【臨床症状】70代 検診精査 USで膀胱腫瘤疑い
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 造影画像
※ Dynamic(該当スライスのみ)、造影後画像の順
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- 膀胱左壁に乳頭状の腫瘤を認める(約13mm)
- 連続した2つの腫瘤があるように見え、T2WIで低信号、拡散強調で高信号、造影にて濃染される
- 特に拡散強調画像では、いわゆる尺取虫サインが確認でき、表在性の腫瘤である事がわかる
- 特にリンパ節腫大は認めない
- 上記より膀胱癌(尿路上皮癌)疑いとなる
- また前立腺辺縁域に10mm大の結節を認め、拡散強調で高信号を認める
- 造影効果ははっきりしないが、拡散強調スコアが3ないし4と考えられ、PI-RADSカテゴリーは4と診断できる
- 診断確定のために他院紹介となり、前立腺癌 GS4+4、膀胱癌pT1(pTa high risk grop)と診断された
- 膀胱癌に対してはTURBT後にBCGを実施し、前立腺癌に対してはホルモン療法後に放射線治療を実施した
【膀胱癌】
・膀胱癌(Bladder cancer)は尿路上皮癌が90%以上で、その他には腺癌や扁平上皮癌、小細胞癌など
<尿路上皮癌>
・男性に多いが、女性の場合は男性よりも予後不良と言われている
・喫煙や膀胱家石などの慢性刺激などがリスクファクター
・膀胱三角部、頂部が好発部位
・癌腫が粘膜下層までに留まれば表在性膀胱癌、筋層浸潤以降になると浸潤性膀胱癌
・膀胱癌のほとんど(70~80%程度)が表在性で、多発する事があるが転移は少なく生命予後は良い
・表面乳頭状、有茎性腫瘍はほとんどが表在性
<扁平上皮癌>
・扁平上皮癌は慢性感染がリスクファクターのため、女性に多い傾向がある
・広基性の腫瘤が多く、局所的、もしくはびまん性膀胱壁肥厚として認める事もある
・単発でサイズが大きく、筋層浸潤や膀胱外浸潤を伴う事も多く、予後は悪い
・遠隔転移が骨、肺、腸管などに認める傾向がある
<画像所見>
・画像所見は次のようなものがある
参考書籍:知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改定第2版
- 乳頭状、または有茎性腫瘍の場合は尿路上皮癌が疑われる
- MRIが有用で、横断像だけでなく冠状断、矢状断も撮影し、腫瘍基底部の膀胱壁に垂直な断面を撮影する
- 拡散強調像で病変内部に浮腫状の粘膜下組織を認める事があり(尺取虫サイン:inchworm sign)、表在性を示す所見
- MRIにおけるDynamicでは、腫瘍基底部の粘膜下層の存在を示すSLE(submucosal linear enhancement)の有無が筋層浸潤の判断材料になる
- SLEの壁構造の断裂が一部ならT2a、全層に及んでいればT2bと診断する
- 広基性で不均一な造影効果を見たら扁平上皮癌を疑う
- 小細胞癌の場合は拡散強調画像で高信号になる傾向がある