脊柱管狭窄症(canal stenosis)

ワシ、ニワカ関西人なんやけど、実は関西に行った事すら無いねん。

もう何も信じられない。

いやでも上は通った事あるよ?福岡に学会に行くときに飛行機で上は通ったんよ!

あっ、そうや!名古屋なら行った事あるで。ギリセーフやん。

えっ?ダメ?

やっぱりか。そうやと思っとったんよ。だから誰にも話したくなかったんや。墓場まで持ってくつもりやったのに!

でもこれだけは言わせてくれ。ニワカをバカにすな。最初は誰でもニワカやねんで。それから熟練者という名のマニアになってくんや。これは医療でも通じるものがあるんやで。患者さんに対してどうせ医療の事は分からへんやろって感じで説明してると、その雰囲気は相手にバリバリ伝わってるからな!

よっしゃ、どうせ分からへんとは思うけど今日のレクチャーに行こか。

脊柱管狭窄症(canal stenosis)とは

脊柱管狭窄症の概要

今日は脊柱管狭窄症について話していくで。

これも結構な頻度で目にする疾患やな。脊柱管狭窄症とはどんな状態の事を言うか。

簡単に言うと、「脊柱管が何かしらの原因で狭窄してしまっている状態」やな。

まぁそのままなんやけど、この原因にはいくつかあって、主なものだけでもヘルニア、黄色靱帯肥厚、骨棘によるものなんかがあるで。加齢性変化による原因も多いな。

ちなみにヘルニアと脊柱管狭窄症は別もんで、ヘルニアは椎間板が神経を圧迫すること、脊柱管狭窄症は脊柱管が狭くなることを言うんやで。

これらは似て非なるモンや。

脊柱管狭窄症の概要は次の通りや。ちなみに脊柱管狭窄症は頚椎や腰椎に多いな。

概要
脊柱管狭窄症脊柱管が何かしらの原因で狭窄している状態
原因には次の6つがある
 ・椎体変性(骨棘など)
 ・椎間板変性(ヘルニアなど)
 ・椎間関節変形性関節症
 ・配列異常(辷り、側弯など)
 ・靱帯肥厚や変性(黄色靱帯や後縦靭帯など)
 ・ルシュカ関節変性(頚椎のみ)
またachondroplasiaのような先天性のものと加齢などの後天性原因がある
50代から増加し高齢者でピークになるが、40歳以下の発症もある
主な症状は痺れや痛みだが、画像上は狭窄があっても無症状の事もある
腰椎脊柱管狭窄症の特徴的な症状は間欠性跛行(ヘルニアにはほとんどない)
椎体MRI-脊柱管狭窄症
椎体MRI-骨棘形成 黄色靱帯肥厚症

狭窄部位の分類は大きく分けて中心性狭窄、外側狭窄の2つがあるで。腰部を例にすると、中心性狭窄は馬尾神経が圧迫されるパターン、外側狭窄は、神経根が圧迫されるパターンや。ほんで更に外側狭窄には外側陥凹狭窄と椎間孔(神経孔)狭窄の2つに分かれんねん。

中心性は間欠性跛行(一定の距離の歩行で下肢に痺れや痛みが出現し歩行が難しくなる状態。一定時間休憩すると症状が治まる)が特徴的で、外側狭窄は片側の症状が特徴的や。もちろん両方の混合型もあるで。放置すると症状の進行が進んでロコモティブシンドローム(運動機能の衰えで要介護や寝たきりになる可能性がある状態)になる事もあんねん。

中心狭窄と外側狭窄

椎体の解剖

次に椎体の解剖やな。これは椎間板ヘルニアの時に使ったヤツやけど、まぁこの辺を覚えておけば大丈夫やろ。

重要な点だけ言うと、頚椎はC1~7、胸椎はTh1~12、腰椎はL1~5、仙椎はS1~5、尾骨の個数やで。稀に腰椎が6個ある人もおるな。

脊髄の中に神経が走ってて、そこから左右に神経根が伸びてんねん。この神経や神経根が圧迫される事で脊柱管狭窄症の症状が出るで。頚椎と腰椎付近での解剖はちょっと違うから注意やで。

椎体解剖
※頚椎付近の解剖
椎体解剖2
※腰椎付近の解剖

脊柱管狭窄症の原因と臨床症状

脊柱管狭窄症の原因やけど、これは加齢や仕事や病気で変形した椎間板と骨棘なんかが神経を圧迫する事で起きんねん。他には肥満なんかも原因の1つと考えられてるな。共通してる事は腰への負担や。腰への負担が継続する事で、何からの変化が起きて狭窄すんねん。その結果、概要欄で話した下記のような症状が起きて脊柱管狭窄を来すで。

