星状細胞腫(astrocytoma)

なんかええな。レクチャーは必要とされてる感が味わえるで。てか自分少しハゲたんちゃうん?

失礼な!少しじゃないです。

その返し・・・ちょっとは腕を上げたようやな。ワシが食われるのも時間の問題かもしれん。

ちなみに今日は星状細胞腫についてレクチャーしてこうと思うてんねん。頭部繋がりや。無理矢理やん!とかは言うなよ。

この星状細胞腫はアストロサイトーマとも呼ばれんねんけど、悪性度が高いんやで。大学病院とか放射線治療とかやってる施設なら聞いた事がある病名かもしれんな。

ただ他の検査目的中に偶然発見されるケースもあんねん。せやからある程度画像所見を知っておくのは重要やで。

ほな、始めていこか。

星状細胞腫(astrocytoma)とは

星状細胞腫の概要

アストロサイトーマについて知ってる事ってなんかある?

えっと、星状細胞腫はグリオーマの中の1つに分類されているって書いてあります。

せや。もうちょっと詳しく言うと、星状細胞腫と退形成星状細胞腫の2つがあってんけど、WHOの2021年の改訂で名称の変更とグレードも変更になってん。退形成というのは、細胞が機能、形態的特徴を無くして胎生期の状態に戻ったような事を言うねんて。

このあたりは脳外の医者は知ってるんやけど、技師はんで知っているのが中々おらんかもしれんな。次の表の通りや。

星状細胞腫のWHO分類

WHO CNS分類
Louis et al. The 2021 WHO classification of Tumors of the Central Nervous System:a summary

大きな変更点としては退形成星細胞腫が無くなって、星細胞腫IDH変異型となった事やな。

参考までに旧分類と2021年の比較も載せておくで。2021年の改定で病名の後にグレードを表記する事になってん。

旧分類概要臨床症状
グレード2星状細胞腫
(びまん性星状細胞腫)
Diffuse astrocytoma
30~50代に好発し稀に小児にも発生する
大脳半球に多く発生し、時に嚢胞を伴う
退形成星細胞腫や膠芽腫に悪性転化しうる
fibrillary/gemistocytic/protoplasmicの3つの亜型に分類される
その中でもfibrillaryが最も多いが、gemistocyticは悪性転化しやすい
再発も悪性転化しやすい
頭痛や痙攣
グレード3退形成星細胞腫
Anaplastic astrocytoma
20~60代が好発年齢だが稀に小児にも発生する
大脳半球(特に前頭葉)に多い
嚢胞形成や出血は少ない
再発は悪性転化しやすい
痙攣
グレード4膠芽腫
Glioblastoma
50代以上に多く、稀に20歳以下の発症もある
最も高悪性度で進行が早く予後不良
5年生存率は10%以下
大脳半球に多い
頭痛や痙攣、性格変化など
2021年 分類概要
星状細胞腫IDH変異型
グレード2
astrocytoma,IDH ,mutant, nuclear ATRX lost旧分類のグレード2の星状細胞腫 びまん性星状細胞腫と呼ばれたもの
星状細胞腫IDH変異型
グレード3
astrocytoma,IDH ,mutant, anaplastic histology旧分類のグレード3に近い
星状細胞腫IDH変異型
グレード4
astrocytoma,IDH ,mutant, CDKN2A/B homozygous deletionびまん性の星細胞腫で血管内皮増生と壊死が特徴的
膠芽腫IDH野生型
グレード4
 旧分類と同じ
組織診断でIDHに変異があれば膠芽腫ではなく病理的に星状細胞腫グレード4に分類される

星状細胞腫の特徴や好発年齢

星状細胞腫の好発年齢は50歳前後で稀に小児にも発生すること、退形成星状細胞腫はもう少し年代が広がって20~60代までが好発年齢層や。これも稀に小児にも発生するで。

両方とも発生部位としては大脳半球が多くて頭痛や痙攣などが臨床症状としてあるわ。星状細胞腫はグリオーマの中で約30%程度の割合で、low grade gliomaと呼ばれる事もあるで。

基本は手術で切除して放射線治療や化学療法を実施していくんやけど、治療後も定期的に再発チェックも必要やで。再発する時は悪性転化してくる事も多いねんな。ポイントは次の通りや。

  • グリオーマの中では比較的グレードが低い(星状細胞腫はグレード2、退形成星状細胞腫はグレード3だが、2021年の改訂で変更になった)
  • びまん性に発育するのがほとんどだが境界明瞭の星状星細胞腫もあり、その場合はグレードが低い傾向がある
  • 主な症状は頭痛と痙攣
  • 成人年齢に多く大脳半球に好発
  • 基本は手術、放射線治療と化学療法
  • 再発を定期的にチェックする(再発は悪性転化しやすい)

