腰椎穿刺って見た事ある?
ないわよ。されたことならあるけど。
マジか?
まさかの身近に経験者ありや。
もくじ
髄膜炎(meningitis)とは
髄膜炎の概要
なんで腰椎穿刺の話をしたかっていうと、今日の内容が髄膜炎についてやからねん。
あれって傍から見てると、よくあの隙間に入れる事ができんなと思って感心してんねん。さすが脳外の先生やなって。ワシなら透視下やないと無理って言ってしまいそうになるもんな。
おっと、本題に戻るか。髄膜炎はその名の通り髄膜に炎症が起きてしまってる状態や。
炎症の原因は菌やウィルス感染によるものが多いで。特殊な例やと癌性髄膜炎ってのもあるな。
一言で髄膜炎と言ってもいくつも分類があって、代表的なものだけでも感染性(細菌性、無菌(ウィルス)性)、非感染性なんかがあんねん。
- 細菌性は年間数十名程度の発症数
- 細菌性髄膜炎は病理学的には化膿性脊髄炎で、化膿性滲出物がくも膜下腔に充満し、軟膜やくも膜、硬膜が肥厚する
- 従来は小児が半数以上を占めていたが、最近は減少傾向にある
- 小児(~5歳)はB群レンサ球菌と大腸菌が多く、他にはリステリア菌など
- 6歳以降は60%以上が肺炎球菌、10%程度がインフルエンザ菌
- 細菌性髄膜炎は重症化する傾向がある
- 成人の場合は、慢性副鼻腔炎、肺疾患、心疾患、慢性消耗性疾患、免疫抑制などの背景がある場合が半数程度ある
- ウィルス性髄膜炎は自然寛解が多い
- 非感染性は薬剤性など
髄膜炎の分類
髄膜炎の分類は原因別に、大きく2つに分けられて、感染性髄膜炎と、非感染性髄膜炎があるんや。
更に感染性髄膜炎には、細菌性髄膜炎、結核性髄膜炎、無菌性(ウィルス性)髄膜炎、真菌性なんかがあるで。非感染性は自己免疫性、薬剤性などや。
結核菌はヒトーヒト感染をするから注意や。最近は薬剤耐性がある結核菌も出てきてるらしいからな。とは言っても今の日本じゃ目にする機会はそれほどは多くないのも事実や。
教科書やサイトによっては表記に若干の違いはあるけども、基本的な特徴は次の通りやで。これらは最終的には腰椎穿刺にて診断するねん。
原因 | 特徴 |
---|---|
細菌性 | 頭痛、発熱、項部硬直、意識障害が特徴 肺炎球菌の頻度が高い 無菌性と比較して重症度が高い事が多い |
結核性 | 頭痛、発熱、嘔吐、意識障害、ものが2重に見えるなどが特徴 結核菌が原因 |
無菌性(ウィルス性) | 頭痛、発熱、嘔吐、項部硬直が特徴 クリプトコッカスやエンテロウィルスが多い ウィスル性は自然寛解が多い アスペルギルスは血管炎を起こしやすく、出血を伴う事が多い |
非感染性 | 頭痛、項部硬直がある 自己免疫性、薬剤性などがある 細菌性と比較して症状や進行はゆっくりな事が多い |
この中で注意しなければアカンのが細菌性髄膜炎や。細菌性髄膜炎は治療しても致死率は20%前後っちゅー数字が出てんねん。
加えて生存者の30%程度に後遺症(脳神経障害、認知機能障害、片麻痺など)が残ったりすんねんで。結構アカン病気やろ。
ちなみに、この中で細菌性髄膜炎とウィルス性髄膜炎は急性の経過を示すんやけど、ウィルス性髄膜炎は1週間程度の投薬で治癒する事が多いねん。
最近は、ヒブワクチン、小児肺炎球菌ワクチンの接種が開始された事から、小児の細菌性髄膜炎自体は減少してるらしいで。
髄膜炎の症状
細菌性髄膜炎の症状は、倦怠感や発熱、頭痛、意識障害、項部硬直、嘔吐なんかや。特に臨床の現場では、髄膜炎を疑う時は、項部硬直の有無を診察時に必ずチェックするで。
成人の細菌性髄膜炎やと、発熱、項部硬直、意識障害が古典的三徴と呼ばれてて、これに頭痛を加えた四徴が典型的な症状や。
小児に多いんやけど、初期には痙攣発作が起きる事もあんねん。ただ成人でも見られるで。
中には意識レベルが低い状態で搬送されるパターンもあんねん。
髄膜炎の治療法
感染性髄膜炎の場合は、抗菌薬や抗ウィルス薬を投与すんねん。
細菌性の場合は、培養検査で原因菌が特定されるまでは複数の抗菌薬を投与して、原因菌が判明したらその菌に効果的な抗菌薬を投与するという流れや。
