みちるさん、ちょっといいですか?
なに?ラウエンの撮り方が知りたいのなら無理よ。私も分からないから。
違います。僕、ちゃんと撮れるし。っていうか、みちるさん撮れないんですか?
おい、お前ら、なにアホみたいな会話しとんねん。今日のレクチャー始めるで。
もくじ
腸恥骨滑液包炎(iliopsoas bursitis)とは
腸恥骨滑液包炎の概要
今日は腸恥滑液包炎について話していくで。
股関節周囲には多くの滑液包があるのは知ってるよな?
えっ?知らん?
なら、これを機に覚えときや。
滑液包は全身の色んな所に存在してんねん。特に膝や肘なんかの関節周囲に多いな。
皮膚直下にあるような表在性の滑液包や、筋肉下のような深在性の滑液包もあんねん。
ほんで滑液包炎っちゅーのは、その名の通り滑液包に炎症が生じてる状態や。外傷や感染症が原因になることもあるんやけど、不明な事も多いで。
腸恥滑液包炎は、股関節前面の腸恥隆起と腸腰筋の間に腸恥滑液包というのがあって、これに炎症が生じた状態の事や。
腸恥滑液包は人体の中で最大の滑液包と言われてて、ほとんどの人が持ってんねんけど、10%超の人が股関節と交通があると言われてんねん。繰り返す運動や外傷なんかでの股関節疾患が原因で炎症が起きるんや。
滑液包炎は単独で発症する事もあるんやけど、変形性股関節炎や関節リウマチなどの股関節疾患に合併する事も知られてるで。
- 原因
- 外傷や痛風、関節の酷使、変形性関節症、感染症など
- 内容
- 股関節には腸恥滑液包や転子滑液包、坐骨滑液包、小殿筋滑液包などがある
- 臨床症状は痛みや可動域制限、腫脹など
- 単独で発症する事もあるが、股関節疾患に合併する事も多い
股関節周囲の滑液包
ここで少し、滑液包について話しとこか。
滑液包の役割は摩擦の軽減がメインや。滑液包の内部は少量の液体(滑膜)を含んでんねん。この液体が入った滑膜がある事で関節なんかがスムーズに動く事が出来んねん。
他にはこんな役割があるで。頭の片隅に入れておいてや。
- 摩擦の低減
- 滑液包は関節や腱鞘の内部を覆い、滑液を分泌して摩擦を低減させる
- 関節や腱が円滑に動き、運動をスムーズに行う手助けをする
- 衝撃吸収
- 滑液包は外部からの衝撃、特に関節部位では関節面への衝撃を吸収し、骨や軟骨の損傷を軽減する役割を果たす
- 栄養供給
- 滑液包は血管を含み、関節や腱などの組織に栄養や酸素を供給する
- 保護
- 滑液包は外部からの感染や損傷から関節や腱を保護する役割も果たす
- 滑液包は一種のバリアとなり、病原体や外部の刺激から内部の組織を守る
滑液包の役割は、身体の特定の部位や機能によって異なんねん。せやけど、一般的には滑液包は、関節や腱鞘で摩擦の低減、衝撃吸収、栄養供給、保護の役割を果たす重要な組織ってイメージでOKや。
下に股関節周囲の滑液包のイメージ図を載せておくで。
代表的なものとして腸恥滑液包や転子滑液包、坐骨滑液包、小殿筋滑液包があるで。

腸恥骨滑液包炎の原因と臨床症状
原因
原因は外傷や痛風、関節の酷使、変形性関節症、感染症なんかや。中には原因不明なケースもあるで。
若い人やスポーツをしている人は酷使のための機械的刺激が原因である事も多いな。他には変形性関節症なんかも多いで。
症状
臨床症状は痛みと可動域制限、腫脹なんかやで。圧痛を伴う事もあるで。
治療法
治療法としては保存療法と外科的療法があって、まずは保存療法を実施する事が多いな。安静待機や投薬、穿刺などや。保存療法でも改善が見られない場合は外科的療法の対象となんねん。
原因によって治療方針が変わってくる事もあるから、原因の鑑別は重要やで。穿刺して起因菌の特定をする場合もあるんや。
画像所見
腸恥骨滑液包炎の画像所見
次に画像所見や。
所見としては、滑液包の液体貯留が嚢胞性病変として描出されるで。CTもMRI嚢胞に準じた信号強度になるな。
CTやと低吸収域、MRIやとT2WIで高信号、T1WIで低信号や。ただ中には肥厚した滑膜と充実性病変が紛らわしい事があるから注意が必要やで。
実際の症例
ほな、実際の腸恥滑液包炎やで。右の腸恥滑液包に液体貯留を認めるで。


CTのパターンも載せておくで。ちなみにさっきの症例とは別人や。

鑑別診断のポイント
骨盤内嚢胞
この疾患は、腸恥滑液包に関節液が多量に貯留して膨隆すんねん。これが場合によっては骨盤内に入り込んで腫瘤と間違えやすい事もあるから注意が必要や。
また逆のパターンで骨盤内に発生した嚢胞病変が股関節腹側まで進展して滑液包に似てくる事もあんねん。せやから滑液包炎が疑われたらどこの部位から発生してるかの確認が必要やで。
あとは腸恥滑液包炎は鼠径部リンパ節腫大とも間違えやすい事もあるから注意やで。
まとめ
今日は腸恥滑液包炎についてレクチャーしたで。ポイントは2つだけや。
股関節周囲の滑液包の解剖を知っておく
鼠径部の嚢胞性病変として描出されるが、鼠径部リンパ節腫大などと間違えやすい事もある
こんな感じやな。
画像所見については嚢胞病変と同じような所見やから、MRIが撮影出来れば診断はそう難しくはあらへんと思う。
ただ単純写真だけやと厳しいで。
色々と知らない病名が出てきて、自分の無知っぷりに凹みます。
あと、みちるさんはラウエンを撮れるようにしておいて下さい。
別に全部を覚える必要はあらへん。まずは引っかけられる事が重要やで。
引っかけられさえすれば、自分で調べたりして病名にたどり着く事も出来るやろしな。
ただ、ここが1番難しいポイントでもあんねん。まずはどっかで見た事あるって状態までにする事が第1やな。
それには日頃の検査時に画像を見る癖をつけるんや。
それだけでも大分違うで。
ほな、精進しいやー!