読影の呼吸、3の型、造影飛ばし!
ダメでしょ!ちゃんと造影画像も見てください!!!
もくじ
脳梗塞(cerebral infraction)とは
脳梗塞の概要
脳梗塞とは
冗談やがな・・・そんなマジギレせんでも・・・
冗談はおいといて、今日は脳梗塞について話してこかと思う。まず脳梗塞とはからや。
脳梗塞っちゅーのは、何らかの原因で脳の虚血や壊死してしまっている状態の事や。この原因には次の2つがあるで。
- 動脈硬化などによって心血管内などに血栓が出来て、それが脳血管に飛ぶ事で梗塞が起きたもの
- 脳血管自体に動脈硬化が起きて血流が途絶え梗塞状態になったもの
前者を塞栓性、後者を血栓性とか言ったりもするな。脳血管が梗塞してしまう事で、その先に血液が届かなくなって壊死してしまうと脳機能が失われてしまうねん。
これらは言うまでもなく、生活習慣病が大きく関係しているで。
脳梗塞の分類と原因
病型は大きく3つに分類されてて、梗塞の原因や梗塞場所、どの程度梗塞してるかで分けられてるで。
具体的には、「塞栓性梗塞」、「アテローム血栓症」、「穿通動脈梗塞」や。
塞栓性梗塞の1つの心原性脳梗塞になると、大きな血管、例えば中大脳動脈なんかが塞栓されて広範囲に症状が出るで。
1番予後が悪いの塞栓性梗塞や。次にアテローム血栓症、穿通動脈(ラクナ)梗塞の順や。塞栓性はMCAなどの主要血管が詰まった時に起きる梗塞やで。
脳梗塞の臨床的な分類は以下の通りや。
臨床病型 |
発生機序 |
梗塞疾患名 |
原因 |
塞栓性梗塞 |
塞栓性 |
心原性脳塞栓症 |
左心耳からの血栓 |
動脈原性塞栓症 |
内頚動脈プラークなど |
||
奇異性塞栓症 |
卵円孔開存によるシャント |
||
アテローム血栓症 |
血栓性 |
アテローム血栓性塞栓 |
主幹動脈から皮質枝近位側の狭窄 |
血行力学性 |
境界領域梗塞 |
皮質枝末梢境界領域の結構力学的な梗塞 |
|
塞栓性 |
動脈原性塞栓症 |
同上 |
|
穿通動脈梗塞 |
細小動脈硬化 |
高血圧性ラクナ梗塞 |
高血圧による穿通動脈の動脈硬化 |
血栓性 |
アテローム血栓性分枝粥腫型梗塞 |
穿通動脈起始部レベルのアテローム血栓による閉塞 |
|
塞栓性 |
微小塞栓性梗塞 |
悪性腫瘍による凝固能の異常 |
|
血行力学性 |
深部型の境界領域梗塞 |
深部穿通動脈系や髄質静脈系の境界領域型の梗塞 |
こんな感じで多くの分類がある訳やけど、報告書には梗塞疾患名まで記載する事になってるから覚えとかなアカンで。
塞栓性と血栓性
塞栓症は血栓が血管に飛んで詰まった状態で、その過程から突発的に発症して支配血管に一致した境界明瞭な梗塞域になるで。
血栓症は高血圧やコレステロールなどで徐々にプラークが出来る事で狭窄が進行して梗塞になる事や。段階的に進行するようなイメージや。TIAなどを伴う事も多いで。
分枝粥腫型梗塞(境界領域脳梗)と分枝粥腫型梗塞
分水嶺脳梗塞(境界領域脳梗塞)
脳血管によって栄養されている部位が違っているのは知ってると思う。詳しくは下記の臨床症状にあるイメージ図を見てもらえればと思うんやけど、主幹動脈(ACA、MCA、PCA)が栄養する境界部分に脳梗塞が起きる事を分水嶺脳梗塞と言うんや。
脳梗塞の中で10%程度を占めるとも言われてるで。
分水嶺脳梗塞は内頸動脈に高度狭窄を認める事が多いから、この部分に梗塞を認めたら内頸動脈もチェックするのを忘れんようにな。
分枝粥腫型梗塞
他には分枝粥腫型梗塞っていうのもある。これは、穿通動脈起始部から近位側でアテローム血栓によって梗塞を起こした状態の事や。
穿通枝の先の方で詰まるとラクナ梗塞、穿通枝の根本側(主幹動脈側)で詰まるのを分枝粥腫型梗塞になるで。
この違いは、ラクナ梗塞は画像上で1スライスだけに写ってくるのに対して、分枝粥腫型梗塞は数スライスにかけて梗塞巣を認める事や。つまり縦に長く梗塞してるって事やな。
Branch atheromatous disease:BADとも呼んだりするで。
ラクナ梗塞より症状が大きい事もしばしばや。
脳梗塞の臨床症状
