Baker嚢胞(Baker cyst)

フランスの医療制度って知ってる?

いえ、全く。

実は日本と近しいねん。日本でいう国民皆保険的なものもフランスにあんねんで。ワシもちょっと意外やったわ。

実際、2000年の正解保健機関調査でフランスは世界の医療制度の中でも総合的に最善な医療を提供してると評価されてるらしいねん。平均寿命は82歳らしいしな。

自己負担は3割程度で、重症な疾患やと自己負担は無いらしいねんけど、日本との違いはかかりつけ医制度があって、そこを経由せんと自己負担が7割になるらしいで。そこで症状のトリアージが行われてるって事やな。うまく出来てるで。

おっと、時間が無くなるな。そろそろ本題のレクチャーにうつるで。

Baker嚢胞(Baker cyst)とは

Baker嚢胞の概要

Baker嚢胞は膝の検査をしていると結構な頻度で見つかるで。

Baker嚢胞は腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間に滑液包があるんやけど、ここに液体貯留したものと言われとる。変形性膝関節症や半月板断裂、リウマチなどが原因で関節内圧が上昇して、関節液がこの部位に押し出される事で発生するで。

基本的に中年に多く発生するんやけど、小児にも見つかる事があるで。時に外科的手術で切除する事もあるわ。概要についてまとめておくからチェックしておいてな。

概要
Baker嚢胞腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間の滑液包に液体貯留した状態
膝窩嚢胞(popliteal cyst)と呼ぶ事もある
変性性膝関節症や半月板断裂、リウマチなどが原因になる
多くは中年以降だが若年者にも発生することもある
無症状が多いが時に痛みを伴う
増大すると血管を圧迫し血栓性膝窩静脈炎を引き起こす事がある
時に破裂しDVT(深部静脈血栓症)と鑑別が必要になる事がある
半膜様筋腱と腓腹筋内側頭

膝の解剖

膝の解剖や。膝の周囲にはいくつかの滑液包があって、関節包、滑膜、その中に関節液が満たされてんねん。

おおまかな解剖については以下のイメージの通りや。

膝解剖

Baker嚢胞の原因と臨床症状

Baker嚢胞が出来る原因についてや。滑液包に何らかの原因で炎症が生じて、そこに関節液が多量に貯留し膨らむ事でBaker嚢胞になるで。ここでの炎症の原因やけど、関節リウマチや痛風なんかや。他に加齢や酷使によっても発生する可能性があるとの事や。

臨床症状は腫脹や違和感なんかやと言われてる。嚢胞が大きくなると痛みを伴う事があるらしいな。ただ別目的で検査して偶然発見される事も少なくないで。

治療法は穿刺して吸引する事が多いな。小さければ経過観察になる事もあるらしいで。

画像所見

Baker嚢胞の画像所見

次に画像所見についてや。

単純写真やと分からへんからCTやMRI、USなんかで診断すんねん。CTやとLDA(low density area)として指摘出来る事があるけど、MRIが1番情報量は多いで。

基本的に嚢胞やからそれに準じた画像所見になって、T2系では高信号なんやけど、内部に出血してるパターンもあってその時はT1系で多少高信号になるで。

もう一つ特徴的なのが、腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間に横断像で嚢胞の先がコンマ状になる所見があんねん。これは覚えておいた方がええヤツやで。

画像所見
Baker嚢胞基本的に嚢胞成分なのでT2強調で高信号を示す
出血、隔壁を伴う場合は不均一になる場合もあり、出血の場合はT1強調で高信号になる
横断像で嚢胞がコンマ状に腓腹筋内側頭と半膜様筋腱に入り込むのが特徴的

実際の症例

60代女性で膝の疼痛精査の画像や。この症例でコンマ状の先端を確認してみてくれ。

膝MRI-Baker嚢胞
膝MRI-Baker嚢胞

こっちは別症例や。同様にコンマ状の所見を認める事が出来ると思うで。

膝MRI-Baker嚢胞

鑑別診断のポイント

DVT(深部静脈血栓症)

次に鑑別診断のポイントやで。概要のところと記載したけど、Baker嚢胞が破裂すると腫脹と痛みを伴い、臨床的にDVT(深部静脈血栓症)と鑑別が必要な事があんねん。

まぁその時でもMRIを撮影すればほぼ鑑別は出来んねんけどな。一応鑑別疾患としてあげとくわ。これも覚えておくんやで。

まとめ

今日はBaker嚢胞についてレクチャーしたで。ポイントは2つだけや。

腓腹筋内側頭と半膜様筋腱の間の滑液包に液体貯留した状態

嚢胞状の信号強度と横断像で特徴的なコンマ状の画像所見

膝の後ろに嚢胞成分を認めた時にこれらが該当すれば診断は容易やと思うで。Baker嚢胞は比較的よく目にする所見やからな。もし知らんかったら、これを機に覚えとき。

日本もいつフランスのような医療制度になるか分からんからな。いつでも大病院にアクセス出来るとは限らんくなるかもしれん。そん時に重要になるのが画像が読める技師はんや。撮影してしかも読んでくれると依頼医師としてはかなり助かるやないかな。

ちなみに、ワシに読影を教えてくれたオーベンが言ってたで。1つの所見を見つけても満足するなってな。他にも重大な所見がある事がぎょうさんあるってな。

オーベン?

今はオーベンとか言わへんのかな。指導医の事や。

まぁそこはどうでもええか。重要なのは画像所見を覚えておく事やしな。

ちゃんと今日の内容も覚えておくんやで。

ほな、精進しいやー!