十二指腸癌(duodenal carcinoma)

いたたた・・・。昨日から腹痛が治まらないな。。。何か変なものでも食べたかな。

おぬし、それは胃癌かもしれんで。

そんな訳ないでしょ。まだ30歳にもなってないんですよ。

どこが痛いん?自分ストレス凄そうやもんなぁ。みぞおち付近で空腹時の痛みなら十二指腸潰瘍、食後なら胃潰瘍の可能性があると思うで。穿孔して腹膜炎にでもなったら洒落にならんで。早く原因を特定して治療しとき。

っていうか、多分やけど胃潰瘍やろ。もしくは十二指腸潰瘍、胃癌や十二指腸癌、膵癌の可能性もあるな。っていうか食中毒ちゃうん?むしろ腹痛は気のせいやとも思えてきたわ。ワシ痛くないしな。

せや、今日は十二指腸癌についてレクチャーしてこか。胃癌はこの前やったしな。そうしよか。早速始めるで!

十二指腸癌(doudenal carcinoma)とは

十二指腸癌の概要

十二指腸癌とはなんぞやから話していくで。そもそも十二指腸は小腸に分類されてんねん。「十二指腸」、「空腸」、「回腸」の3つに分けられてるで。小腸癌の多くが十二指腸癌や。ついで空腸癌、回腸癌の順に多くなるで。幸いにも十二指腸は内視鏡検査で観察できるから空腸、回腸と比較して発見しやすいってのはあるな。

ただ早期の場合は自覚症状があらへん事が多くて、症状が出てくる頃には進行癌の状態になっている事もしばしばやねん。

小腸悪性腫瘍には神経内分泌腫瘍、腺癌、悪性リンパ腫、肉腫なんかがあるんや。組織分類としては十二指腸癌は腺癌が多いで。

後は十二指腸癌の頻度は年間10万人当たりで数人程度の希少癌に分類されてんねや。ちなみに十二指腸乳頭部に出来た癌は胆嚢癌に分類されるから注意やで。

概要
・十二指腸は小腸の一部で、小腸は十二指腸、空腸、回腸に分類される
・小腸癌は十二指腸が45%、空腸が35%、回腸が20%の割合で発生する
・神経内分泌腫瘍、腺癌、悪性リンパ腫、肉腫が組織型としてあり、十二指腸癌、十二指腸GIST、平滑筋肉腫、神経鞘腫などがある
・神経内分泌腫瘍が1番多く、次いで腺癌が多い
・十二指腸乳頭部に発生するものは十二指腸乳頭部癌と呼び胆道癌に分類される
・年間の罹患数は少なく希少癌に分類される
・早期は自覚症状が無く、進行すると食事通過障害や腹部膨満間、嘔吐などが出てくる

十二指腸乳頭部癌については、こっちを参考にしてな。

十二指腸の解剖と役割

十二指腸は胃の幽門部からTreitz’s 靱帯までの部分で小腸の一部なんや。断面は胃とほぼ同じで、粘膜層、粘膜下層、(固有)筋層、漿膜の順で構成されてるで。

十二指腸は十二指腸球部、下行部、水平部、上行部と分けられて、長さはおおよそ25cm程度や。名前の由来は指の幅の12本分に相当するからとか何とかって話しや。参考までに小腸は十二指腸、空腸、回腸に分類されるのは上で話した通りや。

消化管解剖
消化管解剖
消化管解剖

十二指腸の役割は、胃で消化されたものに胆汁や膵液を混ぜて、脂肪や消化酵素を混ぜる事でより消化吸収しやすい形にしてんねん。流れとしては、消化食物が十二指腸に入ってくる事で粘膜が刺激され、それによって胆嚢を収縮したり膵臓から膵液を出したりして混ぜてんねんな。ほんでより消化吸収しやすい形にして空腸へ送り出してんねんで。

ちなみに胃酸は強い酸性やけど、胆汁や膵液はアルカリ性でこれを混ぜる事で中和するという役目もあんねん。そのまま送ったら小腸が酸でやられてしまうからな。

他に十二指腸は消化管穿孔のおきる可能性がある部位でもあんねん。原因は潰瘍が最多やな。潰瘍が出来て、そこから穿孔してフリーエアーが認められんねん。消化管穿孔についてはこっちを確認しておいてや。

十二指腸癌の原因と治癒率

十二指腸癌の原因は明確なものはまだ解明されてへん。ただ十二指腸腺腫から変化する事が多い事や、家族性大腸腺腫の場合には可能性が高くなるってのは分かってるで。

生存率については小腸癌のデータになるけど、国立がん研究センターから5年生存率が次のように出てるで。十二指腸癌については内視鏡検査で観察するから発見もしやすいんやけど、その先の空腸、回腸ははなり難しいねん。カプセルタイプのカメラなんかもあるけど、それで見つかるようになるともう少し数字も改善してくると勝手に期待しとる。

小腸癌(5年生存率)Ⅰ期:80.8% ⅡA期:85.8% ⅡB期:77.8% ⅢA期:51.6% ⅢB:20.8%

治療については基本的に大腸癌に準じたケースが取られる事が多いとの事や。手術が第1選択で進行した状態で見つかった場合は化学療法になるケースが多いな。抗がん剤で癌を小さくして切除可能な大きさにしてから外科的手術をするという流れや。ただこれも全員に該当する訳やなくて、抗がん剤治療しても小さくならへん場合もあるから何とも言えんところやな。

