胃癌(gastric cancer)

あーしんど。食い過ぎたわ。カップラーメン醤油、味噌、塩の3個食い、締めに白米ブチ込んでラーメンライスはキツイな。最後の餃子も余計やったわ。

塩分摂取がハンパ無いですね。

確かにアカンな。タダでさえ日本人の胃癌の発症率は欧米の5倍とか言われてて、その原因がピロリ菌と塩分摂取量って話しやからな。日本には醤油っていう魔法の液体があるからな。あれは悪魔的なもんやで。上手い反面、塩分量が高いねんな。これが日本人に胃癌が多い理由の1つって言われるとか何とかや。

あとはピロリ菌やな。ピロリ菌もオーストラリアのウォーレン教授とマーシャル教授が発見してんねんけど、その効果検証のためにマーシャル自身がピロリ菌に感染するっていうぶっ飛んだ事やってんねん。まぁその後ノーベル賞受賞してるんやけどな。いくら効果検証の為って言っても自分を実験台にするってのがハンパないで。

ピロリ菌

っていいうか、ワシ、ピロリ菌おらんかったわ。5年前に除菌しててん。せや、なら大丈夫やな。そっか、安心したで。安心してフードファイト出来るな。

せや今日の内容は胃癌にしよか。そうしよ!決まりや。早速始めるで。

胃癌(gastric cancer)とは

胃癌の概要

さて、今日のお題は胃癌や。

胃癌は消化器癌の1つで胃に発生する癌や。腺癌がほとんどで組織型やと分化型と未分化型に分けられるで。分化型は乳頭型腺癌、高分化型管状腺癌、中分化型管状腺癌があって、未分化型には低分化腺癌、印環細胞癌があるで。肉眼的分類にはBorrmann分類が使われてるな。

主な症状は初期やとほどんど無くて、進行して痛みや不快感、吐き気などが出てくんねん。原因はピロリ菌感染が大きいで。ピロリ菌感染してると胃癌のリスクが未感染者と比較して5倍高いらしいからな。また、胃癌患者の99%はピロリ菌感染者というデータも出てるんや。せやからピロリ菌感染の有無は重要やで。

他には喫煙や塩分過多、野菜不足、ストレスなどがあると言われてるな。主な概要を以下に記載していくで。

概要
・腺癌で組織型分類では分化型(乳頭型腺癌、高分化型管状腺癌、中分化型管状腺癌)と未分化型(低分化腺癌、印環細胞癌)に分けられる
・肉眼的分類はBorrmann分類が使用され4型の中にスキルス胃癌が含まれる
・スキルス胃癌は進行が早く早期に転移をする
・検診制度の普及で早期に発見される事が増えてきたため死亡率は低下傾向
・初期症状は無い事が多く進行すると胃部不快感や食欲不振などが出てくる
・原因はピロリ菌感染や塩分過多、ストレス、喫煙など
・幽門部に発生する頻度が高い

胃の解剖と役割

次に胃の解剖と役割や。解剖については基本やな。噴門、胃底、胃体、幽門部の4つに分けられるで。

胃は腹腔内臓器で腹膜で覆われてて、栄養血管は左右胃動脈、左右胃大網動脈、短胃動脈などや。これらは腹腔動脈から派生していくで。

胃壁は粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜から出来てんねん。この辺りは学生でも習うところやな。忘れとったら今一度復習しておいてな。

胃の解剖

胃の役割は、蠕動運動による消化活動や。蠕動運動をする事で食物を胃酸や消化酵素で消化して小腸へ送ってんねん。それに加えて食事と一緒に入ってきた細菌を胃酸で殺菌したりしてんねんで。

ちなみに胃酸は常に出ている訳やなくて、食べ物が入って来た時や匂いをかいだ時に分泌されんねん。バリウム検査をしててお昼近くになるとバリウムの乗りが悪くなってくるのは、昼近くになって胃酸が分泌されるからやねんで。

胃癌の原因と治癒率

胃癌の主なリスク要因は、塩分過多、喫煙、多量の飲酒、ヘリコバクター・ピロリ菌などや。これらはかなり関係性が高いとされてる項目で、特にピロリ菌は胃に感染して炎症を起こす細菌やねん。胃癌だけやなくて胃潰瘍の原因にもなってたりするわ。胃酸の中でも生きていける細菌かどうかの検証も兼ねてマーシャル教授が自ら感染したのは上で話した通りや。

