急性膵炎(acute pancreatitis)

ワシな、有名すぎてワシの友達3人と纏めて「地味ーズ」って言われてたんや。

・・・僕はなんて返事をしたら・・・

急性膵炎(acute pancreatitis)とは

急性膵炎の概要

急性膵炎の概要

さて、今日のレクチャー始めるで。今日は急性膵炎や。

まず急性膵炎とはやけど、これは何らかの原因で膵臓が急性炎症を起こしている状態の事や。

もう少し詳しく言うと、膵液(消化酵素)によって自分の膵臓を消化してしまっている状態の事やねん。

元々膵臓には、膵液(消化酵素)を作る役割があんねんけど、通常は膵管を通って十二指腸に分泌されて食物と混ざって消化をしてんねん。

これが何らかの原因によって膵臓内で膵液が活性化してしまうと、膵臓自体を消化してしまうっていう流れや。

この原因というのは、アルコールと胆石が大きな2大原因やで。

病態は一過性で軽快する軽症例から重症例まで様々や。時期によって浮腫性膵炎と壊死性膵炎に大別されるで。壊死性の方が予後は不良や。

ちなみに、重症度判定には予後因子から判定する方法と画像所見から判定する方法があんねん。今回は画像診断の方を中心にレクチャーしてくで。

急性膵炎の診断基準

急性膵炎には診断基準があって、次の3つのうち2つ以上が該当して、他の急性腹症が除外された時に診断されるで。

  • 上腹部に急性腹痛と圧痛
  • 膵酵素の上昇
  • 画像診断で膵に急性所見がある

見て分かる通り急性膵炎に対しての画像診断の持つ意味は大きいねん。

他の急性腹症

今日は急性膵炎についてやけど、他の急性腹症はこちから見てみてーや。

急性膵炎の原因

主な原因はアルコールと胆石が多いで。他には突発性や医原性、外傷性やな。

胆石が40%程度、アルコールが30%程度でこの2つで70%を占めんねん。って事はほとんどこの2つが原因って事や。ちなみに薬剤でも膵炎を起こす事があって、これを薬剤性膵炎とも呼んでるで。

ちなみに何でアルコールが関係しているかというと、多くのアルコールを飲み続けてると、膵液の分泌がアルコールで刺激されんねん。それに伴って膵液が多量になって自己消化を起こしてしまうっていう関係や。

胆石の場合は、胆石が落石して総胆管と膵管が合流するVater乳頭部付近で詰まる事が原因やで。これによって膵管内の圧が上昇して膵液が自己消化を始めてしまうねん。

膵臓付近 解剖

ちなみに膵臓の役目は大きく2つあって内分泌と外分泌や。具体的には以下の通りやで。

  • 内分泌:インスリン(血糖低下)やグルカゴン(血糖上昇)の分泌
  • 外分泌:膵液(消化酵素)の分泌

解剖的な点から、膵胆管合流異常や外科手術後、ERCP後にも起きうる事が知られてるで。

臨床症状と治療法

臨床症状

臨床症状は腹痛や嘔吐、背部痛、発熱なんかや。特に腹痛はメッチャ痛いらしいで。Chest-knee positionという言葉や特徴的な体位まであるくらいや。体育座りで横になるみたいな感じやな。

治療法

治療法は絶飲食と補液や。絶飲食で膵臓を安静、保護させるのが第1や。必要に応じて、消化酵素阻害剤や感染防止のために抗生物質を投与する事もあるらしいで。

腹痛に関しては鎮痛剤の投与でコントロールするという話しや。重症例になると炎症が全身に波及して多臓器不全になる事もあって、その時はICUに入る事もあるで。

重症例で膵臓周囲に壊死や膿瘍を形成してしまっている場合は、治療が難渋する事も多いとの事や。

胆石が原因の場合は自然と排出される事が多いらしいねんけど、胆石が大きい場合はERCPなんかで排出させる事もあるらしいな。

画像所見

急性膵炎の画像所見

続いて画像所見についてや。アトランタ分類によると画像上で間質性浮腫性膵炎(interstitial edematous pancreatitis)と壊死性膵炎(necrotizing pancreatitis)に分類されんねん。