臨床症状は程度にもよって変わってくんねんけど、麻痺、感覚障害、失語、めまい、ふらつきなんかで多くの症状が該当するで。心原性の時は動けへん事も多いわ。これは塞栓された部位によって変わってくるで。
各血管に対して脳機能の対比は下記のイメージ図を参考にしてみてや。
脳梗塞の治療法
脳梗塞の治療はいかに早期にスタート出来るかどうかがカギなんやけど、代表的な治療法のtPA療法にはリミットがあって発症から4.5時間以内というのが条件や。tPA療法については下記を参照してな。
他には抗血栓療法(抗血小板薬、抗凝固薬)などが投与されるで。
tPA療法
tPA療法は血栓溶解療法とも呼ばれ、tPAという血栓を溶かす薬剤を急速点滴して治療する方法。発症から投与までを4.5時間以内に実施する必要がある。
直近3ヶ月に脳梗塞がある場合、頭蓋内の出血の既往がある場合は使えない。また消化器や膀胱などからの出血報告もある。
画像所見
脳梗塞の画像所見
次に画像所見についてやな。
脳梗塞についてはMRIの方が格段に分かりやすいんやけど、救急の場合は最初にCTを撮影する事が多いやろから、CTでの所見も分かるようにしとかなアカンで。
その中でもEarly CT signってのがあって、いくつかの特徴的な所見があんねん。これらを注視する事でCTでも脳梗塞を指摘出来るようになるのがベストやね。
一覧を作成しといたから、これを頭の中に叩き込んどき!
CT所見(Early CT sign)
Early CT signの種類 | 内容 |
---|---|
hyperdense MCA sign | MCAのM1~M2レベルに血栓を反映した高吸収域を認め、それ以降の血管も高吸収になる |
基底核の輪郭の不明瞭化 基底核の濃度低下 | 基底核付近は虚血に対して脆弱なため早期から輪郭が不明瞭化になる |
灰白質と白質(島皮質)のコントラストの低下 | 皮質の吸収値が低下し白質との境界が不明瞭になる |
脳回の軽度腫脹 脳溝の不明瞭化 | 浮腫性変化を反映して脳溝が不明瞭化する |
順に解説していくで。
基底核輪郭の不透明化はそのままやな。これは見慣れてないと指摘が難しいで。皮質、白質境界、島皮質の不明瞭化や脳溝の消失、脳実質の低信号化なんかも原理は一緒やな。
ポイントは左右差を確認するのが大切や。一方で低酸素脳症のように違った原因で脳溝が見えなくなる事もあるから、即断せんといてな。
hyperdense MCA signは血栓が原因でMCAがCTで見える事や。主に高吸収の血管像が見える事があるで。梗塞が疑われてコレが見えたら要注意や。ただ、他でも見られる所見で、あまり信憑性(特異性)は無いとも言われとるから過信するのも注意やで。
今でこそMRIの拡散強調画像があるけど、昔、それこそMRIがまだあらへん時代は上のearly CT signで見つけるしか無かってん。コレは結構しんどい読影やったで。それに比べればMRI様々やで。
MRI所見
せっかくMRIの話が出てきたから、(超)急性期のMRI画像診断の役割も述べておこか。
- 出血の有無の確認(CTでも診断可能)
- 脳障害が可逆的なうちに診断する
- 閉塞動脈の特定
- intraarterial signal
出血か脳梗塞かの診断がまず第1や。ちなみに梗塞後の合併症で出血性梗塞があるで。これは心原性梗塞に多くて脳梗塞直後に出血した場合は予後が悪いで。
脳出血についてはこっちのレクチャーも参考にしてや。
次に脳梗塞の場合に早めに診断を付ける事やな。そして閉塞部位の特定をする。これでtPA療法などにスムーズに移行出来るで。
一応念のために言っておくと、MRIでの画像所見は拡散強調で高信号、ADC低下、FLAIRで高信号や。
intraarterial signalは超急性期に見られる所見で、閉塞した血管が高信号に描出される事や。脳脊髄液は低信号やけど、閉塞した皮質枝が高信号になんねん。これは覚えておいて損はないで。知ってるのと知らんのでは大きな違いやからな。
参考までに発症時期別での表も載せとくわ。MRIは発症直後の超急性期は所見が無い点に注意が必要やで。
