肺解剖(lung anatomy)

アカン。全然分からへん・・・

そんなに難しい症例なんですか?

いや、ワシなボランティアで医学生に国試対策を教えてんねん。ほんで何十年ぶりに国試の過去問解いてみたんやけど、全然分からへんねん。国試ってこんな難しかったっけか?

僕も、もう一回国試受けろって言われたら合格する自信がありませんね・・・

やっぱりか。国試経験者あるあるやな。所見の所とか簡単なんやけどなー。ホンマに国試通ったのか不安になるレベルやで。

肺解剖

肺の解剖の重要性

さて気を取り直して、今日は胸部の画像を読影する際に重要な肺の解剖について話していくで。この辺りを知っているのと知ってへん場合は雲泥の差があるで。

特に肺区域を正確に覚えてへんと病変がどこにあるのかの共通認識が取れへんし、ドクターとの話も噛み合わへんで。せやから記憶があやふやな技師はんは、これを機にしっかりと覚えてしまってくれや。ちなみにこれらは認定技師の試験を受ける時にも必要な知識になってくるからな。

肺の役割

まずは基本の部分からや。

肺は左右に1対ある臓器で、主に血中の酸素と二酸化炭素の交換をしているで。口腔から空気を取り入れて、気管支を通って最終的に肺胞まで送り込むんや。ここでガス交換(酸素と二酸化炭素)が行われてるで。

肺の解剖
肺の解剖(肺胞まで)
※実際には肺静脈は小葉間隔壁に沿って走っている

全身から酸素の少ない血液が静脈から心臓に戻ってくるやろ?その血液を右心室から肺動脈を経由して肺胞に送んねん。そこで空気中から取り入れた酸素と二酸化炭素を交換して、酸素が豊富な血液を肺静脈を経由して左心房に戻すねん。そこから動脈を伝って全身に流れてんねや。

血液の流れ

肺葉と肺区域

右肺は大葉間裂(major fissure)と小葉間裂(minor fissure)で上葉、中葉、下葉の3つに、左肺は大葉間裂(major fissure)によって上葉と下葉の2つに分けられてるで。更に右肺はS1からS10までの10区域、左肺はS1+2 からS7を除く8区域に分類されてんねん。早期の肺癌なんかは区域切除をする事も多いから、肺区域を覚えておく事は重要やで。

位置関係は上のイメージ図を参考にしてな。

胸膜と気管支

次は気管支と胸膜についてや。特に気管支は肺区域との関係性が深いから合わせて覚えておくのをお勧めするで。

まずは胸膜からや。胸膜は肺を覆っている膜の事で、肺に近い方から臓側胸膜と壁側胸膜があんねん。この2つの膜の間を胸膜腔って言うで。

胸膜腔には胸水が入ってて、呼吸によって肺が膨らむ時にダメージを受けないように潤滑油のような役目があんねん。これがあるおかげで普段、呼吸して肺を大きくしても摩擦なんかでダメージを受けずに済んでるって訳や。後は感染症なんかからも肺を保護している役目もあると言われとる。ちなみに癌細胞が臓側胸膜をやぶって転移すると胸膜播種になるで。

次に気管支についてや。口側から順に、気管、主気管支、葉気管支、区域気管支、細気管支、終末気管支、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞となっとるで。最初の主気管支から計23回分枝して肺胞になんねん。ほんで最終的に肺胞でガス交換してんねん。

もうちょっと詳しい事を言うと、細気管支以降は気管軟骨があらへんのと、呼吸細気管支までは平滑筋なんや。

後は左右主気管支はTh4-7の高さあたりで分岐してるで。またこの分岐の確度が左右で違ってて、右が25°程度、左が45°程度となってて、右の方が直線に近いぶん誤嚥の可能性が高くなってんねん。

ちなみに気管支内は無菌状態で、何かしら異物が入ってきても粘液で包まれて、線毛運動によって外に排出されるで。この線毛運動は喫煙なんかで低下すると言われてるな。

気管支のサイズ経は細気管支が1mm、終末気管支やと0.7mm程度らしいな。

気管支の解剖

CT画像上の気管支と肺区域の位置関係

実際の画像上でどう写るか

さて次は画像上でどうやって判別していくかを話していくで。

基本的に肺野条件の横断像で見ていく形が多いな。おおよそやけど、右肺のB3とB6を同定する事が近道やで。というのも、B3を見つければB3aやB3b、B2、B1が分かりやすいねん。B3は右上葉支の起始部に近い所から腹側に分岐しているヤツや。B2は右上葉支の起始部から少し頭側で背側に分岐しているヤツやし。B1はB2とB3の分岐部のやや頭側の縦隔側を上行してんねん。

B6は中下葉分岐レベルで背外側に分岐するのがそうや。下葉気管支からB6が分岐して、その後にB7~B10の区域気管支に分かれていくで。左側を含めた他の気管支は以下の画像で確認してみてくれや。

実際の画像

胸部CT 気管支B1レベル
胸部CT 気管支B2レベル
胸部CT 気管支B3レベル
胸部CT 左右主気管支レベル
胸部CT 気管支B5レベル
胸部CT 気管支B6レベル
胸部CT 気管支B4レベル
胸部CT 気管支B7レベル
胸部CT 気管支B8レベル
胸部CT 気管支B10レベル
胸部CT 気管支B9レベル
胸部CT 気管支B10レベル

ブロンコ体操

ブロンコ体操って知ってるか?これは自分の体を気管支に見立てて、両手の動きと手の方向で肺区域をイメージして覚える体操や。これを何回もやってみると、あら不思議。以外と覚えてまうねん。

ワシも研修医の頃に何回も復讐して覚えた記憶があるわ。滋賀医科大学医学部附属病院、呼吸器内科の長尾先生がやってる動画を貼っておくから見ておくんやで。

縦隔リンパ節

縦隔リンパ節の位置関係

最後に縦隔のリンパ節についてもやっておこか。肺癌の診断をする時に、リンパ節転移の有無でステージが違ってくるから、リンパ節も覚えておいて損はあらへんで。

今回は肺癌TNM分類第7版のリンパ節マップを載せておくで。リンパ節は細かく分かれてて中々覚えるのが大変かもしれんけど、どこかのタイミングでは覚える必要が出てくるんやで。

縦隔リンパ節マップ

肺解剖が関係する疾患

これらの解剖が必要になる疾患一覧や。基本的に肺疾患では本レクチャーの知識は必要になるで。

まとめ

ってな訳で、今日は肺の解剖についてレクチャーしたで。これらは胸部の読影をしていると必要になる知識ばかりや。CT画像上での気管支と肺区域の関係なんかは分かってへんと病変がどこにあるかが書けへんからな。

国試の時にやった気がしますが、記憶が曖昧な部分も多いです。

国試は、あくまでその業務に従事する最低限の知識を持ってるかどうかの確認試験やからな。

国試で問われる知識と実際に現場で必要な知識は違ってる事も多いねん。その辺は現場でちゃんと教えたってや。

せやないと、その若い技師はんが外に出た時に恥をかくかもしれんからな。

さて、今日はこのへんにしとこかな。

ほな、精進しいやー!