「ヤバい」ほど理解が難しいものはないと思うねん。
それってヤバいですね。
「ヤバイ」って良い意味でも悪い意味でも使われるやん?
おっちゃん、たまにどっちのヤバイか分からん時があんねん。
もくじ
脊索腫(chordoma)とは
脊索腫の概要
アカン、残り時間がヤバくなってきたから早速始めるで。
今日は脊索腫についてや。脊索腫って中々聞き慣れない言葉かもしれんな。
脊索腫は、胎児期の脊索の遺残から発生すんねんけど年間で100万人に1人くらいの確率やと言われとる。
脊索は胎児期に作られて、脊椎が出来るまでの胎児の体を支える役目があんねん。
言ってみれば、脊椎の大元になるヤツやな。
通常は成長するに従って、脊椎、仙骨、頭蓋底骨、椎間板の髄核になっていくんやけど、一部で残ってまう事もあんねん。
ここから腫瘍になったのが脊索腫や。
せやから、好発部位も頭蓋底骨や仙尾骨が多いんやで。
斜台と仙尾骨で各40%程度、脊椎で15%程度やと言われとるな。


分葉状で柔らかくゼラチン状の腫瘍で、ムチンやグリコーゲンを含んでるで。時に石灰化や出血、壊死も見られるで。
基本的に発育はゆっくりなんやけども、中には数ヶ月単位で大きくなるものもあるらしいで。
細胞内の泡様空胞(bubble-like vacuole)が特徴で組織学的には良性なんやけど、浸潤性が高いとも言われとるわ。
せやからオペで全摘するのも難しいと言われてて、かつ再発もする事もあって、むしろ悪性に近い感じやな。
好発年齢は20~60歳や。やや男性に多いで。
頭痛や外転神経麻痺がきっかけで発見される事が多いな。
概要をまとめるとこんな感じや。
概要 | 特徴 | |
---|---|---|
脊索腫 | 100万人に1人の割合と頻度は少ない 斜台と仙尾骨に多く発生する 浸潤性が高い 30~60代に発生 臨床症状は斜台に発生すると、複視や視力障害、嚥下障害などがある | 分葉状で柔らかいゼラチン状の腫瘍 石灰化は50%で認める 細胞内の泡様空胞(bubble-like vacuole)が特徴 硬膜外に存在し骨破壊性の増殖 |
脊索腫の治療法
理想はオペで全摘するのがベストやねんけども、頭部(斜台)にできたヤツは血管や神経を巻き込んでる事も多く、全摘は難しい事が多いと言われてるわ。
浸潤傾向も強いしな。
昔は開頭手術して摘出してた時期もあるらしいねんけど、今は経鼻内視鏡で摘出するらしいで。
ただこれも、全摘は難しいとの事や。
放射線治療なんかもあまり効かないんですかね?
そんな事ないで。
術後の残存病変に放射線治療する事も多いしな。
X線やγ線より陽子線の方が効果的やという実験結果もあるらしいんやけど、ただ確立されたスタンダードな治療法はまだ無いって感じやな。
泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora)
ちなみに同じような脊索遺残から出来るのゼラチン状の腫瘍で、ecchordosis physaliphoraっていうのががあんねん。
これは硬膜内に留まっていて基本的に無症状で、臨床的に問題となるケースが少ない嚢胞性の腫瘍や。
橋前槽に斜台背側壁と連続して認める事が多いねん。
脊索腫よりもサイズが小さくて、かつ大きくならへん事が多いから放っておいても問題あらへんヤツとも言われとる。
硬膜内に認める場合は、骨性の茎を伴うのが典型的と言われてるで。
ただ病理学的には、あまり脊索腫と変わりあらへんらしいで。
画像所見
脊索腫の画像所見
次に画像所見についてやな。
分葉状の腫瘍で、T2強調で著明な高信号になるで。これは空胞状細胞を反映してるからや。
石灰化が多いと不均一な信号強度になる事もあるで。
T1強調では低~等信号な事が多いな。
造影ではある程度の造影効果は認めるんやけど、粘液成分や壊死成分が多いと造影効果が乏しかったり、内部の石灰化などで不規則なまだら状の信号強度となるわ。
石灰化や斜台の骨融解を認める事もあって、CT検査も有効や。
T2WI | T1WI | 造影 | 他 | |
---|---|---|---|---|
脊索腫 | 著明な高信号 石灰化があれば不均一な低信号を認める事もある | 低~等信号 | まだら状の造影効果 粘液性や壊死成分が多ければ、造影効果は乏しい | 石灰化が50%でみられる 浸潤傾向が強い 拡散強調でも高信号 骨融解も認める事あり、その時はCTも有効 |
実際の症例
実際の症例や。仙骨に発生した例やけどな。
T2WIで高信号で隔壁構造を認める腫瘤があって、造影効果はあまりあらへん。


鑑別診断のポイント
頭蓋内腫瘍との鑑別
鑑別診断は軟骨腫、鼻腔腫瘍や骨転移、下垂体腺腫、髄膜腫などがあるかな。
斜台発生でT2強調で著明な高信号、不規則な石灰化などが見られない場合は、これらの腫瘍と鑑別が難しい事が多い印象や。
発生場所や石灰化の有無で判断する事が多いな。ecchordosis physaliphoraも鑑別が難しいしな。
まとめ
さて、今日は脊索腫についてレクチャーしたで。ポイントは3つかな。
T2強調では高信号、T1強調で低~等信号、粘液成分や骨融解などでまだら状の造影効果を呈する
斜台と仙尾骨に多く発生する
CTも石灰化や骨融解などで有効な事も多い
これらの部位に分葉状の腫瘤を認めて、上記の画像所見やったら脊索腫を鑑別診断に入れておくべきや。
あまり頻度は高くない病気やから忘れんようにな。
普段見慣れない病気を鑑別にあげるのは難しい事なのは分かるんやけど、逆にそれが出来ると「こいつ、ヤバない!?」って医者から一目置かれる存在になれるで。
ちなみに、この間、研修医と昼メシ食っててな、その研修医が一口食べた時に「ヤバっ」って言うたんよ。
上手い方のヤバイかと思って「せやろ?」って言ってら、「いや、僕、甲殻類アレルギーなんです」って言うんよ。
そっちのヤバイかい!ってな。
「でもそんなにヤバイほどのアレルギーじゃないんで」って。
もう分からんわ。
こういう便利な言葉って、話し言葉やから通じるんであって、文章だと全然伝わらん事もあるんよな。
マジでヤバない?
ってな訳で、ほな、精進しいやー!