病期 | MRI(DWI) | MRI(ADC) | MRI(T2) | CT |
---|---|---|---|---|
発症直後(~1時間) | なし | なし | なし | なし |
超急性期(~24時間) | 高信号 | 低下 | なし | early sign |
急性期(~7日) | 高信号 | 低下 | 高信号 | 低吸収 |
亜急性期(~3週) | 高~低信号 | 低下~なし | 高信号 | 低吸収 |
慢性期(1ヶ月~) | 低信号 | 上昇 | 高信号 | 髄液濃度 |
ASPECTSスコア
急性期脳梗塞のCTでの定量評価方法でASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT sign)ってのがあんねん。
これは中大脳動脈を10箇所に分類して各領域の早期虚血性変化(early ischemic change:EIC)があれば減点方式で算出するやり方や。
10点満点で8点以上が転帰良好とされてんねん。
さりげなく、ここまで伝えると「こいつほんまに技師か?メチャスキル高いやん」って羨望の眼差しで見られるで。
【CTでのEIC所見】
- レンズ核の不明瞭化
- 島皮質の不明瞭化
- 皮髄境界の不明瞭化
- 脳溝の消失
ちなみにMRIのDWIを使ったバージョンもあって、ASPECTSにWの1箇所を追加して11箇所でスコア化する方法もあるで。(ASIST-Japan)
実際の症例
分水嶺脳梗塞
実際の画像をみていこか。急性期の脳梗塞の症例や。MCAとPCA境界領域に拡散強調で高信号、ADCで低信号の梗塞を認めるで。
70代 女性 吐き気とふらつき
こっちの症例は、梗塞血管はPICA付近の梗塞やな。他にはMRAのMIPで右椎骨動脈V4が閉塞してるで。
80代 女性 左上肢の動かしにくさ
80代女性で脳梗塞+微小出血の例や。T2スター画像で梗塞巣の中に低信号を認めて、梗塞の中に微小出血を認める事が出来ると思う。このように梗塞と出血が混在する場合もあるから注意やで。
80代 女性 失語、動作緩慢
この症例はMCA領域の梗塞があるで。MRA-MIPで左MCAのM1付近に梗塞しているのが分かると思う。
鑑別診断のポイント
ラクナ梗塞やT2 shine-throug
鑑別診断やけど、脳梗塞は特徴的な所見と臨床症状やから他の疾患と迷う事は少ないやろ。若手の技師はんやと、ラクナ梗塞とT2 shine-throughを間違う事もあるかもしれんな。
ちなみに、T2 shine throughはT2強調画像の高信号がそのまま拡散強調でも高信号になる事や。アーチファクトの一種で、ADCマップを確認する事が重要やで。ADCでは信号の変化があらへんねん。急性期脳梗塞屋とADCは低下するから、ここが鑑別ポイントやな。
その辺は技師はんの方が詳しいやろ。良く教えたってや。
他に拡散強調で高信号を示すのは脳腫瘍や脳膿瘍、悪性リンパ腫なんかがあるで。ただこれらとは臨床症状やったりMRAなんかで容易に鑑別は可能や。
まとめ
今日は脳梗塞についてレクチャーしたで。
脳梗塞は比較的救急でよく遭遇する疾患やから今日の内容は覚えておくんや。あとは脳血管の支配領域も覚えておくようにな。
ポイントは沢山あってかかれへんけど、あえて挙げるとしたら次の3つになるかな。
early CT signやFLAIRでのimtraarterial signalなどの画像所見を確認する
発症時期による画像所見の変化(MRIでは超急性期はDWIでも高信号にならない)
血管の名称と部位の略語、支配血管などを把握し、心原性、アテローム性、ラクナ梗塞を分類し記載する
脳梗塞は日中はもちろん、夜間の検査でも比較的良く出くわす所見や。
陳旧性のラクナ梗塞なんかやとそれほどでもあらへんけど、急性期の場合は早めに主治医に知らせなアカン。
主治医も予想外の時は治療開始まで時間が空いてまう事になるからな。
検査した画像を1番最初に画像を見るのは技師はんやから、ここで気がついてくれると読影側としてはかなり助かるんやで。
ポイントは放置したらダメなやつと気づけるかどうかや!
ほな、精進しいやー!