5年生存率やけど、国立がんセンター中央病院のデータでこんな感じやで。早期で発見すればかなりの確率で治癒する癌やねんな。

とは言っても2019年の国立がん研究センターのデータによると、年間の罹患者数は12万人程度、死亡者数は2021年で4万人程度との事や。がん死亡数の順位やと肺癌、大腸癌に次いで3位やねん。まだまだ多いんやで。

5年生存率
Ⅰ期:91.2% Ⅱ期:80.9% Ⅲ期:54.7% Ⅳ期:9.4% 全体:71.4%
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システムより

胃癌のTNM分類

まずは肉眼的分類から見ていこか。

これは0型から4型にまで分類されてんねん。0型が粘膜層までの早期癌で、1型~4型が進行癌になるで。4型進行胃癌をスキルス胃癌と言ったりもするなスキルス胃癌は無症状の時から腹膜播種を伴ってる事も多いねん。かなり予後が悪い癌や。概要を載せておくわ。

特徴
スキルス胃癌・若い女性に多く30代で発症する事もある
・隆起型のような表面に出ずに胃壁内を進展していくため発見時には進行癌の状態の事が多い
・増殖スピードが速く無症状時でも腹膜播種を来している事もしばしばで再発率も高い
・胃癌の中で予後が最も悪い
・頻度としては胃癌の中で~5%程度の割合
・ピロリ菌との関連は少ないと考えられてる

肉眼的分類で0型は更に5種類の亜型に分類されんねん。分類については言葉よりも図の方が分かりやすいから下の図を覚えておくのをオススメするで。

早期胃癌の肉眼的分類

次に胃癌のTNM分類とステージ診断について載せておくで。UICC-8版を参考に作成してあるわ。

T分類T1T2T3T4
T1a:癌が粘膜内(M)にとどまっている
T1b:癌が粘膜下層(SM)にとどまっている
癌が固有筋層(MP)にとどまっている癌が固有筋層を超えているが、漿膜下組織(SS)まででとどまっているT4a:癌が漿膜表面にまで達している、もしくは遊離腹腔に露出している(SE)
T4b:癌が多臓器に浸潤している(SI)
N分類N0N1N2N3
リンパ節転移なし領域リンパ節内にリンパ節転移が1~2個領域リンパ節内にリンパ節転移が3~6個領域リンパ節内にリンパ節転移が7個以上
M分類M0M1
遠隔転移なし遠隔転移がある
進達度はT分類で記載し、かつ胃壁各層や多臓器浸潤は粘膜(M)、粘膜下層(SM)、固有金層(MP)、漿膜下層(SS)、漿膜(SE)、隣接臓器浸潤(SI)として表記する 

                        UICC8版を参考に作成
N0N1N2N3M
T1ⅠAⅠBⅡAⅡB
T2ⅠBⅡAⅡBⅢA
T3bⅡAⅡBⅢAⅢB
T4aⅡBⅢAⅢBⅢC
T4bⅢBⅢBⅢCⅢC
UICC8版を参考に作成

胃癌についてはこんな感じや。次は画像所見について話していくで。

画像所見

胃癌の画像所見

画像所見についてやけど、早期胃癌に対してはCTやMRIの有用性は低いで。メインは内視鏡や。バリウム検査も重要性は以前ほどやないけど、まだまだ実施されてる頻度は多い検査やから画像所見について纏めておくで。

他には進行癌についてもやな。胃癌取り扱い規約やと、T2以上が進行癌に該当する事になってるで。このへんになるとCTでも所見が出てくるんや。胃壁の肥厚像が主な画像所見やで。リンパ節転移の診断もCTやな。短経が8mm以上、造影効果あり、内部脂肪消失があると転移の疑いが強くなるで。

