悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma)

アスベストって知ってるか?

名前は聞いた事があります。でも詳しくは知りません。

アスベストは石綿とも呼ばれてるんやけど、天然繊維状けい酸塩鉱物って呼ばれてて、線維がメチャ細いねん。
昔は断熱材なんかに普通に使われてたんやけど、発癌性物質も含んでた事が後になって分かったんや。

悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma)とは

悪性中皮腫(malignant mesothelioma)

まず悪性中皮腫についてからや。

悪性中皮腫は中皮細胞から発生する腫瘍の事や。胸膜だけやなくて、心膜、腹膜からも発生するヤツも含めたあるで。

胸膜に発生するのを悪性胸膜中皮腫、腹膜に発生するのを悪性腹膜中皮腫、心膜に発生するのを悪性心膜中皮腫と呼ぶねん。

胸膜が最多で、肉腫型が1番予後が悪いで。

悪性中皮腫分類

悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma)とは

悪性中皮腫の中でも、今日のお題でもある悪性胸膜中皮腫は、胸膜の表面にある中皮細胞から発生する腫瘍の事や。

組織型によって上皮型、肉腫型、二相型に分類されるで。肉腫の亜型として組織線維型というのもあるわ。

悪性胸膜中皮腫は、男性に多くて年齢は50~70歳に見られるで。

前述した通りアスベストには発癌性物質が入ってて、これを呼吸などで取り込む事を石綿曝露って呼んでんねん。ほんで石綿曝露から20~50年の潜伏期を経て悪性胸膜中皮腫を発症するんや。

以前アスベスト関連で仕事してた人で潜伏期を経過した人、つまり男性高齢者がもっとも多いねん。ちなみに低曝露でも発症すると言われとる。

以下は悪性胸膜中皮腫の大まかな概要や。ちなみに悪性胸膜中皮腫は抗がん剤(化学療法)、放射線治療、外科的治療のいずれも有効性は低いと言われてんねん。

  • 概要
    • 胸膜の中皮細胞から発症する
    • 石綿曝露と相関が高く、20~50年の潜伏期を経て発症する
    • 男性、50~70代に多い
    • 上皮型、2相型、肉腫型の3つに組織分類され、肉腫型の亜型で線維形成型もある
    • 予後不良だが、その中でも上皮型、2相型、肉腫型の順に予後が悪くなる
    • 胸水を合併する事も多い
    • 臨床症状は息切れや胸痛など

胸膜の解剖と役割

胸膜の解剖

次に胸膜の解剖やけど、これは今更言わんでも分かるやろ。下の図の通りや。

内側から肺、臓側胸膜、胸膜腔、壁側胸膜の順に存在してるで。

胸膜の解剖

胸膜の役割

胸膜の役割は、呼吸における肺の膨張や収縮の手助けと、空気が漏れないようにしているんやで。

肺側胸膜と臓側胸膜の間、つまり胸膜腔に少量の液体(胸水)が10~20ml程度あるんやけど、この液体が肺が膨らむ時の潤滑油として機能してんねん。つまり、この潤滑油があるおかげてスムーズに呼吸が出来んねん。

胸水は壁側胸膜から作られて、臓側胸膜から吸収される事で一定の容量を保っていると言われとる。

ここに何かしらの原因で炎症が起きたりすると胸水が過剰に溜まったり、外傷などで空気が入ったりすると気胸になんねん。

悪性胸膜中皮腫の原因と治癒率

悪性胸膜中皮腫の原因

悪性胸膜中皮腫の原因はアスベストや。この石綿曝露があるか無いかで発症率は全く違ってくるで。

もちろん石綿曝露がある方が発症率は高いわ。

細かいアスベストが呼吸によって肺内に侵入して、そこに留まる事で細胞を刺激し続けんねん。これが数十年経過後に中皮腫を形成するって流れや。

ほとんどがアスベスト暴露によるものやけど、少数ながらアスベスト暴露してへんケースもあるで。

最近は遺伝学的因子が関係しているのが分かってきたという報告もあるで。 ※悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2020年版より

