なぁ、ちょっと小難しい事聞いてええか?
いいですよ。僕に答えられるかどうか分かりませんが。
客観的に見ると絶対やった方がええのに、いざ自分がその状況になると全然やらん時ってあるやん。あれって何なんやろな?
例えば、検診で要精査になった時って、絶対に検査受けた方がええやん。そんなん分かりきってるやん。でも適当な理由つけて精査を受けへん人もおんねん。自分だけは大丈夫とかな。ほんで1年後の検診でも要精査になって進行癌で発見されるっていう。この仕事してると、そんなパターンを何例も見てきてん。あれなんやろなって思ってな。
その1年受けへんかったばかりに進行がんになってしもうたら元も子もあらへんのちゃうかなとは思うねんけどな。
頭では理解してるけど、心ではってヤツなんかな。
せっかく助かる機会があったのに、言葉はアレやけどもったいないとも思ってな。難しいで。
もくじ
上衣腫(ependymoma)とは
上衣腫の概要
さてレクチャー始めるで。本日は上衣腫や。上衣腫をまずは英語で言うてみぃや!
えっ?ああ、そりゃあれですよ。Jyouisyu!
れっぽく言ってもダメや。
ええか、上衣腫ってのは上衣細胞(ependymal cellやsubependymal cell、ependymal cluster)のように側脳室周囲や脊髄中心管周囲から発生すると言われとる。簡単に言うと脳室の壁を作ってる細胞や。ここから発生すんねん。
この細胞は脊髄にもあるから発生部位も脳室や脊髄腔に沿って出てくるで。組織学的亜型としてcellular ependymoma、papillary ependymoma、clear cell ependymoma、tainycytic ependymomaなどがあると言われとる。
まぁ細かい点は抜きにして、技師はんの場合は若い年代に多くて、側脳室周囲や脊髄中心管に好発すると覚えておけばええで。
テント上に出来るか、テント下に出来るか、脊髄に出来るかという分け方がイメージしやすいかもな。発生頻度としては、第4脳室が33%、第3脳室や側脳室は23%、他と言われとる。図にするとこんな感じや。テント上、テント下上衣腫の両方ともグレード2と3があるで。
臨床症状と治療法
主な臨床症状は頭痛や嘔吐、意識障害、歩行不安定、麻痺などがあるで。これらは腫瘍が大きくなる事での水頭症による症状やで。上衣腫の治療は全摘出出来たかどうかで決まって、オペ時に全摘出来れば完治も見込める脳腫瘍なんや。ただ残存病変からの再発は予後がかなり悪いとの事やで。
テント下は小児に多いのも特徴やな。小児では毛様細胞性星細胞腫の次に多い脳腫瘍や。小児脳腫瘍の10%くらいと言われとるな。
上位下腫
他には上位下腫:subependymomaというのもあってこれも脳室の中に出来る腫瘍や。これはグレード1に分類されとるわ。
脳室壁に付着していて手術するのが難しいらしいで。ただ、これも全摘出出来れば完治が見込める腫瘍や。
全年代で見つかって発育もゆっくりな為に、たまたま画像診断で見つかる事も多い腫瘍や。透明中隔や外側壁に付着して見られる事が多いで。
画像所見
上衣腫の画像所見
次に画像所見についてや。
T1強調で低信号、T2強調やFLAIRでは高信号と、他にもありそうなパターンや。造影すると、腫瘍内の出血や嚢胞、壊死、石灰化があるために不均一な増強パターンを示す事が多いで。T2強調も均一な高信号やなくて、嚢胞や高信号やったり出血を反映して等信号に近い高信号やったり、複雑な信号パターンを呈する事が多いで。
他には石灰化を認めるのが約60%あるからCTを撮影するのも有効やで。
ちなみにテント下の第4脳室に出来た上衣腫はLuschka孔を通じて尾側に進展して行く事があるで。
FLAIR | T2WI | T1WI | CE | 他 | |
---|---|---|---|---|---|
上衣腫 | 高信号 (複雑な信号パターンが混在) | 高信号 (複雑な信号パターンが混在) | 低信号 | 出血や嚢胞、壊死による複雑な信号パターン | 第4脳室に出来たものはLuschka孔からくも膜下腔や脳底槽に進展 石灰化を認めるのが半数以上 |
上位下腫についても画像所見を言っておくわ。基本的に上衣腫と同じなんやけど、腫瘍内出血はほどんど無いで。造影効果もほとんど無しや。
実際の症例
次に実際の症例や。テント下に発生した上衣腫の症例やで。
鑑別診断のポイント
髄膜腫や上衣下腫
さて鑑別診断についてや。テント上は髄膜腫や上位下腫なんかや。
上衣腫は脳実質成分が比較的大きいのが特徴や。テント下の場合は、髄芽腫や星細胞腫やな。上衣腫との鑑別は石灰化の有無がキーやで。
まとめ
さて、今日は上衣腫についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
脳室や脊髄腔に沿って発生し、テント上は成人に多くテント下は小児に多い
T1強調で低信号、T2強調やFLAIRでは高信号、造影は腫瘍内の出血や嚢胞、壊死、石灰化があるために不均一な増強パターンを呈する事が多い
こんな感じや。1つ目が発生部位や。組織学的な点から脳室や脊髄腔に沿って発生するで。テント上は成人に多くテント下は小児に多いで。小児における上衣腫は2番目の頻度の多さや。2つめが画像所見についてやな。T1強調とT2強調の信号強度は非特異的なパターンやけど、造影は出血や壊死、嚢胞などを反映して複雑な増強パターンを示す事が多いで。これはT2強調にも同様の傾向が見れるで。
冒頭の件ですけど、気になったので調べてみました。これって「正常性バイアス」っていうやつらしいですよ。
なんや、ちゃんと証明された現象だったんかい。どれどれ・・・
「心が疲弊しないように、ある程度の変化までは正常と考えてしまう事。これにより自分は大丈夫、今回は大丈夫、まだ大丈夫などと物事を過小評価して考えてしまう事」
とあるな。なるほど、心の防御反応やったんやな。防御反応のために発見が遅れてまうのは本末転倒のような気もすんねんけど、それほど行動を起こすってのはストレスがかかる事なのかもしれんな。
なんか納得したようなせんような気分やわ。
まぁ今日はこのへんにしとこか!
ほな、精進しいやー!