肩関節脱臼(dislocation of shoulder)

くっそー、ポンコツ上司め。

おいおい、どエライ言葉が出てんねんで。何があってん?

撮影ミスしちゃって。その事で怒られるのはいいんですけど、みんなの前で公開説教されたんです。

それはアカンな。完全にアウトな説教方法や。完全に先輩ガチャ失敗してんな。そんなん関わらん方がええで。自分が持たへんくなるし。

それで思い出したけど、ワシも過去にごっついパワハラ上司がおったわ。あまりにも酷かったから教授に相談したら、1週間後には地方病院へ飛ばされてたわ。自分ももっと上役に相談してみたらええんちゃうん?何か変わるかもしれんで。

肩関節脱臼(dislocation of shoulder)とは

肩関節脱臼の概要

今日は肩関節脱臼についてレクチャーしてくで。

肩関節脱臼のメカニズムは、筋肉や腱が骨頭を保持出来ひんくらいの外力が骨頭に加わった時に関節面から滑って脱臼すんねん。肩関節は肩甲骨と接してる関節面が少ないから外力が逃げていく方向がメッチャあんねんな。逆に股関節なんかは関節臼蓋があるから、外れるよりは大腿頚部骨折のような形が多いで。これは外力の逃げ場があらへん為に起きんねん。

次に肩関節脱臼の概要や。肩関節脱臼は大きく3つあるで。前方脱臼と後方脱臼、垂直脱臼や。頻度としてはほとんどが前方脱臼やな。90%以上とも言われてる。若い人ほど再発率が高いっちゅー特徴があるんや。逆に40代以降は再発率がほどんどあらへんらしいで。

前方脱臼と後方脱臼

やっぱりスポーツ時の外傷で負傷する事が多いな。以下が概要や。

概要
肩関節脱臼前方脱臼、後方脱臼、垂直脱臼に分類される
前方脱臼が90%以上の割合で発生
脱臼すると強い痛みがある
原因は外傷やスポーツなど、外転や外旋する動作の時に起きる事が多い
若い年代では再発率が高く反復性前方脱臼に移行する事がある
40代以上での再発はほどんどない
概要
反復性肩関節脱臼初回脱臼時に肩関節前方の支持組織の破綻による事が原因
20歳以下では再脱臼率が50%にもなるが年代があがっていくに従い低下していく

反復性肩関節脱臼の場合は、肩関節(上腕骨)を保持する靱帯や腱が損傷している事で外れやすくなっているのが原因や。初回よりも弱い外力で脱臼するようになるで。

場合によっては、肩甲骨の関節窩や上腕骨骨折を伴う事があって、主な合併損傷は次のようなもんがあるで。

腕神経叢損傷、腱板断裂、大結節骨折、腋窩神経損傷

肩関節の解剖

次に肩関節周囲の解剖や。この後に出てくる特徴的な画像所見を理解するためにも解剖は重要やで。

肩関節は股関節なんかと比較して骨頭が肩甲骨にそれほど包まれてへんねん。これは肩は関節可動域が広いためなんやけど、その分筋肉や腱で補強されてんねん。ただこれにはデメリットもあって、外力に対して外れやすいという面もあんねん。せやから脱臼の中で肩が1番多いねん。

肩解剖

肩関節脱臼の原因と臨床症状

肩関節脱臼の原因は、コンタクトスポーツによる外傷が1番多いな。他には交通事故なんかの高エネルギー外傷もあるで。

臨床症状は疼痛、腫脹、運動制限、神経麻痺なんかや。脱臼によって靱帯が伸展してたり、損傷してたりすると痛みとして現れるで。

治療方法は、非観血的整復や。これは局所麻酔なんかを用いた整復方法やで。主な方法は次のようなもんがあるらしいで。この辺りは専門やあらへんから詳細は割愛するで。

・牽引ー対抗牽引法、外旋、肩甲骨の徒手整復、Cunningham(マッサージ)法、Davos(自己整復)法、Stimson(重りぶら下げ)法、FARES(fast、reliable、safe)法

画像所見

肩関節脱臼の画像所見

次に画像所見についてやで。特徴的な所見がいくつかあるから順に説明してくで。

まず前方脱臼や垂直脱臼は単純写真で一目瞭然や。上腕骨頭がずれてるからな。ただ後方脱臼は正面像だけやと指摘が難しい場合が多いと言われてるで。その理由は上腕骨頭が後方にずれた場合、正面像やと一見して上腕骨頭の位置が変化が少ないからなんや。これはスカプラYビュー(側面像)を撮影する事で診断が容易になる事が多いで。