  • 椎体変性(骨棘など):骨棘によって狭窄している状態
  • 椎間板変性(ヘルニアなど):ヘルニアや膨隆によって狭窄している状態
  • 椎間関節変形性関節症:椎弓の上関節突起と下関節突起に変性が起きる事で狭窄している状態
  • 配列異常(辷り、側弯など):分離症等で辷りが起きたり、側弯により狭窄してしまっている状態
  • 靱帯肥厚や変性(黄色靱帯や後縦靭帯など):黄色靱帯骨化症や後縦靭帯骨化症などで狭窄している状態
  • ルシュカ関節変性(頚椎のみ)

脊柱管狭窄症を分類すると、先天性(発育性)狭窄症、変性性狭窄症、混合型狭窄症、脊椎分離すべり症、医原性狭窄症、外傷性狭窄症ってな感じになるで。

臨床症状は痺れや痛みや。辷りや黄色靱帯肥厚なんかで神経が圧迫されるのが原因やから神経症状がメインになるで。少し前屈みになると症状が軽減されるのが特徴や。

治療法としては、投薬やブロック注射、リハビリなどの保存療法と外科的療法があるで。投薬で症状を軽減しつつリハビリなんかで筋力を鍛えんねん。ただ根本的な治療法やあらへんから効果があらへん場合に手術が選択肢になんねん。具体的にはひどい下肢痛、歩行障害、排尿/排便障害なんかが出てきてる時やな。最近は内視鏡を使った低侵襲手術もやってるとの事やで。

画像所見

脊柱管狭窄症の画像所見

次に画像所見やな。

単純写真やと基本的に分からへん。腰椎なんかだと辷りを認める事で2次的に分かる事もあるけどな。CTやと骨棘の診断には有効や。ただCTはMRIほどの情報量はあらへんし、どれくらい狭窄しているかも分からへんから基本的にはMRIが必須や。

MRIやと椎間板突出や黄色靱帯肥厚なんかが分かるしな。画像所見としては次のようなものが確認できるで。

  • 椎間板突出
  • 黄色靱帯肥厚
  • 骨棘形成

これらが原因の中心性、外側狭窄症の診断ができんねん。基本は横断像で確認できるけど、椎間孔の狭窄は矢状断が必要な事も多いで。まぁ、矢状断と横断像は基本的なルーチンな施設が多いから撮り漏れって事は少ないと思うねんけどな。

ちなみに進行した脊柱管狭窄症があるとMRI画像やと脊髄液が描出されなくなるで。

実際の症例

続いて実際の症例を見ていこか。

これは30代男性の症例や。頚部痛の精査となった形や。C5-6に椎間板の膨張や骨棘形成、黄色靱帯肥厚を伴う脊柱管狭窄を認めるで。

頚椎MRI-脊柱管狭窄症

これは70代女性の画像や。下肢痛と痺れがあるために精査となった症例や。L4がやや前方辷りがあるのと、それに伴いL4-5で黄色靱帯肥厚も伴って脊柱管狭窄症を認めるで。どこの神経根が圧迫されているのかを確認してーな。神経と皮膚領域の関係性のデルマトームも参考になるで。

腰椎MRI-脊柱管狭窄症

デルマトーム(皮膚分節)

脊髄から出る神経がどの皮膚領域かを表したもの。臨床症状から狭窄部位を特定する時の参考になる。

デルマトーム

鑑別診断のポイント

馬尾弛緩(redundant nerve root)

鑑別疾患というか、ほかに覚えておいた方がええヤツで馬尾弛緩(redundant nerve root)というのがあんねん。

狭窄部中枢側に伸長し屈曲蛇行した馬尾神経の事で下の画像がそうや。狭窄が強いほど見られるで。AVMなどと鑑別が難しい事があるで。覚えてとき。

腰椎MRI-馬尾弛緩

関連する疾患

脊柱管狭窄症に関係する疾患の一覧や。ヘルニアは勿論、OYL(黄色靱帯骨化症)、OPLL(後縦靭帯骨化症)なんかがあるで。

まとめ

今日は脊柱管狭窄症についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

狭窄症は脊柱管自体が狭くなり神経を圧迫する事、ヘルニアは椎間板が神経を圧迫する事

脊柱管狭窄症は主に中心型狭窄と外側型狭窄の2つに大別される

MRIが一番情報量が多く、椎間板突出や黄色靱帯肥厚に伴う狭窄が確認される

こんな感じや。高齢者はかなりの頻度で見かける疾患やと思うで。って言うのも、何かしら症状があって検査しに来とる訳やから、比例して脊柱管狭窄症を持ってる確率も高い訳ではあるんやけど。

重要なのは一言で脊柱管狭窄症と言っても原因には複数あるって事や。横断像が1番診断しやすいねんけど、椎間孔狭窄は椎間関節の骨棘が関係している関係で矢状断の方が見やすかったりするで。この辺りは撮影する時によくチェックしてもらえると助かるわな。

ピンポイントで追加撮影とかしておいてもらえると、読影の時に「おっ、分かっとるな」って思う訳よ。

そこまでを目指せや。

ほな、精進しいやー!