レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)

今日はレビー小体型認知症について話していくで!

レビー小体型認知症?

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)とは

レビー小体型認知症の概要

なんや、知らんのか。なら丁度ええな。今日で覚えてまえ。

レビー小体型認知症は、あまり聞き慣れへん病気かもしれんけど頭文字を取ってDLBって略されたりするで。DLBは変性疾患の1つで、実はアルツハイマー病認知症の次に多い変性認知症なんや。

患者数は80万人とも言われてて、高齢の認知症患者の5人に1人がDLBとも言われてるわ。DLBやPDDの疫学については、海外のデータやけど以下の論文を参考にするとええで。

Incidence of dementia with Lewy bodies and Parkinson disease dementia Savica R., et al., JAMA Neurol, 2013

原因はαシヌクレインっていう異常蛋白からできるレビー(Lewy)小体が脳内に蓄積する事で神経細胞が脱落変性して、脳の神経伝達を阻害して認知症状が出てくんねん。

このαシヌクレインはパーキンソン病にも関係してんねんで。これら2つの違いはLewy小体がどこに出来るかなんや。

  • パーキンソン病 → Lewy小体が黒質緻密部や青斑核に出現して神経の変性脱落を来している状態
  • レビー(Lewy)小体型認知症 → 灰白質や大脳皮質にLewy小体が出現して変性脱落を来している状態

パーキンソン病はドーパミンを放出する部位にLewy小体が出来てパーキソニズム症状が出てくんねん。

パーキンソン病については下記で話してあるから、こっちで確認しておいてくれや。

ちなみにパーキンソン病の人に認知症状が出現してくるのは30~40%程度と言われてんねん。半数とまではいかなくても、1/3程度には認知症状が出てくるって事や。これは一般の高齢者と比較して5~6倍のリスクがあると言われてんねんで。かなりの割合やな。

診断基準

2017年の診断基準やと4つの中心的症状が記載されてるわ。

1つめが「変動する認知機能」、2つめが「幻視体験」、3つめが「パーキンソン症状」、4つめが「レム睡眠行動異常(RBD:REM Sleep Behavior Disorder)」になるで。日本神経学会の診断基準を下に添付しておくわ。

ちなみに、これらの特徴のうちいくつ該当するかでprobable DLBやpossible DLBと診断されるんやで。

さらに豆知識やけど、PD(パーキンソン病)、PDD(Parkinson disease with dementia)、DLBは同じ一連疾患と考えられてて、PD症状発症前後1年以内に任意機能障害を発症したのをDLB、1年以上経過してから認知症状が発症したのをPDDと分けてるわ。ただこれらは画像上は鑑別は難しいで。

DLB の臨床診断基準(2005)1.中心的特徴(DLB の診断に必須)
 ・社会的あるいは職業的機能に支障をきたす程度の進行性認知機能低下としての認知症
 ・初期には持続的で著明な記憶障害は認めなくてもよいが、通常進行とともに明らかになる
 ・注意/遂行機能/視空間認知のテストによって著明な障害がしばしばみられる

2.中核的特徴(2 つあれば probable DLB,1 つあれば possible DLB)
 ・注意や明晰さの著明な変化を伴う認知の変動
 ・典型的には,構築された具体的な繰り返される幻視
 ・特発性のパーキンソニズム

3.示唆的特徴(示唆的特徴が 1 つ以上、中核的特徴が 1 つ以上で probable DLB、
 中核的特徴を欠き1 つ以上の示唆的特徴があれば possible DLB、示唆的特徴のみでは probable DLB と診断できない)
 ・レム期睡眠行動異常症(RBD)
 ・抗精神病薬に対する重篤な過敏性
 ・SPECT または PET で示される基底核におけるドパミントランスポーターの取り込み低下

4.支持的特徴(通常みられるが,診断的特異性は証明されていない)
 ・繰り返す転倒あるいは失神
 ・一過性の説明困難な意識喪失
 ・高度の自律神経機能障害(例えば起立性低血圧、尿失禁)
 ・幻視以外の幻覚
 ・体系化された妄想
 ・うつ症状
 ・CT や MRI で側頭葉内側部が比較的保たれる
 ・SPECT、PETによる後頭葉の活性低下を伴う全般性の取り込み低下
 ・MIBG 心筋シンチグラフィでの取り込み低下
 ・脳波上側頭部の一過性棘波を伴う全般性徐波化