神経膠細胞の種類

ちなみに脳に多くある神経細胞(ニューロン)を支えているのが神経膠(グリア)細胞という細胞なんや。この神経膠細胞には、星細胞(アストロサイト)、乏突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)、小膠細胞(ミクログリア)、脳室上衣細胞の4つがあんねんけど、この神経膠細胞から発生するのが神経膠腫(グリオーマ)やねん。

グリオーマには大きく3つに分類されるで。星細胞腫(アストロサイトーマ)と乏突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ)、膠芽腫(グリオブラストーマ)や。これらは基本的に浸潤するように広がっていくから、手術で完全に摘出するのは難しいと言われとる。

画像所見

星状細胞腫の画像所見

ここからは画像所見についてや。旧分類の所見を参考にしにつつ話していくで。まず星状細胞腫グレード2(びまん性星細胞腫)と星細胞腫グレード3(退形成星細胞腫)ではちょっと画像所見が違かってん。

  1. 星状細胞腫グレード2は境界明瞭の腫瘤で時に嚢胞を伴う事がある
  2. T1では低~等信号、T2やFLAIRでは高信号、造影効果は無し、拡散画像も低信号
  3. 星細胞腫グレード3(退形成星状細胞腫)はT1、T2では星状細胞腫とほとんど同じだが、境界不明瞭の腫瘤で造影効果あり

しかしや、実はこれらは画像診断での鑑別は難しい事が多いと言われとるんや。何故かというと、上のようなはっきりとした画像所見だけやなくて、2つが混在しているパターンもあるからやな。ここまでを簡単にやけど纏めておいたわ。

拡散強調T2WIFLAIRT1WICE
星状細胞腫IDH変異型 グレード2
(びまん性星状細胞腫)
低信号高信号高信号低~等信号造影効果なし嚢胞を伴う事あり
星状細胞腫IDH変異型 グレード3
(退形成星細胞腫)
低~等信号(軽度)高信号(軽度)高信号低信号造影効果あり嚢胞形成は少ない

実際の症例

次に実際の退形成星細胞腫の画像や。腫瘍に造影効果を認めるで。現行の分類やとグレード3になるな。

星細胞腫のグレード別での見分け方は造影されるかどうかがキーやな。造影されれば高グレード寄り、されなければ低グレード寄りとも言えると思うで。

頭部MRI-退形成星細胞腫
左上からT2WI、T1WI、FLAIR、左下からDWI、ADC、CE

鑑別診断のポイント

脳梗塞

さて、鑑別診断のポイントやな。まず星状細胞腫で均一な信号の場合は急~亜急性期の脳梗塞が鑑別対象や。拡散強調で高信号の有無がポイントやな。

乏突起神経膠腫

他のグリオーマやと乏突起神経膠腫なんかが鑑別にあがるで。これは石灰化の有無やったり発生する部位が診断の参考になるで。

下にまとめておいたわ。

旧分類概要臨床症状
グレード2乏突起神経膠腫
Oligodendroglioma
全年齢に発生し発育はゆっくり
大脳皮質、特に前頭葉に多い
腫瘍辺縁部の石灰化が特徴
痙攣
グレード3退形成乏突起神経膠腫
Anaplastic oligodendroglioma
乏突起神経膠腫から10年程度で発症する事が多い
壊死や出血を伴いやすい
痙攣
2021年分類概要
グレード2乏突起神経膠腫グレード分類は病理組織で決定される 旧分類のグレード2乏突起神経膠腫
グレード3乏突起神経膠腫グレード分類は病理組織で決定される 旧分類のグレード3退形成乏突起神経膠腫

他には造影されるパターンでの鑑別で、造影効果が均一化どうか、(ちなみに均一のパターンは悪性リンパ腫が鑑別にあがるで。)リング状で球状かどうか、(これらは転移性脳腫瘍の特徴や。)なんかがあるで。

まとめ

今日はグリオーマの中の星状細胞腫についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

2021年に改訂があり退形星状細胞腫が無くなり星細胞腫のグレードが2~4に変更になった(今はLow grade gliomaと呼ばない事も増えてきた)

T2で高信号、T1と拡散強調で低~等信号、造影効果はグレードにより様々(造影効果がある場合はグレードが高い傾向がある)

嚢胞を伴う事もあり、嚢胞を伴い造影効果が無い場合はグレード2、腫瘍辺縁に石灰化がある場合は乏突起神経膠腫が疑われる

簡単にまとめるとこんな感じや。アストロサイトーマは発見時からの経過観察や治療後の再発チェックなど、MRIを撮影する機会がメチャ多いねん。技師はん的には検査時に完璧な読影までする必要はあらへんけど、知識として知っておくとええで。

他に将来的に放射線治療を担当したり、医学物理士を目指す場合は必要になってくるからな。

ってな感じでなかなかヘビーな内容やったけど、ついてこれてるか?頭部はこんなもんやあらへんで。まだまだレクチャーせなアカン事が残ってんねん。1歩1歩着実についてこいや!

ほな、精進しいやー!