【臨床症状】乳癌術後フォロー中 咳嗽出現
【問題】画像所見と診断名は?
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- 左乳癌術後(IDC、triple negative)
- 右肺優位にすりガラス陰影を認め、小葉間隔壁の肥厚を認める
- 右胸水貯留あり、気管支血管束の肥厚もやや認めるか
- また右中葉、下葉の肺門部に腫瘤影も疑われる
- 縦隔リンパ節腫大なし
- 上記より、乳癌による癌性リンパ管症と診断され、化学療法が実施された
【癌性リンパ管症】
・癌性リンパ管症は肺内のリンパ管系に癌細胞が浸潤し、リンパ管塞栓を来している状態
・癌性リンパ管症を来す原発は乳癌(33%)、胃癌(29%)、肺癌(17%)、膵癌(4%)、前立腺癌(3%)の順に多い
・肺転移症例の6~8%に認める
・発生機序は、原発巣から血行転移し肺抹消血管から肺内リンパ管に進展する説と、まず原発から縦隔や肺門リンパ節転移をきたし、そこから逆行性に肺内リンパ節に転移するリンパ行性転移説がある
・臨床症状は、息切れや乾性咳嗽が多く、進行性の呼吸器不全を来し予後不良
・画像所見では、CTにおいて小葉間隔壁の肥厚に伴う特徴的な多角形の形状(polygonal arch)を認める事がある
・また気管支血管周囲間質の腫大や、リンパ管閉塞による浮腫を反映したすりガラス陰影や粒状影を認める事がある
・リンパ路の肥厚パターンは以下の3つに分類できる
参考書籍:困ったときの胸部の画像診断
- 中枢側のリンパ路肥厚が優位で、末梢のリンパ路肥厚は目立たないパターン
- 抹消のリンパ路肥厚が優位なパターン
- 中枢側、末梢側両方とも肥厚が目立つパターン
参考文献:小口展生、片山公実子、岡田あすか 他、S状結腸癌の初発症状として発症した癌性リンパ管症の1例、日呼吸誌