脳浮腫対策としてコルチコステロイドを投与する場合もあるで。
ウィスル性の場合も同様で、抗ウィスル薬を投与したりするんやけど、補液や安静待機で回復する場合も多いのは概要で話した通りや。
画像所見
髄膜炎の画像所見
次に画像所見についてや。原因別で多少の違いはあったりもするんやけど基本的な画像所見は同じやで。
まず覚えておく所見は、FLAIRでの脳溝やくも膜下腔が高信号として描出される点や。これは炎症性の滲出物によるものやで。脳槽も高信号になる事があるな。
次に造影後での髄膜の異常造影効果や。脂肪抑制のT1で撮影するとよく抽出されると言われてる。
結核性髄膜炎は脳底槽からシルビウス裂にかけて厚い増高効果域を呈する事が多いという点も知っておくとええで。
簡単にやけど、まとめておいたで。
画像所見 | 備考 | |
---|---|---|
髄膜炎 | FLAIRでの脳表、くも膜下腔、脳溝、脳槽の高信号 造影後の髄膜の異常信号 拡散強調での脳表の高信号を認める事がある | 結核性は脳底槽からシルビウス裂にかけて厚い造影効果を認める事がある |
DA-patternとPS-pattern
髄膜は、硬膜とくも膜、軟膜を総称したものというのは知ってるよな?
硬膜をdura-mater、軟膜をpia-materと言うねんけど、この頭文字を取って硬膜優位の造影パターンをDA-pattern、軟膜優位の造影パターンをPS-patternとしてんねん。各々のパターンで鑑別すべき疾患が違ってくるで。
DA-patternは低髄液症候群、腫瘍性、自己免疫性などがあって、PS-patternは髄膜炎、肉芽腫性、もやもや病なんかや。
ただ、これらは混在するパターンも多くあるで。見分け方やねんけど、造影される膜が硬膜に沿ったパターン、言い換えると脳表に沿って蛇行していないパターンがDA-patternや。
一方で脳表に沿った造影効果、言い換えると蛇行したパターンがPS-patternや。
参考にしいや。

実際の症例
実際の画像を見ていこか。
頭痛と発熱があってん。左のシルビウス裂に造影効果を認めるで。精査の結果、結核性髄膜炎と診断されてんねん。

鑑別診断のポイント
鑑別診断について
鑑別診断についてやけど、FLAIRで同様の所見を呈す疾患は、くも膜下出血や癌性髄膜炎などがあるな。
癌性髄膜炎については下記を参考にしてくれや。
- 癌性髄膜炎の概要
- 悪性腫瘍が髄膜へびまん性に転移した状態
- 脳脊髄液(CSF)を介して播種性に広がり、軟膜に沿った進展をする
- 原発は、肺癌、胃癌、乳癌、悪性黒色腫などで多い
- 頭痛や項部硬直、認識脳障害などが起きる
- 脳実質への転移と比較すると稀ではあるが、予後は非常に悪い
- 画像上では交通性水頭症を生じると脳室の拡大を認める
- 造影T1画像では、髄膜に沿った異常増強効果が限局性、あるいはびまん性に認められる
- 脳表や脳神経、脳室上衣に認める事が多い
ちなみにFLAIRによる髄液の高信号は、高酸素投与下でも起きる事があるで。オペ後なんかの画像で見られる事があるわ。
髄膜の増強効果は癌性髄膜炎や低髄圧症候群なんかでも認めて、これは臨床経過の確認が重要や。
下記のレクチャーも参考にな。
まとめ
今日は髄膜炎についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。
髄膜炎の画像所見はFLAIRの脳溝の高信号や、造影画像で硬膜の造影効果
造影効果には、DS-patternとPS-patternがあり、各々で鑑別すべき疾患がある
髄膜炎の原因までは画像診断では分からへんねん。
せやけど少なくとも髄膜炎は見逃したらアカン。そこから原因元に辿る事も出来るからな。
ちなみにやけど、髄膜炎が疑われたらまずは抗菌薬を投与するらしいで。なぜかというと、抗菌薬投与に3~6時間以上かかると、死亡率が上昇するという報告があるからなんや。
みちるさんの場合も、まずは投薬してから腰椎穿刺したのかもしれませんね。
その可能性はあるかもな。
さて、今日はこれくらいにするで。
ほな、精進しいやー!