仮に自分が癌になって色々治療はしたけどBSC(best supportive care)を選択肢に入れる段階ですって言われたらどうする?
全然イメージ涌かないですね。とりあえず、やりたい事やると思います。
それが自分の親や子供、家族やったらどうするかな?どんな事をしてでも助けたいってなんねんちゃうかなと思うんよ。ただそれが本人にとってベストかどうかは別なんやけどな。
いくら医療技術が進歩したと言っても、まだ全ての癌が治療出来る時代やないんや。その中には治療したけど進行してしまった例も多くあんねん。今日は進行してしまった状態の1つ、癌性リンパ管症についてレクチャーしてくで。
もくじ
癌性リンパ管症(lymphangitic carcinoma)とは
癌性リンパ管症の概要
癌性リンパ管症って聞いた事あるか?これは肺内のリンパ管に癌細胞が浸潤、増殖してリンパ管塞栓を来している状態の事を言うんや。
原発から肺転移を来した時に、リンパ管に直接浸潤する「血行進展」、縦隔や肺門リンパ節がら逆行的にリンパ管に進展する「逆行性リンパ行性進展」、胸膜などの転移巣からリンパ管に浸潤する「順行性リンパ行性進展」が考えられてるで。
原発は乳癌や肺癌が多くて、肺転移症例の~8%くらいに見られるわ。この段階になると進行が早くて、肺水腫なんかで呼吸不全を来す事も多くて非常に予後は悪いねん。
概要 | |
---|---|
癌性リンパ管症 | 肺内のリンパ管に腫瘍が浸潤、増殖した状態で血行性肺転移の1つ 「血行進展」、「逆行性リンパ行性進展」、「順行性リンパ行性進展」がある リンパ管閉塞による肺水腫などにより呼吸不全を来し、進行が早く予後は悪い 肺癌、乳癌、胃癌からの転移が多い |
肺内リンパ管の解剖と役割
次に解剖についてや。気管から肺胞までの簡単な解剖図を下に載せておくで。
キーワードは二次小葉なんやけど、この二次小葉は数個の終末細気管支で構成された末梢肺組織の事を言うんや。ちなみに小葉間隔壁で囲まれた領域の事で別名Millerの二次小葉と呼んだりもしてるで。ほんで二次小葉のリンパ管は表在性リンパ管と深在性リンパ管に分けられんねん。表在性は肺胸膜下リンパ管、深在性は小葉間結合組織内のリンパ管、肺静脈に伴うリンパ管、気管支に伴うリンパ管、肺動脈に伴うリンパ管やで。リンパ管の役割は水分(組織液)や老廃物を運んでんねん。
原発からこのリンパ管に腫瘍が転移浸潤して閉塞させる事で肺水腫のような症状が出てくんねん。血行性肺転移から末梢間質、リンパ管へ浸潤して増殖するって流れや。
癌性リンパ管症の原発と治癒率
癌性リンパ管症は肺転移の一様式やから、様々な癌で起きる可能性があるんや。その中でも頻度が高いのがいくつかあって、乳癌、胃癌、肺癌、膵癌の順になっとるで。やっぱり現場で読影してても乳癌の人が多い印象があるな。
原発巣 | |
癌性リンパ管症 | 乳癌(33%)>胃癌(29%)>肺癌(17%)>膵癌(4%)>前立腺癌(3%) |
治癒率やけど、癌性リンパ管症はかなりの予後不良なんや。原因として、癌性リンパ管症と診断される頃には、呼吸苦やったりで全身状態が悪く、化学療法などを実施出来ひん事が多いねん。せやから平均予後は3~4ヶ月とも言われてて、呼吸器症状が出てからの予後は2ヶ月程度という報告もあんねん。発症後、数ヶ月以内には死亡してまう事が多いな。かなり厳しいケースばかりやな。
画像所見
癌性リンパ管症の画像所見
次に癌性リンパ管症の画像所見についてや。単純写真やと気管支血管影の不鮮明化や肺門、縦隔リンパ節腫大、胸水を認める事もあるで。ただ単純写真上では異常を認めない例もあるわ。CTやと肥厚した小葉間隔壁を多角形状に認めるな。これはpolygonal structureとも呼ばれてるわ。
実際の症例
実際の症例や。60代男性で検診で左下葉の異常陰影、精査で腺癌、癌性リンパ管症の診断となった例や。polygonal structureが所々で確認出来ると思う。
こっちも60代男性の症例や。左下葉に気管支周囲血管束の肥厚があるやろ。これも癌性リンパ管症と診断された例や。原発は左上葉の肺腺癌やで。
こっちは50代女性で胃癌が原発の癌性リンパ管症の例や。小葉間隔壁肥厚や小葉中心部構造などの末梢リンパ路の肥厚、明瞭化が確認出来ると思う。
鑑別診断のポイント
リンパ路に沿った病変
鑑別診断が必要な疾患やけど、これはリンパ路に沿った病変を来す疾患や。具体的にはサルコイドーシスやアミロイドーシス、MALTリンパ腫、間質性肺水腫などや。他には肺炎と鑑別が必要な時もあるな。この辺りは臨床情報と照らし合わせる事が重要やで。
癌性リンパ管症の原発や。合わせて確認しておいてや。
まとめ
今日は癌性リンパ管症のレクチャーをしたで。肺転移の1つの様式やから、診断がついた時点でステージ4やで。その中でもポイントは2つや。
肺転移がリンパ管に浸潤した状態で原発は乳癌、胃癌、肺癌などが多い
CT所見は、小葉中心性粒状影と小葉間隔壁と胸膜の肥厚(polygonal structure)が特徴的
こんなところや。発症から死亡まで数ヶ月とかかなり進行が早いで。言ってみれば癌性リンパ管症は肺転移と同じやからな。この診断名がついた時点で進行してしまってるのは間違いないねん。対策としては、ここまでになる前に早期に見つけて転移が起きないうちに治療をする事かな。
後は検査する側として、まずは読影医やなくて自分の段階で指摘出来るくらいまでになっておくと、より検査の質が上がるってもんやで。その為には症例を経験する事や。ほんまにコレや。読影してて、この画像が欲しいなって時に追加で撮影や再構成してあると、コイツ、分かってるやん!ってなるもんな。
っていうか、そろそろ終わりにせな。時間が無くなってきたわ。ほな、精進しいやー!