5.DLB の診断の可能性が低い
 ・局所的な神経徴候や脳画像でみられる脳血管障害の存在
 ・部分的にあるいは全体的に臨床像を説明しうる他の身体疾患または脳疾患の存在
 ・重篤な認知症の時期になって初めてパーキンソニズムが出現した場合

6.症状の時間的連続性
 ・DLB は認知症がパーキンソニズムの前か同時に出現したときに診断されるべきである
 ・PDD は明らかなParkinson 病の経過中に起こった認知症を記載するために用いられるべきである
 ・実際の場では、その臨床的状況に最も適した用語が用いられるべきで、Lewy 小体病(LBD)といった総称がしばしば役立つ
 ・DLB と PDD の区別が必要な研究では、認知症の発症がパーキンソニズム発症の 1 年以内の場合 DLB とする“1年ルール”を用いることが推奨される
 ・それ以外の期間を採用した場合、データの蓄積や比較に混乱が生じることが予測される
 ・臨床神経病理学的研究や臨床試験などの場合には、両者はLewy 小体病もしくはαシヌクレイノパチーなどのカテゴリーにまとめてもよい
McKeith IG, Dickson DW, Lowe J, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies:third report of the DLB Consortium. Neurology
※日本神経学会 7章Lewy小体型認知症を参考に作成

DLBにおける画像診断の重要性

診断基準の3や4の項目を見てもらうと分かるんやけど、DLBの診断基準において画像診断も大きく関わってんねん。

特に核医学の検査やな。主な評価項目は次のようなものがあるで。

  • 基底核のドーパミントランスポーター評価
  • 心筋シンチでの取り込み評価
  • 側頭葉内側部の萎縮評価
  • 後頭葉の活動評価(PETでのcingulate island sign)

ちなみに、Cingulate siland signは後頭葉の集積が低くなる事で相対的に孤立上の集積が見られる事や。

今までDLBの診断はMRIやCTやと中々難しかってん。でもDAT-SCANというドーパミントランスポーターを評価出来るSPECT検査が登場して、かなり診断精度が上がると期待されてんねんで。

レビー小体型認知症の臨床症状

DLBの認知症状は次のようなものが特徴的やと言われとる。

  • アルツハイマー病と比較して症状が軽度な事が多い
  • 認知機能のレベルが変動しやすい(1日の中で変動したり、長いと数ヶ月スパンで変動したりする事もある)
  • 計画を立てたりするような複雑な事が出来なくなる
  • 幻視(複雑性幻視)が多く、夕方など薄暗い時間帯に好発
  • パレイドリア(pareidolia)も多い
  • レム睡眠障害が起きる

パレイドリアは、染みや模様が人の顔に見えてくるヤツの事や。これは正常な人でも起きるんやけど、DLBの人は高頻度で発生するらしいな。

他にはパーキンソン病のように動作緩慢や易転倒になったりするんやけど、これはパーキンソン病よりも緩慢に進行する事が多いらしいで。

レビー小体型認知症の治療法

DLBの治療方法は基本的に投薬治療や。ただこれは完治を目指すための投薬やなくて、あくまで症状を緩和する対処療法になるで。

適切な投薬によって幻視や妄想、不安、行動異常が軽減される事が知られてんねん。

またパーキンソン症状が強くなってきたら、L-DAPA製剤なんかも服用する場合もあるで。長期投与になると薬剤耐性が出て来て効果が半減してくる事もあるから注意や。

レビー小体型認知症のまとめ

Lewy小体型認知症の特徴
・80万人程度が罹患しているアルツハイマー病認知症の次に多い変性認知症
・診断基準で画像診断が関わっている
・αシヌクレインという異常蛋白から生成されるレビー小体が沈着する事で発症すする
・PD、PDD(Parkinson’s disease with dementia)、DLBと診断は一連の疾患と考えられておりPD発症前後に認知症状が出たのをDLB、1年以降に認知症状が発症したのをPDDとしているが、画像上の鑑別は難しい
・臨床症状は変動する認知機能、幻視、パーキンソン症状、レム睡眠時行動障害など
・治療法は基本的に投薬治療で根本的な治療法はない
・予後はADとそれほど変わらないという報告が多い

