ですか?

その通りや。慢性リンパ節炎は急性リンパ節炎が治癒しないまま長引いた状態の事を指すねん。この状態になると、リンパ節が周囲組織と癒着したり化膿したりするケースも出てくんねんて。

治療法は投薬治療が基本や。抗菌薬や消炎鎮痛薬なんかやな。結核性の場合は結核に対する治療が必要やで。

頸部リンパ節解剖

画像所見

急性リンパ節炎の画像所見

次に各々の画像所見や。

ウィルス性リンパ節炎は、左右対称の多発リンパ節軽度腫大が特徴や。内部は均一で中心に壊死は認めへんで。造影では均一に軽度染まって、周囲に炎症波及は無い事が多いな。

次に化膿性リンパ節炎やけど、これは片側の大きなリンパ節腫大が特徴や。大きさとしては2~3㎝以上を呈する事もあるで。初期は中心壊死はあらへんけど、進行すると壊死を認めて辺縁のリング状の造影効果を認めるで。周囲への炎症波及も高度に伴うんや。

結核性リンパ節炎は、片側の無痛の小さなリンパ節腫大や。周囲への炎症波及は軽度やけども進行すると中心壊死が起きるで。甲状腺癌のリンパ節転移との鑑別を必要とする時があるけども、壊死領域のADCの低下とT1が高信号では無い場合は結核性リンパ節炎とする事が出来るで。

最後に菊地病やけど、片側の小さなリンパ節腫大で炎症波及もあるで。レベルⅡの発生頻度が高いで。T2でリンパ節内の辺縁部に低信号を認めるのが菊地病の特徴だったりするで。

簡単に纏めた表を添付しておくで。

特徴画像所見
ウィルス性リンパ節炎反応性リンパ節腫大の中で最多の原因
自然軽快する
左右対称にリンパ節が腫大
中心壊死は認めず、均一に軽度造影され、周囲に炎症波及は認めない
化膿性リンパ節炎発熱や頚部痛がある
膿瘍を形成する事もある
片側に大きなリンパ節腫大
進行すると中心壊死が起こり、周囲に炎症波及を認める
結核性リンパ節炎徐々に増大するも無痛
肺結核を1/3~1/2で合併する
片側の3センチ以下のリンパ節腫大
進行すると中心壊死が起こるも、周囲への炎症波及は少ない
菊地病原因不明 自然軽快する小さなリンパ節が多発しレベルⅡに好発
周囲への炎症波及もあるが、T2でリンパ節内の辺縁部に低信号域を認める事がある

実際の症例

実際の画像や。20代女性で特に自覚症状はあらへん。左副神経リンパ節の腫脹が確認出来ると思うで。

頸部MRI-急性リンパ節炎2

次の症例は30代男性で頚部腫瘤精査でMRIを実施した例や。化膿性リンパ節炎の診断になったで。

頸部MRI-急性リンパ節炎
上段左から脂肪抑制冠状断、脂肪抑制横断像、T2WI、下段左からT1WI、DWI、ADC

鑑別診断のポイント

鑑別疾患一覧

リンパ節腫大を見たら上記の4つを念頭に読影してくんやけど、次に挙げる疾患との鑑別も重要やで。どれも似たような所見を呈する事があるヤツや。

  • 木村病(kimura disease):唾液腺領域の無痛性リンパ節腫大
  • 猫ひっかき病(cat-scratch disease):腫大性リンパ節内部に三日月柄の遍在性低吸収
  • 転移性リンパ節腫大:造影でのリンパ節内の局所低吸収域と中心壊死
  • 悪性リンパ腫:辺縁平滑で均一、DWIで高信号(ADCで低下)が特徴
  • Rosai-Dorfman病:非特異的な頚部リンパ節腫大、T2で筋肉よりやや低信号
  • サルコイドーシス:肉芽腫性炎症、均一なリンパ節腫大
  • Castleman病:良性リンパ増殖疾患、単発でT2で高信号が特徴
  • 川崎病 等

こう見ると多くあるな。全部頭に入っていればベストやけど、まずはリンパ節炎だけを覚えるのもアリやと思うで。

まとめ

まとめるで。今日のポイントは2つ。

原因別で4つに分類され、ウィルス性によるものが最多

左右対称かどうか、大きさはどうかが鑑別のポイント

こんな感じやな。分類は4つあったで。ウィルス性、化膿性、結核性、菊地病や。後は画像所見だけやなくて、発症部位の特徴なんかも各々あったから覚えておいてーや。

ふー、しんど。喋るのも辛くなってきたわ。

喉が痛いから今日はこれで終いや。

ほな、精進しいやー!