間質性浮腫性膵炎は炎症所見と膵周囲に液体貯留を認めるものや。壊死を示す所見はあらへん。多くは軽症で1週間程度で改善するで。

一方の壊死性膵炎は壊死を示す造影不領域があるパターンや。虚血性の場合もあるから発症から1週間後も造影不良域があった場合を壊死性としてるで。もちろんこっちの方が予後は悪いんや。

重症度判定

あと重要な点でCTでの重症度判定について話していくで。これは膵腫大の有無、膵実質の変化、周囲への炎症波及程度の3つで診断していくんや。画像診断では次の表が有名かつ知っておかなアカンから頭に入れといてや。CTの画像所見によってGradeが3つに分けられるで。この中でGrade2以上を重症と判定すんねん。

急性膵炎 Grade分類
膵臓 解剖

前腎傍腔とか結腸間膜根部とか、腎下極以遠とか、普段あまり聞かへん言葉が出てきてるけど、これらの解剖を知っておかんと判定出来ひんで。コレを気に覚えておいてや。ざっくり言うと、前腎傍腔は膵周囲、結腸間膜根部は膵臓の腹側(中結腸動脈周囲)、腎下極以遠は腎の足側まで炎症が波及しているかどうかや。

腹部CT 結腸間膜根部 前腎傍腔 腎下極以遠

臨床所見などで急性膵炎が疑われたらCT造影撮影。膵腫大を認めたら、造影不良域と炎症波及レベルの確認しGrade判定。

これが急性膵炎診断の大まかな流れやな。造影不良域もパターンによって虚血の場合と壊死に至ってる場合が分かる事もあるで。

ちなみに年齢によって膵実質が変化していく事も覚えておくとええで。一般的に年齢を重ねるごとに膵が萎縮していって、脂肪変性で膵内部が不均一になるから造影不良域と間違わないように注意や。

急性膵炎の画像所見の要点や。

  • 膵腫大、輪郭の不鮮明化
  • 動脈相での造影効果低下、虚血性膵炎では静脈相では造影効果あり、壊死性膵炎では造影効果なし
  • 膵周囲への炎症波及(前腎傍腔、結腸間膜根部、腎下極以遠)
  • 腹水
  • 腎筋膜(Gerota筋膜)の肥厚

実際の症例

60代 男性 急激な腹痛

実際の画像を見ていこか。この症例は、膵周囲の炎症所見を認めるで。臨床データと合わせて急性膵炎の診断(Grade1)の診断や。

腹部CT 急性膵炎 Grade1

40代 男性 CRP:26.9 WBC:22700

40代男性の別症例や。膵周囲の炎症と、膵尾部の造影不領域を認めるで。

腹部CT 急性膵炎

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

次に鑑別診断やけど、膵膿瘍、膵仮性嚢胞、膵癌、などがあるんやけど、急性浮腫性膵炎の場合は明らかな異常所見を示さない事がも少なくないで。慢性膵炎が背景にあって高齢者の場合は膵腫大が分かりづらい事もあんねん。

ちなみに慢性膵炎との鑑別やけど、慢性膵炎は膵実質にびまん性の石灰化、膵管結石の有無で判断出来るで。他には主膵管および分枝膵管の不正な拡張、主膵管の不規則な拡張および膵辺縁の凸凹の変性があると疑わしいな。

腹部CT 慢性膵炎
慢性膵炎(膵臓にびまん性の石灰化を認める)

まとめ

今日は急性膵炎についてレクチャーしたで。ポイントは3つ。

原因はアルコールと胆石がほとんど

臨床症状は腹痛(かなり痛い)

CT画像で膵腫大、輪郭の不鮮明化、造影効果の有無、周囲への炎症波及レベルを確認する

重症度判定やとGrade1~3に分けられてて、Grade2以上が重症となっとるで。これは動注療法を選択する判断材料になるからGrade判定は必要やで。

今日はこんな感じかな。中々盛り沢山やったな。

急性膵炎はワシと違って、臨床症状が激しいから全然地味やあらへんで。

さて、つまらん自虐はこれくらいにして、そろそろ終わりにしよかな。

ほな精進しいやー!