悪性胸膜中皮腫の治癒率

治癒率に関しては、かなりの予後不良や。施設によって色々な数字が出てるけど、概ね予後不良なのは共通しとる。

中には、2年生存率は30%程度、5年生存率は4%程度というデータもあるで。

理由としては、特徴的な臨床症状が無い事から発見時には進行している事が多い為と言われてるな。

悪性胸膜中皮腫のTNM分類

悪性胸膜中皮腫のTNM分類とステージ分類や。これはUICC-TNM分類ver8に沿って作成してあるで。

T分類T1T2T3T4
同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍が限局(縦隔胸膜、横隔膜含む)している同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり、横隔膜筋層浸潤、肺実質浸潤がある同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり、胸内筋膜浸潤、縦隔脂肪織浸潤、胸壁軟部組織の孤在性腫瘍、非貫通性心膜浸潤のいずれかが認められる同側胸膜(壁側または臓側胸膜)に腫瘍があり、胸壁(肋骨破壊の有無は問わない)への浸潤、経横隔膜的腹膜浸潤、対側胸膜浸潤、縦隔臓器浸潤、脊椎や脊髄(神経孔)への浸潤、貫通性心膜浸潤のいずれかが認められる
N分類N0N1N2N3
リンパ節転移なし同側胸腔内リンパ節転移(肺門、気管支周囲、気管分岐部、内胸など)対側胸腔内リンパ節転移、同側または対側鎖骨上窩リンパ節転移
M分類M0M1
遠隔転移なし遠隔転移あり
UICC-TNM分類ver8を参考に作成
N0 N1N2M
T1ⅠAⅢB
T2ⅠBⅢB
T3ⅠBⅢAⅢB
T4ⅢBⅢBⅢB
UICC-TNM分類ver8を参考に作成

画像所見

悪性胸膜中皮腫の画像所見

悪性胸膜中皮腫の画像所見についてや。

単純写真、CT別での所見は以下の通りやで。

胸膜の肥厚や胸膜腫瘤影に注意やで。

  • 単純写真
    • 片側性胸水 びまん性の胸膜肥厚、患側胸郭容積の減少など
  • CT
    • 片側胸水(70%程度)、不整ないし結節状の胸膜肥厚、1cmを超える胸膜肥厚、縦隔側胸膜肥厚、環状胸膜肥厚、胸膜プラークを伴う事もある

次からは実際の画像を見ていくで。

実際の症例

60代男性でアスベスト暴露歴ありの人や。

左胸膜の肥厚が確認出来ると思うで。FDG-PETも実施してたから合わせて載せておくわ。左胸膜肥厚と腋窩リンパ節に転移を認めるな。

胸部CT-悪性中皮腫
FDG-PET-悪性中皮腫
下段左画像のみFDG-PET

70代女性。胸水穿刺で悪性胸膜中皮腫の診断となった例や。

左胸膜の肥厚と大量の胸水を認めるな。

胸部CT-悪性中皮腫
FDG-PET-悪性中皮腫
下段左画像のみFDG-PET

鑑別診断のポイント

びまん性胸膜肥厚

悪性胸膜中皮腫と鑑別を要する疾患について話していくで。

これはびまん性胸膜肥厚を呈する疾患やな。具体的には、偽中皮腫様肺腺癌、癌性胸膜炎、結核性胸膜炎、線維性胸膜炎などや。

偽中皮腫様肺腺癌は悪性胸膜中皮腫と所見が酷似しているから、画像上やと鑑別が難しい場合も多いで。

他に鑑別を要する疾患としては胸膜播種などがあるわ。

呼吸器関連だと肺癌もあるから、合わせて確認しておいてもらえるとええで。

他に炎症系の疾患もあるで。

まとめ

今日は悪性胸膜中皮腫についてレクチャーしたで。ポイントは1つだけや。

アスベスト曝露歴があり1cm以上の胸膜肥厚は悪性胸膜中皮腫を疑う

これやな。とにかくアスベスト(石綿)曝露が関係してんねん。問診が重要やで。

しかも高濃度曝露だけやなくて、低濃度曝露でも発症する場合がある事を覚えとき。

ちなみにアスベストは2006年に使用が禁止されてるで。

2006年に完全に使用が禁止されたということは、長くても2050年くらいまではアスベストが原因の悪性胸膜中皮腫が発症する可能性があるって事ですよね。

その通りや。

1975年以前は普通に使用されてた過去があんねん。せやからワシが医者になったばかりの頃は石綿肺(アスベスト肺)の患者さんを良く見たもんや。最近は少なくなってきた感はあるけどな。

ってな訳で、今日はこれくらいにするで。

ほな、精進しいやー!

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