類表皮嚢胞(epidermoid cyst)

人生が上向きになる法則があるらしいねんけど、聞く?

いや、結構です。

なんでやねん!そこは普通「お願いします」やん!話しが終わってまうやんけ!

類表皮嚢胞(epidermoid cyst)とは

もうええわ。

今日は類表皮嚢胞、俗にエピデルモイド(epidermoid)と呼ばれるものについて話していくで。

類表皮嚢胞と似たような疾患名で類皮嚢胞(dermoid:デルモイド)というものがあるんや。これらは似て非なるものやから、この機会にちゃんと区別して覚えておくんやで。

類表皮嚢胞の概要

まずは類表皮嚢胞の概要からや。

まず、類表皮嚢胞は基本的に良性腫瘍である事、基本的に早急に対応が必要な疾患やあらへんって事の2点を知っておいてな。

類表皮嚢胞の内容物は外胚葉なんかの胎生期遺残組織や。本来なら出産に合わせて無くなるはずの組織が何らかの理由で残ってしまって、それが嚢胞の中に入ってしまっている状態やで。

脳腫瘍の中の発生頻度的には1%程度と稀な部類の腫瘍や。

頭部領域に発生するのが先天性のもので、脊髄領域に発生するのが後天性のものや。後天性には腰椎穿刺後や外傷なんかで、上皮成分が混入した場合に発生する事が知られてるで。

同じような病名に「類皮嚢胞」があるんやけど、類皮嚢胞との違いは内容物や。類表皮嚢胞は壁に角化扁平上皮、内容物にケラチンやコレステロール)が主で、類皮嚢胞は毛髪や皮膚などの表皮成分なんや。これらは似て非なるものやで。

類上皮嚢胞はケラチンの脱落や類上皮細胞の分化が緩慢に起こって、徐々に増大していくで。

以下に主な類表皮嚢胞の特徴を記載しておくわ。

  • 発育がゆっくりな良性病変
  • 40代前後に多く発症する(見つかる)
  • 小脳橋角部に約半数、Sylvius裂やトルコ鞍部に各々15%程度、第4脳室に10%程度 ・自然破壊、悪性化は非常に稀
  • 類表皮嚢胞は類皮嚢胞の7倍程度発生頻度が高い
  • 一方で破裂や癌(悪性)化の頻度は類皮嚢胞よりも少ない
  • 小脳橋角部に50%、シルビウス裂や傍トルコ鞍部に15%程度、第4脳室に10%程度
  • 真珠腫(pearly tumor)と呼ばれる事もある
脳幹 脳神経 小脳橋角部

臨床症状

病変が小さいうちは特に症状が出てくる事はあらへん。

大きくなってくると、三叉神経を圧迫して顔面痛や顔面神経麻痺が起きたりしてくるで。他には水頭症のような症状が出る事もあるな。

ちなみに破裂すると内容物が周囲に漏れて無菌性髄膜炎になる事もあるで。

治療方法

類表皮嚢胞の治療方法やけど、これは手術で摘出するのが一番や。放射線治療はあまり効果があらへんと言われとる。

完全摘出できれば完治する病気なんやけど、脳幹付近のような発生部位によってはそれが難しい事があんねん。

理由は神経とか血管を巻き込んで発育しているケースが多いかららしいな。

しかも残存病変があると後々増大してきて再手術が必要になる事があるらしいわ。ただこれも全例再発するという訳やなくて、個人差が大きいねんて。

画像所見

類表皮嚢胞の画像所見

次に画像所見について話していくで。画像診断についてはMRIが必須や。

類表皮嚢胞は基本的に脳脊髄液(CSF)と同じような信号強度を示すねん。

  • T1WI → CSFと同じがやや高信号
  • T2WI → 同上
  • FLAIR → 内部に不均一な構造を認める
  • DWI → 著明な高信号(ADCはCSFよりも低く、脳実質より高い)
  • 石灰化を10~25%程度に認める
  • 脳槽を埋めるように進展する
  • 基本的に造影効果はない(造影効果があれば扁平上皮癌の可能性を考慮する)

こんな感じやで。

atypical epidermoid

上記は典型例なんやけど、中には例外もあんねん。それをatypical epidermoidと読んでんねんけど、これは類表皮嚢胞のうちの5%程度あるとの事や。

  • T1WI → 等~高信号(white epidermoid)
  • T2WI → 様々な信号強度
  • 出血や肉芽様組織が高頻度に認められる
  • T1WIが高信号を示す理由は、炎症や感染などの理由で嚢胞内の蛋白濃度が上昇する事

画像所見には例外があるものも多い事を知っておくのは重要やで。

実際の症例

50代 男性 頭痛精査

実際の画像や。50代の男性の例や。橋前槽に拡散強調画像で高信号を示す病変が確認出来ると思う。

頭部MRI 類上皮嚢胞
左上から右に拡散強調、ADC、T2WI、下段左下からFLAIR、T1WI、FLAIR-sag


参考症例

こっちは別の症例や。Heavy T2を撮影すると診断に有効な事があるで。

MRI画像 類表皮嚢胞

鑑別診断のポイント

鑑別診断にあがる疾患

さて鑑別診断やな。鑑別には、聴神経腫瘍、くも膜嚢胞、神経腸管嚢胞(neurenteric cyst)、泡状外脊索症(ecchordosis physaliphora)なんかがあるで。これらは類表皮嚢胞と同じような部位に出来る腫瘍や。各々の鑑別方法は次の通りや。

  • 聴神経腫瘍 造影効果の有無で鑑別(聴神経腫瘍なら造影効果あり
  • くも膜嚢胞 辺縁が整で各シークエンスでCSFと同じ信号強度、拡散強調も低信号
  • 神経腸管嚢胞 T1WIで軽度高信号(white epidermoidとの鑑別が難しい場合がある)
  • 胞状外脊索症 T1WI、T2WIではCSFと同等の信号強度、heavy T2では薄い壁で分けられた嚢胞様構造が認められる

こんなように、各々で鑑別できる特徴があるから、それを覚えておけば頓珍漢な読影にはならへんと思うで。

聴神経腫瘍については下記でも話してるで。

他にはこの辺りも関係する事もあるから、合わせて確認しておいてや。

まとめ

さて、そろそろ今日のまとめや。ポイントは3つ。

基本的に良性腫瘍で発育がゆっくり

完全切除できれば完治する(実際は発生部位により難易度が変わる)

CSFと同じ信号強度だがFLAIRで内部構造が確認できるのと、拡散強調で高信号

こんな感じや。病変が小さい時には症状が出てくる事はあらへん。せやから検診なんかで偶発的に発見される事も多いで。逆に顔面麻痺や三叉神経痛が出てきた場合は、それなりの大きさになっているって事やな。

似たような疾患名に類皮嚢胞(dermoid cyst)がありますよね?これの違いがいまいち分からないのですが。

それらの違いは上でちょこっと話した通り、内容物の違いや。内部に真皮、表皮組織があるかどうかやな。

具体的には毛髪なんかがそうやで。小児から中年まで幅広い年齢層に発症すんねん。ほとんどが後頭蓋窩に発生すると言われとる。

腫瘍が破裂すると、ruptured dermoid cystと呼んで、髄膜炎症状、症候性てんかん、難治性水頭症になったりする事もあるから注意やで。

基本的には、類皮嚢胞も外科的手術で全摘できれば完治も見込めるヤツや。

読影は一長一短では出来るようにならへん。多少読めるようになった時が一番危ないねん。「無知の知」を自覚せーよって事やな。

てな訳で、今日はこれくらいにしよかな。

ほな、精進しいやー!