誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)

アカン!うぇーっぷ。ゲホゲホ。

喉が赤ちゃんですね。

アホ、ばっちり中年や!ちょっとむせただけや。あー、きっつ。
Red〇ullって肺に入ると魂に翼をさずけるんやな。危うく三途の川を渡るとこやったで。

誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)とは

誤嚥性肺炎の概要

さて、今日は誤嚥性肺炎について話していくで。これも救急やってると遭遇する疾患の1つや。特に高齢者で多いで。誤嚥機能の低下や脳梗塞の後遺症、神経疾患なんかを発症していると、より発生しやすいで。

まず前提として、基本的に食べ物は気管に入る事はあらへん。なぜなら喉頭が誤嚥を防ぐ役割をしているからや。嚥下運動は咀嚼した食物を喉から食道に送り込む動作の事を言うんやけど、嚥下運動は場所によって次の3つに分類されとる。

  • 口腔期
  • 咽頭期
  • 食道期

口腔期はそのままやな。食べ物を咀嚼したりする場所や。

咽頭期は、食べ物が入ってきたら下咽頭収縮筋が作用して下咽頭の軟口蓋や喉頭蓋が動くねん。つまり気道への入り口を塞ぐ事で、気道内に入らないようになってんねんな。仮に入ってしまっても気道防御反射が正常なら、咳き込む事で異物を排出する働きが備わってるんやで。

ほんで食道から胃(消化管)に入っていくって流れや。

ちなみに下咽頭収縮筋は甲状咽頭筋と輪状咽頭筋の総称で、支配神経は舌因/迷走神経になるで。

咽頭についてはこっちでも説明してるから、合わせて確認しておいてや。

誤嚥性肺炎

この嚥下機能や気道防御反射が加齢や病気の後遺症なんかで低下すると、異物が気道内に入っても排出されへん事が起きんねん。

この時に異物に付着している原因菌が炎症を起こすんや。これが誤嚥性肺炎の正体や。

誤嚥性肺炎は免疫機能が関係してて、免疫が高いと発症せーへん事も多いで。

ちなみに誤嚥性肺炎は日本呼吸器学会の肺炎診療ガイドライン2017に次のように定義されとる。

「嚥下障害によって発症した肺疾患」

まぁそのまんまやな。

誤嚥性肺炎だけやあらへんけど、WBC(白血球数)やCRPが上昇する事も覚えてとくとええな。

誤嚥性肺炎 イメージ図

解剖についてはこっちを参考にしてな。

誤嚥性肺炎の原因菌

原因菌としては、次のようなものが代表的や。

  • 口腔内細菌(嫌気性菌)
  • 肺炎球菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • 腸内細菌

肺炎球菌や口腔内細菌が割合として多いな。

誤嚥性肺炎の診断基準

他には誤嚥性肺炎の診断基準もあんねん。これも肺炎診療ガイドライン2017やと下記のように記載されとる。

誤嚥性肺炎の診断基準
肺炎の診断基準(以下の2つを満たす症例)】
 ・胸部Xp、または胸部CTで肺胞浸潤影を認める
 ・37.5℃以上の発熱、CRP異常高値、WBC9,000/μL以上、喀痰などの気道症状のいずれか2つが存在する
【誤嚥性肺炎確実例(誤嚥の直接観察)】
 ・明からな誤嚥物が直接確認され、それに引き続き肺炎を発症した例
 ・肺炎例で気道より誤嚥内容が吸引などで確認された例
誤嚥性肺炎ほぼ確実例(嚥下機能障害の存在)】
 ・臨床的に飲食時に嚥下機能障害を反復して認め、肺炎の診断基準の2つを満たす例
 ・確実例のどちらかに該当し、肺炎の診断基準のどちらかを満たす例
【誤嚥性肺炎疑い例(嚥下機能障害の可能性)】
 ・臨床的に誤嚥や嚥下機能障害の可能性を持つ下記の基礎病態ないし、疾患を有し肺炎の診断基準のどちらかを満たすもの
 ・嚥下機能障害が経過中に客観的な検査法によって認められた症例
肺炎診療ガイドライン2017より改変して記載

誤嚥性肺炎の分類

また誤嚥物の性状、量、分布などから次の4型に分類されてるわ。

  • 誤嚥性肺炎(嚥下性肺炎 通常型)
  • 人口呼吸器関連肺炎(VAP)
  • Mendelson’s syndrome(メンデルソン症候群)
  • びまん性嚥下性細気管支炎

人口呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は、気管挿管や人工呼吸開始後48時間以内に発症した肺炎で予後が悪いんや。

原因菌は細菌で、特に緑膿菌が多いらしいで。

Mendelson’s syndromeは嘔吐なんかで胃の内容物が多量に入る事で起きる肺合併症や。胃酸による炎症が原因やで。化学性肺炎やARDSを引き起こす事も知られてて、かなり重篤な状態やと言われとる。

