【臨床症状】60代 3日前より呼吸苦 DM、CKD、高血圧、肝機能障害、心不全、インフル、レジオネラやマイコプラズは陰性
【問題】画像所見と診断名は?
➡ 冠状断
▶答えはこちら
- 左肺上葉、右肺下葉を中心にすりガラス陰影と一部、浸潤影を認める
- また病変内部にcrazy paving appearanceも確認でき、肺胞出血の可能性も否定できない
- ただし、胸膜直下はスペアされているように見える
- 市中感染が疑われ各種検査を行うも、インフルエンザ、マイコプラズマ、レジオネラは陰性
- 上記より何らかの感染症による、肺胞出血疑いとなる
- 他の所見は、縦隔リンパ節腫大、冠動脈石灰化、左胸水、腎嚢胞など
- その後、気管支鏡を施行し、肺胞洗浄を行い肺胞出血の診断となる
- 治療後、症状が軽快し1か月後に退院
【細菌性肺炎】
・細菌性肺炎とは細菌感染によって発症する肺炎のこと
・肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌などがあるが、その中でも肺炎球菌によるものが最多
・飛沫感染や接触感染が主で、主な症状は発熱や湿性咳嗽、呼吸困難、全身倦怠感など
・宿主の免疫能などの影響で異なる病態を示し、肺胞性肺炎(大葉性肺炎)と、気管支肺炎(小葉性肺炎)に区別される
<肺胞性肺炎>
- 病原体が肺胞にまで達すると、炎症性浮腫が生じ肺胞内は浸出液で充満し病原菌が浸出液内で増殖していく
- 浸出液は肺胞間のKohn孔や肺胞と細気管支間のLambert管などを介して隣接する領域へと進展していく
- 気道区域を越えて進展するため、非区域性の分布を呈するのが特徴
- これが肺葉全体に進展すると肺胞性肺炎になる
- 肺胞性肺炎を呈する起炎菌として、肺炎球菌、クレブシエラ、レジオネラが代表的
- 画像上では、気管支透亮像を伴う浸潤影を認め、浸出液が周囲の肺胞腔内充填に乏しい領域はすりガラス陰影になる
<気管支肺炎>
- 病原体が終末細気管支や呼吸細気管支に達すると、気道粘膜が傷害され肺胞腔内は好中球などの炎症細胞が浸潤する
- しかし浸出液は少ないため、終末細気管支や呼吸細気管支に病変は限局し、区域性の分布を呈する事になる
- さらに病変が進展すると小葉全体に波及し、小葉性肺炎になる
- 主な起炎菌としては、インフルエンザ桿菌、黄色ブドウ球菌、マイコプラズマなど多くの細菌がある
- 画像では小葉中心性粒状影や小葉性すりガラス陰影が区域性に認められる
- これらが癒合すると浸潤影となる事もある
<肺膿瘍>
- 肺膿瘍は化膿性病原菌により肺実質が壊死し、膿瘍や空洞を形成している状態
- 誤嚥性肺炎が原因である事が多いが、血行性や波及性の場合もある
- 壊死物質が排出されると空洞形成をする
- 時に肺癌や敗血症性肺塞栓症との鑑別が問題になる事がある
<肺胞出血>
参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版
- 何らかの原因(感染症など)により、肺胞毛細血管や肺動静脈などの血管に障害が発生し、肺胞内に血液が充満している状態
- 血痰の原因の一つ
- 気管支肺胞洗浄を行う事で診断できる