今日は大腿骨についての話しをしていこと思ってるんやけど、年間で何人くらいの人が大腿骨頸部骨折してると思う?
うーん・・・1万人くらいですか?
それが一説によると10万人以上いるらしいで。そのほとんどが高齢者で転倒によるのが原因との事や。
これの厄介なところは骨折による筋力低下で、そのままADLが低下してしまう原因にもなる事や。1度寝たきりになると筋力の低下は早いからな。全部が全部やないにしても、年間数万人が寝たきりになる可能性があると考えると、かなりの数やと思う。
健康寿命という言葉を最近聞くようになったやろ。年を取るのは避けられん事なんやけど、元気に年を取りたいもんやで。
もくじ
大腿骨頸部骨折(femoral neck fracture)とは
大腿骨頚部骨折の概要
今日は大腿骨頸部骨折について話してくで。
大腿骨頚部骨折は高齢者で特に女性に多いと言われてるわ。って事は原因の1つに骨粗鬆症があるのは間違いないな。
この大腿骨頚部骨折のやっかいなところは、関節包内に骨膜性骨新生があらへんねん。つまり難治性なんや。
1回骨折したら治りにくくて、それゆえ骨頭壊死になりやすいという傾向があるんや。ちなみに他には転子部骨折もあるで。
頚部骨折は痛みがそれほどなくて内出血も少ない事が多いんやけど、治癒しにくいのは上で述べた通りや。一方、転子部骨折は痛みが強くて内出血が多いからADLが低下する事も多いんやで。
大腿部頚部骨折の分類もあるで。これはGarden分類が有名やな。参考までに載せておくで。
Stage |
内容 |
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Garden分類 |
Stage1 |
不完全骨折で内側頚部に骨折線が無い状態 |
Stage2 |
完全骨折やけど、転位が無く主圧縮骨梁に乱れが無い状態 |
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Stage3 |
転位のある完全骨折で主圧縮骨梁の方向が一致していない状態 |
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Stage4 |
転位高度の完全骨折の状態 |
大腿骨の解剖
次に大腿骨付近の解剖についてやな。この辺は基本やから詳しくは解説せーへんで。不明な所がある人はもう一回復習しといてな。
大腿骨頸部の原因と臨床症状
次に大腿骨頸部骨折の原因や。
大腿頚部骨折は転倒や交通事故などの外的要因によるものと、骨粗鬆症などの内的要因に分けられるで。前者、特に交通事故なんかは若い人でも可能性はあるんやけど、後者は基本的に高齢者やねん。
せやから骨粗鬆症になると、ちょっとした衝撃、例えば躓いたり、足を捻ったりしただけで骨折が起きる事もあんねん。
臨床症状は足の付け根部分の痛みや腫脹なんかや。症状が進行してくると歩行が困難になる事も多いで。
頚部骨折は骨膜性骨新生があらへんってのは概要で話した通りやけど、これはどういう事かっていうと、骨折前の状態に戻るってのは難しいって事やねん。動けなくなるとバイタリティも下がるからな。いい事あらへんねん。
予防としては適度な運動や食事やな。基本的に骨粗鬆症にならへんようにする事が第1や。
画像所見
大腿頚部骨折の画像所見
単純写真
次に画像所見についてやで。単純写真やと不明瞭な事が多くて診断が難しい場合があるで。偏位や転位を来してれば分かりやすいけどな。
イメージ的に単純Xpでわかりずらいのは意外かもしれんな。
MRI
一方でMRIなら骨折に伴う骨髄浮腫なんかを描出できるから有利やな。骨髄浮腫を見る事で早期の診断にも有効なんや。下の例はMRIでの診断なら骨折線以外の骨髄浮腫まで診断する事が出来てるのが分かると思う。骨髄浮腫がある場合はT2脂肪抑制で高信号に写るで。
まぁCTでも分かるんやけど、骨折線や転位の有無がメインや。骨髄浮腫までは分からへんで。
実際の症例
80代の女性や。自宅で転倒して精査となった例やで。右大腿骨頚部に骨折線、骨幹部側は軽度上方に転位して頚部の短縮を伴ってるのが確認できるやろ。他には右大腿に骨挫傷も伴っているな。Garden分類やとStage3になるかな。
70代女性の例や。右股関節を捻って精査となってん。画像診断上、右大腿骨頸部は不全骨折、左大腿頚部は完全骨折が疑いとなってるわ。
こっちはCTの症例や。40代の男性で自宅で転倒してん。歩行が困難例や。右大腿骨頸部骨折を認めるで。
また大腿骨頸部以外の病変も見る事が出来る点もポイントや。Bogostらの検討で、大腿部頚部骨折疑い症例にMRIを実施したら頚部骨折が無かった症例のうち27%に骨盤骨折があったとのデータもあるんやで。
MR imaging in evaluation of suspected hip fracture(PubMed)
股関節に限らず検査してみたら違う所に病変が見つかったのは検査あるあるやで。
鑑別診断のポイント
大腿頚部ストレス骨折
同じような大腿骨頚部骨折にストレス骨折があんねん。
ストレス骨折には疲労骨折(fatigue fracture)と脆弱性骨折(insufficiency fracture)があんねんけど、頚部骨折と所見は似てても原因は全く違うねん。
下の画像はストレス骨折の症例や。20代の子の写真やけど、ストレス骨折っちゅーのは骨に反復して加わる外圧が原因で起きる病態の事を言うねん。部活動をやってる子やスポーツ選手などに多いで。
大腿骨頸部ストレス骨折の分類はいくつかあるんやけど、基本的には次の通りや。せっかくやから関連付けて覚えておくと一石二鳥やで。
他の股関節疾患はこんなのがあるで。一緒に読んでおいてもらえるとええで。
まとめ
今日は大腿部頚部骨折についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
単純写真では以外と分かりづらい
同じような骨折にストレス骨折(疲労骨折、脆弱性骨折)がある
特に転位を来しておらへん症例はMRIの方が分かりやすいで。脂肪抑制画像やと骨髄浮腫が分かりやすいしな。Garden分類は覚えておいた方がええで。
話してて思うたんやけど、今でこそMRIで当たり前に検査出来てるけど、MRIが無い時代は診断をどうしてたんやろか。骨髄浮腫とか単純写真やと分からへんかったやろしな。そう言えばワシが放射線科医になった頃はギリMRIあったな。0.3Tとかやったけど。超絶撮影時間が長かったな。
ちなみに3.0Tが登場した時の衝撃はハンパ無かったで。脳血管とかムッチャ綺麗やん!って思うたな。
って、まぁ昔話しはええか。大切なのは今や。
ほな、精進しいやー!