進行度画像所見
早期胃癌・充満像、二重造影像、圧迫像などで検査する
 Type1(隆起型):丈の高い隆起で2cm以上の隆起で癌を疑い、3cm以上だと進行癌の可能性が高い
 Type2a(表面隆起型):辺縁不整で表面は顆粒状で結節状のものは大小結節の集合体
 Type2c(表面陥凹型):輪郭不整で引き連れ像(陰影斑)として描出される
進行胃癌・T2以上になると胃壁肥厚を認めるようになり、脂肪織の消失など漿膜側の変化も確認できる
・リンパ節転移の診断は短経8mm以上、造影効果有り、内部脂肪消失があると可能性が高くなる
・スキルス胃癌ではバリウム検査で胃壁の進展不良、硬化像があり、鉄管状胃、砂時計胃などと呼ばれる特徴的な所見を認める
・CTでは胃壁のびまん性肥厚を認める

実際の症例

60代女性、腹痛と黒色便精査の例や。胃角部を中心に胃壁の肥厚と穹隆部中心の拡張、さら腹部リンパ節♯3の腫大も認めるで。その後、胃癌リンパ節転移の診断となった例や。

腹部CT-胃癌
腹部CT-胃癌

この症例は4型胃癌、スキルス胃癌の症例や。胃部不快感の精査で精査となってんけど、胃体部の前壁にびまん性肥厚を認める事が出来ると思う。進行が早いスキルス胃癌やけど、この例やとCT上ではリンパ節転移や腹膜播種は認めなかったで。ちなみに石灰化はdystrophic calcificationやで。日本語やと異栄養性石灰化や。損傷や病変がある組織に発生する石灰化や。たまに報告書に載ってるで。

腹部CT-スキルス胃癌
腹部CT-スキルス胃癌

この症例は70代男性でCA19-9が上昇して精査となった例や。CT検査、MRI検査、内視鏡、FDG-PETの順に検査してんねん。この人はMRI検査の時に胃壁の肥厚を指摘されて内視鏡で3型の進行胃癌を認めてんねん。ちなみに腹水も伴っててFDG-PETでは腹膜播種疑いとなってるで。

腹部CT/MRI-胃癌
FDG-PET-進行胃癌

鑑別診断のポイント

ポリープ分類(山田分類)

鑑別診断についてやけど、次のようなものが挙げられるで。

鑑別疾患
隆起性病変過形成性ポリープ、腺腫、悪性リンパ腫、GISTなど
平坦病変MALTリンパ腫、萎縮性胃炎、胃潰瘍瘢痕、Crohn病など
陥凹病変胃潰瘍、MALTリンパ腫、GISTなど
スキルス胃癌急性胃粘膜性病変、アニサキス、肥厚性胃炎、悪性リンパ腫、Zollinger-Ellison syndrome、Menetrier diseaseなど

スキルス胃癌との鑑別は胃壁の肥厚、硬化を呈する疾患との鑑別が必要になるで。

ただ上で挙げた症例はスキルス胃癌と比較して胃壁の伸展性は比較的保たれるという特徴があんねん。胃造影(バリウム検査)の時に頭の中に入れておくとええで。ちなみにポリープの分類は山田分類ってのがあんねん。下にイメージ図を作成しておいたで。

ポリープ山田分類

他の消化器系の悪性腫瘍

まとめ

今日は胃癌についてレクチャーしたで。ポイントは2つ。

早期胃癌は内視鏡で診断する(CTなどの画像診断はT2以降で有用になる)

4型胃癌(スキルス胃癌)は若い女性でも罹患し、進行が早く早期に腹膜播種を来す(胃壁のびまん性肥厚や鉄管状胃、砂時計胃などの画像所見がある)

2021年の統計でも男性3位、女性4位の罹患数というかなり頻度が高い癌や。検診をやってる施設ならまだ胃造影(バリウム)検査を担当する機会も多いやろ。その時に胃癌の種類や特徴なんかを知っておくとええで。検診バイトに行く時にある程度画像が読めると重宝されるで。

胃癌って減ってるんですよね?

実は罹患数は増えてんねん。2000年には年間10万人程度やったんやけど、2019年には12万人に増えてるんや。これは高齢化が背景にあると言われとる。ただ死亡者数は徐々に減ってんねん。検診の効果やろな。ただ検査する側のスキルも必要なのは言うまでもないで。バリウム検査している時に少なくとも異常所見には気がつけるようになるんやで。

さて、今日はこれくらいにしよか。

ほな、精進しいやー!