キーンベック病(Kienbock’s disease)

昔はカルテにドイツ語で記入してたんやで?

風の噂では聞いた事があります。

ワシが小さい頃に通ってた町医者はカルテに暗号みたいな文字書いてたな。
今思えば、アレはドイツ語やったのかもしれんな。

キーンベック病(Kienbock’s disease)とは

キーンベック病の概要

さて、ちょっとおセンチになってもうたけど、今日はキーンベック病についてやってくで。

これはメジャーな病気やから知ってる人も多いんちゃうかな?

キーンベック病ってのは月状骨が骨壊死を起こした状態の事を言うねん。

20~40代が好発年齢や。これといった明確な原因は不明なんやけど、月状骨への反復負荷や外傷なんで血流が低下して起きるとも言われてるで。

尺骨が橈骨と比較して短い場合に発生する事が多いのが知られてて、これをnegative ulnar varianceとも呼ぶで。

  • 何らかの原因で月状骨が骨壊死してしまっている状態
  • 原因は明確ではないが、月状骨への反復負荷や外傷などが挙げられている
  • 男性に多く10~50代と幅広い年代で発症するが、ピークは20代
  • 尺骨が橈骨と比較して短いnagetive ulnar varianceに多い事が知られている
  • 病気分類にはLichtman分類を用いられており、StageⅢ以上が手術の対象

Lichtman分類

また病気分類にはLichtman分類というのが使われてるで。以下の通りや。

Lichtman分類
Stage月状骨の圧痛のみ 単純写真では以上を認めないがMRIで所見がある
Stage単純写真で骨硬化像を認めるが圧潰像はなし
StageⅢA分節状変化と圧潰像がある
StageⅢB分節状変化と圧潰像があり、かつ手根骨の配列異常を認める
Stage手根骨関節の関節症変化がある

手関節の解剖

次に手関節の解剖や。この辺は基本やからな。サラッとでええやろ。

っていうか月状骨を知らん人はまさか、おらんよな?

手関節解剖

キーンベック病の原因と臨床症状

キーンベック病の原因

キーンベック病の原因は特に明確にはなってへん。

スポーツや仕事なんかで慢性的に月状骨に負荷がかる事で、骨壊死を起こしてるとも言われとるな。

利き手に多い傾向があるのも慢性的な負荷によるものが原因なのかもしれん。

臨床症状

主な症状は手関節の疼痛や。進行してくると握力低下や運動制限が出てくる事もあるで。

治療法

治療法は保存療法と外科的療法や。

保存療法は安静にしたりギプス固定で負荷を減らす事で回復を期待すんねんけど、保存療法でも改善せーへんかった時に橈骨短縮骨切り術や骨移植、壊死した月状骨を摘出して代わりに腱球挿入なんかをしたりするらしいで。

早期発見と早期治療が重要との事や。

画像所見

キーンベック病の画像所見

次に画像所見についてやな。

早期の場合は単純写真やと難しいで。進行するに従って骨硬化像を認めるようになるんや。

一方でMRIやと早期から指摘可能や。T1強調で低信号、T2強調で様々な信号パターンや。

T2強調で等~高信号の場合は比較的予後がええって報告もあんねん。

  • 単純写真では月状骨の骨硬化の有無を確認する
    • 他に月状骨の分節化、minus variance(橈骨と尺骨の高さの違いが3mm以上)、舟状骨掌屈回転(cortical ring sign)など
  • MRIではT1強調で低信号、T2強調で様々な信号パターン
    • T2強調で等~高信号の場合は予後が良いとも言われている

実際の症例

次に実際の症例で、60代女性で誘因なく月状骨付近の痛みが発生した例や。

MRIでキーンベック病と診断されたで。脂肪抑制画像で月状骨の高信号を認めるな。

手関節MRI-キーンベック病
左が脂肪抑制、右がプロトン強調

次は20代男性の例なんやけど、Lichtman分類でいうところのStageⅢAにあたる症例や。圧潰像が確認出来ると思うで。

手関節MRI-キーンベック病(Stage3a)

次は40代女性で元々キーンベック病と診断されてん。転院に伴いフォロー検査を実施した例や。

月状骨に脂肪抑制で高信号と嚢胞成分を認める事が出来ると思うで。圧潰像は認めへんからStageⅡ相当ってところになるかな。

椎体の解剖

鑑別診断のポイント

TFCC損傷 尺側手根伸筋腱鞘炎

鑑別診断はTFCC損傷や尺側手根伸筋腱鞘炎なんがが挙がると思うな。

これらはどれも手関節痛があんねん。まぁ、キーンベック病は特徴的な画像所見やから、MRI検査を実施すればそれほど迷わずに診断出来るとは思うけどな。

舟状骨骨折

ちなみに、他に似たような所見として舟状骨骨折があるわ。

これはその名の通り、舟状骨が骨折してる状態の事を言うねんけど、スポーツなんかで手をついた時に起きる事が多くて、サッカーで多いらしいな。

症状は急性期には疼痛と腫脹があるんやけど、急性期を過ぎると一時的に痛みが軽快すんねん。これを捻挫と思って放置すると後で偽関節になったりするで。

偽関節とは骨が癒合せずに分離したままの状態で、この状態になると本来関節があらへんトコに関節があるようになってしまって、骨の変形や機能障害を起こす事もあるとの事や。

注意せなアカンのは、舟状骨は近位側の血流が乏しいんや。これは遠位側から血流があるためなんやけど、早期に適切な治療をせんと近位側の血流が不足して骨壊死や偽関節になったりするで。

手関節MR-舟状骨骨折

この症例は40代女性でバレーボールで負傷して精査となった例や。舟状骨に骨折を認める事が出来るな。

まとめ

今日はキーンベック病についてレクチャーしたで。ポイントは次の点や。

月状骨の異常(骨硬化や骨壊死)の有無でMRIが有効

キーンベック病にはLichtman分類がある

上で言ったように、MRIを撮影すれば分かりやすいんやけど、MRIを持ってへんかったり検査連携施設の検査待ちが長かったりで、中々撮影できひん施設もあると思うから難しい所やな。

ただキーンベック病に関してはMRIまで撮影した方がええ事は確かや。単純写真やと初期は指摘が困難な時が多いからな。

ただ一方で、検査できても読影医も増えなアカンねん。ただこれは時間がかかるから、そういった意味で技師はんが読めるようになってくれると強力なんや。

ちなみにやけど・・・

昔、それこそワシが放射線科医になりたての頃はまだ紙カルテやってん。

ほんで読影するときに依頼内容を確認するんやけど、これがまた解読するのが難しい先生がいたんよ。でも読影せなアカンから、なんとか解読して所見を書くんやけどメチャメチャ時間がかかってな。

その点、電子カルテは誰が記入しても読める文字やからな。電子カルテ様々や。

日本語の時ですらそんな感じやったから、ドイツ語の時は、かなり苦労したんちゃうかなとも思うで。しかもフィルムやろしな。

今からすると非効率極まりないけどな。

まぁ、昔話はこのへんにしとくかな。

ほな、精進しいやー!

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