【臨床症状】70代 言葉が出てこない MMSE 21/30点 T-Tau蛋白、14-3-3蛋白は陰性、RT-QUIC法は陽性
【問題】画像所見と診断名は?
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- 左後頭頭頂葉皮質優位の大脳半球皮質に拡散強調画像で高信号とADCの低下を認める
- T2WIやFLAIRでも同部位に高信号を認める
- 基底核の高信号は認めない
- MRAでも狭窄などの所見は認めない
- 上記と臨床データより、CJD(孤発性)が疑われる
- なお、後日実施されたFDG-PET画像でも、拡散強調画像の高信号部位と一致して糖代謝の低下を認めた
【クロイツフェルトヤコブ病(CJD)】
・クロイツフェルトヤコブ(Creutzfeldt-Jakob)病(CJD)は、プリオン病の一種であり、細胞性プリオンタンパク質と呼ばれる正常なタンパク質が変形し、異常プリオンになることで発症する
・異常プリオンが中枢神経系に蓄積し、不可逆的な致死性神経障害を生じる事が原因
・CJDは発生機序から次の3つに分類される
- 原因不明の孤発性(spordic CJD)
- プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性
- プリオン蛋白伝播による獲得性
・この中では孤発性が最も多く8割以上、次いで遺伝性が1割となっている
・つまりほどんどが孤発性(原因不明)
・60代に多い
・孤発性CJDは、認知機能低下、ミオクローヌス、脳波上で周期性同期性放電が3徴となっている
・めまいやふらつきなどで発症(Ⅰ期)し、急速に認知機能低下、錐体路や錐体外路症候やミオクローヌスの出現(Ⅱ期)、無動性無言(Ⅲ期)の経過を辿る
・MRIでは拡散強調で大脳皮質や基底核に高信号を認めるが、海馬は保たれる傾向がある
・遺伝性CJDは孤発性CJDと同じような発症様式だが、高齢発症、高次機能障害の進行も緩徐な事が多く、時にアルツハイマー病との鑑別が問題になる
・獲得性CJDでは、特徴的な視床枕や視床背内側核の対称性異常信号が認められ、pulvinar signやhockey stick signと呼ばれている
・根本的な治療法は今のところ無く、孤発性の場合は発症から数年以内に死亡する事が多い
参考書籍:よくわかる脳MRI 改定第4版