画像所見

レビー小体型認知症の画像所見

次に画像所見についてやな。

VSRAD advance 2が補助的な診断も出来るようになったけどもMRIやCTなんかやと特徴的な画像所見はあらへんで。

  • CTやMRIではアルツハイマー病認知症と比較して海馬周辺の萎縮は見られない事が多いが例外もある
  • MIBG心筋シンチで心筋取り込みの低下
  • DAT-SCANで被殻のドーパミントランスポーターの集積低下

FDG-PETや脳血流SPECTの画像所見は次の通りやで。

  • 後部帯状回や楔前部の血流低下を認める
  • 海馬の血流はADと比較して保たれる
  • DLBはADと比較して後頭葉の血流や糖代謝の低下が早期から見られる

実際の症例

80代 男性 数年前にLewy小体型認知症と診断されている

次に実際の症例や。この症例はすでにレビー小体型認知症と診断がついている例や。画像上では特に異常を認めへんで。

頭部MRI レビー小体型認知症
上段左から拡散強調画像、T2WI、T1WI、下段左からFLAIR、MRA×2
80代 男性 RBDフォロー中に幻視、パーキンソン兆候が出現

つぎは核医学(FDG-PET)での症例やな。RBD(レム睡眠行動障害)でフォロー中に幻視、パーキンソン兆候が出てきて精査となった例や。

FDF-PET画像で楔前部や後帯状回、両側頭頂葉と両側後頭葉、両側前頭葉のFDG集積低下を認めるで。

MRIでは海馬の萎縮は特に認めへんかってん。ちなみにVSRADは0.98(関心領域内の萎縮のはほとんど見られない)や。

この海馬の萎縮を認めないのがADとの違いの1つやな。

頭部FDG-PET-レビー小体症

80代 女性 認知症状と幻視が出現

80代女性や。認知症状と幻視が出現して精査となった例や。後頭葉の集積低下が顕著やな。

頭部MRIとFDG-PET
最上段がFDG-PETの統計解析画像、中段左からDWI、T2WI、T2WI、下段左からFLAIR、MRA-MIP、T2WI冠状断

実はDLBはADも伴うものも多いねん。せやからDLBと診断されてても内側側頭葉の萎縮がある人もけっこうおるんやで。

ここがCTやMRIだけの鑑別診断が難しいポイントや。

鑑別診断のポイント

アルツハイマー型認知症との鑑別

鑑別はADや。似たような画像所見なんやけど、後頭葉のFDG集積や海馬の萎縮が参考になるで。

他には幻視やレム睡眠行動異常が診断の助けになったりするで。これらは初期のADには見られへんと言われとるからな。

他に認知症状を認める疾患には次のようなものがあるで。一言で認知機能低下と言っても各々で原因が違うから確認しておいてや。

ちなみに認知症状が起きる疾患の中でアルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症の4つが代表的なものと言われてんねん。

他にはCJDなんかも関連疾患の1つやな。αシヌクレインが重なったようなタンパク質をプリオンと呼ぶんねんけど、CJDはこのプリオンが異常蓄積した病態の事を言うんや。

まとめ

さて今日のまとめや。今日はDLBについてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

レビー小体が大脳皮質や灰白質に蓄積して発症する(黒質緻密部や青斑核に蓄積すればパーキンソン病になる)

基本的にCTやMRIで特異的な画像所見が無く、核医学(SPECTやFDG-PET)が有効な事がある

RBDや幻視などの臨床症状が診断に有効

これらかな。核医学の画像所見を忘れてしまった人は上の項目で復習しておいてな。

認知機能の低下は加齢による事もあるから一概には言えんけど、出来れば衰えさせたくはあらへんな。

年、取るとただでさえ時間の流れがアッという間やし、自分も気を抜いてるとマジで30まであっという間やで。ほんで30超えたら40までは秒やで。40超えての50までは瞬きくらいの感覚やで。あっという間にオッサンになるからな。

せやから今を大切にするんや。いつでも今この時が1番若い時やねんからな。

さて、今日はこれくらいにしよか。

ほな、精進しいやー!