誤嚥性肺炎の好発年齢

誤嚥性肺炎が発症する年代は高齢者が多いな。これは加齢や病気によるものが原因やで。

特に神経疾患、寝たきり、意識レベルの低下、咽頭機能低下なんかがリスクファクターや。

これらから入院中や施設入所中に起きやすいとも言われとるな。

そのため誤嚥性肺炎は医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP)とも関連が深いんやで。

【医療・介護関連肺炎(NHCAP)】

  1. 長期療養型病床(精神病床も含む)、もしくは介護施設に入所している
  2. 90日以内に病院を退院した
  3. 介護を必要とする高齢者、身体障害者
  4. 通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制剤などによる治療)を受けている

これらのいずれかに該当する場合は、NHCAPとされんねん。

NHCAPは従来の市中肺炎と院内肺炎では分類できない中間に位置する肺炎群で、高齢者の重症(予後不良)肺炎と、薬剤耐性菌性肺炎の2つの型があるんや。

誤嚥性肺炎の臨床症状

発熱、咳嗽、膿のような痰が出るのが典型的な症状やと言われとる。ただ症状があらへん(出てこない)場合もあるで。

他には食欲がない、喉の違和感など非特異的な症状がキッカケで発見される事もあるわ。

誤嚥性肺炎の治療法

治療は基本的に抗菌薬の投薬治療やで。ケースによっては誤嚥物質を除去する事もあるな。

ちなみに、誤嚥は身体機能の低下が原因で、再発を繰り返す事も多いねん。せやから体調管理して免疫機能の向上、口腔内環境の正常化、嚥下機能のリハビリなんかも重要らしいで。

画像所見

誤嚥性肺炎の画像所見

肺って色々な所見が混在しているパターンが多くて難しくないですか?

せやな。腹部なんかと違って画像所見や臨床データから推察する事が重要やねん。肺炎関係は特にそうやな。

ただその中でも特異的な所見を持ってる疾患もあるから、それを覚えておくのは重要やで。

誤嚥性肺炎の画像所見やけど、CT上で背側優位に粒状影、浸潤影、気管支壁肥厚が認められるで。基本的に気管支肺炎のパターンで、S2、S6、S10、また右肺にも多いという特徴もあるな。

  • 背側(S2、S6、S10)優位の粒状影
  • 気道に沿った浸潤影
  • 気管支壁肥厚
  • 気管支の分岐角度の関係で右肺に多い

実際の症例

70代 女性 繰り返す誤嚥性肺炎

実際の画像や。左が誤嚥性肺炎の4ヶ月前のCT、真ん中が誤嚥性肺炎時、右が加療1ヶ月後の画像や。両肺下葉のコンソリデーションの変化が分かると思うで。また右気管支に異物を認める事もできるな。

胸部CT 誤嚥性肺炎
左から発症4ヶ月前のCT、誤嚥性肺炎時のCT、加療1ヶ月後のCT
胸部CT 誤嚥性肺炎
発症時のCT画像 気管支内に低吸収域を認め異物が疑われる

80代 女性 誤嚥性肺炎疑い

別症例や。80代女性や。気管支壁の肥厚と両肺肺底区にコンソリデーションを認めるで。背側側に病変を認めるのが誤嚥性肺炎の特徴やで。

胸部CT 誤嚥性肺炎

70代 男性性 施設入所中

最後にもう1例や。70代男性で認知症にて施設に入所中や。左肺にすりガラス陰影やコンソリデーションを認めるで。誤嚥性肺炎は施設に入所しているケースでも多いな。

誤嚥性肺炎

鑑別診断のポイント

その他の肺炎との鑑別

鑑別診断やけど、基本的に肺炎の症状は多彩な事が多いから難しいのが多いで。臨床症状や経過を確認する事が重要や。一応誤嚥性肺炎は気管支肺炎像になると言われとる。鑑別としては、そのような所見を示す肺炎という事になるな。

一応、他の肺炎のレクチャーを載せておくから確認しておいてや。

まとめ

今日は誤嚥性肺炎についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

加齢や嚥下機能低下などが背景にあり、寝たきりの高齢者などに多い

両肺(右優位)の浸潤影でS2、S6、S10の背側に多い

CRP、WBCが高値になる

これらを最低限覚えておけば、そうそう外す事もあらへんと思うで。

誤嚥性肺炎って死因の第6位なんですね。

せやねん。以外と多いやろ?

数でいうと年間4万人以上が肺炎で亡くなってて、そのうちの7割以上が誤嚥性肺炎という話しや。これは今後も高齢化なんかの理由で増えていくとも言われとる。

肺炎で亡くなる人は脳血管疾患で亡くなる人よりも多いねんで。それだけ身近な病気という事や。

日本は長寿国なのは間違いあらへんけど、健康寿命という概念も必要やと思う。長生きしても健康で長生きなのと、寝たきりで長生きしてるのでは全然違うからな。加齢は誰にでも平等に訪れるけど、出来るだけ健康で生きたいもんやな。

てな訳で、今日はこれくらいにするで。

ほな、精進しいやー!