MRIで特徴的な所見としては、Hill-Saches leasion、Bankart leasionのような所見がいくつかあるで。

単純写真とMRIの画像所見について纏めておいたで。

モダリティ画像所見
単純写真前方脱臼は診断が容易
後方脱臼は見かけ上、上腕骨頭が移動していないように見える事が多いので注意する
側面像(スカプラYビュー)が有効
上腕骨の内旋固定像とrim sign(上腕骨と関節窩後面の距離が6mm以上)などがあるが、rim signは撮影ポジショニングなどで疑陽性が多い
MRI(前方脱臼)Hill-Saches leasion
Bankart leasion
大結節骨折、小結節骨折、上腕骨頚部骨折
腱板損傷
神経損傷
MRI(後方脱臼)上腕骨内旋位固定
rim sign trough line
reverse Bankart leasion
Bennett leasion

実際の症例

これは前方脱臼整復後の症例や。20代男性でスノボで転倒受傷した例や。Hill-Sachs lesionとBankart lesionを認めるで。

肩MRI-前方脱臼
左からT2脂肪抑制、T2スター
所見内容
Hill-Sachs lesion上腕骨頭の後外側面の陥没骨折
上腕骨頭が脱臼の際に関節窩の前縁と衝突する事で起きる
CTは微細な骨折、MRIは骨髄浮腫も認める事がある
Bankart lesion関節窩前下部の関節唇剥離(soft tissue Bankart lesion:古典的Bankart lesion)と関節窩骨折(osseous Bankart lesion:骨性Bankart lesion)に分けられる
関節窩骨折はCTが有効な事が多い

次はこの症例や。30代男性でスポーツ外傷にて受診した例や。後方脱臼で後方関節唇の剥離があるのが分かるやろ。これはrevere Bankart lesionと言って後方脱脱臼によく見られる所見なんや。他の所見については表の通りやで。

肩MRI-reverse-bankart-lesion
左からT2スター、T2脂肪抑制、T2強調
reverse Bankart lesion後方脱臼における後方関節唇の剥離や関節窩後縁の骨折
rim sign上腕骨頭内側縁と関節窩前縁の距離が6mm以上で有用な所見と言われているが、ポジショニングなどの要因に左右される事も多い
trough line骨頭内側の関節面に平行に走向する線状陰影
reverse Hill-Sachs lesionとも呼ばれている
Bennerr lesion後方関節包の関節窩付着部における骨化で投球障害で見られる事が多い

Hill-Sachs lesionやBankart lesionなどの所見が出来る原因は次のイメージの通りやで。分かりやすいっちゃ分かりやすいな。

hill-saches-lesionとbankart-lesion

他にもPerthes lesion、ALPSA lesion(anterior labroligamentous periosteal sleeve avulsion)、GLAD lesion(glenoid labral articular disruption)、HAGL lesion(humeral avulsion of the glenohumeral ligament)なんかがあるで。簡単には次の通りなんやけど、詳しくは別でレクチャーしてるから確認してみてや。

関連所見
Perthes lesion関節唇は分離しているが、骨膜で関節窩と繋がっている状態
ALPSA lesion分離した関節唇が骨膜の深部にロール上に変位して巻き込まれた状態
GLAD lesion肩甲骨関節窩軟骨が関節唇と共に剥離損傷した状態
HAGL lesion下健康上腕靱帯の断裂や剥離した状態で特徴的な所見からJ signと呼ばれる

鑑別診断のポイント

SLAP(superior labrum anterior and posterior) lesion

次に鑑別診断のポイントやな。同じような部位の損傷として、SLAP(superior labrum anterior and posterior) lesionなんかがあるで。

SLAP lesionは上腕二頭筋腱の付着部の損傷で急性外傷や投球などの反復性ストレスのようなスポーツ外傷で起きると言われてるんや。SnyderはSLAP Lesionを4つのタイプに分類してるで。以下の通りや。ちなみにSLAP lesionと関節唇下間隙は鑑別が難しい事が多いで。

SLAP損傷
SLAP損傷の分類
type1:関節唇上部の変性や毛羽立ち
type2:関節唇上部の剥離を伴う断裂
type3:バケツ柄様断裂
type4:長頭腱近位部にまで及ぶバケツ柄様断裂

あれこれやっても覚えきれへんやろから、これくらいにしとこかな。

他にはインピンジメントなんかも肩関節周囲でよく見るヤツやから合わせて確認しておいてもらえるとええで。

まとめ

今日は肩関節脱臼についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。特徴的な画像所見は必ず覚えておくんやで

脱臼の中でも高頻度で、前方、後方、垂直の3つがある。前方脱臼がほとんど

単純写真では2方向は必須(後方脱臼は正面像だと診断が難しい)

各々の特徴的な画像所見(Hill-Sachs lesion、Bankart lesion、reverse Hill-Sachs lesion、reverse Bankart lesionなど)

肩や肘は受傷してると通常のポジショニングが出来ない事があって撮影に苦慮する事があるんですよね。

そこが技師はんの腕の見せ所やんけ。

ワシらは撮影された画像を読影すんねん。言い替えると、良い読影が出来るかどうかは技師はんの技術の影響が大きいって事なんやで。

それには自分自身がある程度の読影能力も持ってへんとな。

ほな、精進しいやー!