一方で早期の場合は内視鏡切除術で終わる事もあるで。早期発見が重要やな。

十二指腸癌のTNM分類

次にTNM分類とステージ分類についてや。表にして作っておいたから見ておいてくれや。UICC-TNM分類(第8版)を参考にしてるで。

T分類T1T2T3T4
T1a:癌が粘膜内にとどまっている T1b:癌が粘膜下層にとどまっている癌が固有筋層にとどまっている漿膜下層か腹膜化されていない部分の筋周囲への浸潤臓側腹膜を超えるか多臓器浸潤がある
N分類N0N1N2
リンパ節転移なし所属リンパ節内にリンパ節転移が1~2個所属リンパ節内にリンパ節転移が3個以上
M分類M0M1
遠隔転移なし遠隔転移がある
                        UICC-TNM分類 第8版を参考に作成
N0N1N2M
T1ⅢAⅢB
T2ⅢAⅢB
T3ⅡAⅢAⅢB
T4ⅡBⅢAⅢB
UICC-TNM分類 第8版を参考に作成

十二指腸癌についての概要はこんな感じや。一部小腸癌も含んだけど、合わせて頭の中に入れておいてもらえるとええで。

画像所見

十二指腸癌の画像所見

次に画像所見についてや。十二指腸癌は基本的に内視鏡や胃造影検査で発見される事が多いねん。辺縁不整の潰瘍形成病変や狭窄しているような所見ががあった場合は癌を疑う必要があるで。

CTは同心円状、もしくは左右非対称な腸管壁肥厚が典型的な所見と言われとる。FDG-PET検査はステージングで検査する場合がほとんどや。リンパ節や遠隔転移の診断に使ったりするで。

画像所見
十二指腸癌・基本は内視鏡は胃透視で辺縁不整の潰瘍性病変
・CTでは同心円状、または左右非対称の壁肥厚が特徴的
・FDG-PETではリンパ節転移、遠隔転移診断に有効である

実際の症例

さて実際の症例や。60代女性で腹部不快感の精査で十二指腸癌と診断された例や。十二指腸に5cm大の大きさの腫瘤を認めて肝転移もあってん。化学療法を施行する事になったで。

腹部CT-十二指腸癌
腹部造影CT
腹部CT/MRI-十二指腸癌
上段:腹部造影CT 下段:腹部造影MRI
腹部CT/MRI-十二指腸癌
左:腹部造影CT 右:腹部造影MRI

この症例は70代男性で黄疸の精査で発見された例や。十二指腸に4.5cm大の腫瘤を認めてFDG-PETでは局所への集積と肝転移も認めたで。この症例も化学療法が選択されたらしいわ。

腹部CT-十二指腸癌
腹部CT
FDG-PET-十二指腸癌
左:腹部CT 右:FDG-PET画像

鑑別診断のポイント

潰瘍、良性腫瘍など

鑑別疾患やけど、これは潰瘍や良性腫瘍、近隣臓器由来の浸潤のパターンがあるわ。腫瘤が大きくなると十二指腸乳頭癌との鑑別も困難になる事が多いで。膵癌や胃癌なんかが大きくなって画像上でどちらが原発なのかが分からないパターンやな。

良性腫瘍の種類は腺腫、平滑筋腫の頻度が高いねんけど、レアケースとしてBrunner(ブルンネル)腫瘍(腺腫)、線維腫、脂肪腫、嚢腫などがあるで。

Brunner腫瘍はBrunner腺の過形成で腫瘤を形成したものや。レアケースと言ったんやけど十二指腸良性腫瘍の中では最も高頻度やで。腺組織による隆起性病変を認めるにも関わらず、腺腫としての特徴をあまり持ってへんのが特徴や。そのため腺腫、過誤腫、過形成結節という呼び方をされる事もあるで。まぁ、マメ知識や。

十二指腸潰瘍

他の消化器系の悪性腫瘍

他の消化器系の悪性腫瘍については以下を参考にしてくれや。

まとめ

今日は十二指腸癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

早期は無症状で、進行し大きくなると腹部不快感や黄疸などが出てくる

潰瘍と併存するパターンもある

早期発見は内視鏡や胃透視検査でCTやFDG-PETは病期診断で使用する

こんな感じかな。十二指腸癌と十二指腸乳頭部癌は分類が違うのがややこしい点かな。十二指腸乳頭部癌は胆道癌として扱われんねん。これも稀な癌で喫煙がリスク因子として報告されてるんや。いずれにせよ早期発見が重要なのは言うまでもないで。自分の胃痛原因も早く調べておいた方がええで。もしかしたらって事もあるしな。

ちなみに癌になった人がまず思う事を教えたろか。それは「まさか自分が」って言葉やねん。今や寿命も延びてきていて、癌は基本的にかかる時代やと思ってた方が間違いないで。例えが適切かどうかは微妙やけど、インフルみたいなもんや。かかるときはかかるやろ。

さて、今日はこれくらいで終わりするで。

ほな、精進しいやー!