転移性骨腫瘍(metastatic bone tumor)

放射線偉人伝シリーズ第二弾!今回はキュリー夫妻や。この夫婦はごっついねんで。夫婦でノーベル賞を受賞しとんねん。夫婦でノーベル賞を受賞したのはキュリー夫妻を含めて5組しかおらへんのや!

ほぅ。

Wikipediaより左がピエール・キュリー、右がマリー・キュリー
  • ラジウムとポロニウムを発見して、放射能という言葉を作った人達
  • 結婚当初はお金がなく極貧生活をしていた
  • 実は娘夫婦もノーベル賞をゲットしている
  • 妻のマリ・キュリーは10歳の時に母親と姉を病気で亡くし鬱になった
  • 夫のピエールは出世や恋愛に興味が無い研究オタクだった
  • でもマリに会った瞬間に一撃でやられて熱烈アタックが始まった
  • 結果、結婚し夫婦でノーベル賞受賞、妻のマリは女性で初のノーベル賞受賞者になる
  • 実はマリはその後もう一度ノーベル賞を受賞している
  • そんな彼女でもラジウムを素手で扱ったり防護対策はしていなかった
  • そのため死因は長年の被曝による再生不能性貧血だったと言われている
  • 今でもマリが使ったノートは防護が必要なほど汚染されている

普通、1回でも受賞するのが難しいノーベル賞やのに、夫婦と娘夫婦も入れると5回(人)の受賞や。オタクを一瞬で変えてまうほどやってん。相当ドストライクやったんやろな。

ちなみに今でこそあまり使われんくなったけど、核医学ではキュリーって単位が使われてたんやで。

当時はまだ女性に対する偏見が大きかった時代やからな。その中でのこの功績はメチャ凄い事やと思うわ。こういう人達がおって、今の放射線診断や治療がある訳やな。

転移性骨腫瘍(metastatic bone tumor)とは

転移性骨腫瘍の概要

さて、今日は転移性骨腫瘍や。これは放射線治療の対象になりうる疾患やで。ちなみにキュリー夫妻は腫瘍治療にラジウムを実験した事もあるんやで。時代を先取りしすぎやな。

早く始めて下さい。

お、おう・・・

転移性骨腫瘍は悪性骨腫瘍の半数以上を占める疾患や。原発は乳癌や肺癌、腎癌、前立腺癌など多岐に渡るで。その中でも前立腺癌、肺癌、乳癌からの転移が多いんやけど、逆に骨転移から原発を推察するのは難しいで。一応、転移のパターンである程度は推察が可能っちゃ可能なんやけどな。

転移部位は転移は脊椎が最も多くて、躯幹骨、四肢の順や。特に肘、膝からの遠位部にはめったな事では転移せーへんと言われてる。そんな中で末梢に骨転移を認めたら、肺癌か腎癌の可能性大やで。

乳癌なんかやと、骨転移の有無や個数が予後に影響があったという報告もあるで。

転移性骨腫瘍について表にしたから確認しておいてや。

概要
転移性骨腫瘍悪節骨腫瘍の中では最も頻度が高い
原発巣は肺癌、前立腺癌、乳癌、腎癌、消化器系癌など
その中でも男性は前立腺癌、肺癌、女性は乳癌からの転移が多い
青年以下では神経芽細胞腫、骨肉腫、ホジキンリンパ腫などが多い
多発する事もしばしば
骨転移の機序は、直接浸潤、リンパ行性、血行性の3つがある
骨転移には溶骨型、造骨型、混合型、骨梁間型の4つがある
 溶骨型:骨組織を破壊するタイプで肺癌、腎癌、甲状腺癌からの転移に多い 乳癌からの転移の場合もある
 造骨型:骨組織を新生するタイプで前立腺癌、乳癌からの転移に多い
 混合型:両方が混在するタイプで肺癌、乳癌、消化器癌など
 骨梁間型:骨梁に変化を起こさずに骨梁間に浸潤するタイプで、脊椎転移の3割以上を占めると言われている

転移が進行すると疼痛などが出現してくるんやけど、初期の場合やと無症状の事も多くて他の検査で偶然発見されるっていうパターンも少なからずあるんや。ワシの経験で過去には交通事故の精査でMRIを撮影した時に偶然骨転移が見つかったって例もあったな。

全身骨の解剖

全身の骨の名称や。手根骨や足根骨にはもうちょっと種類があんねんけど、大まかな解剖ならこれでOKやろ。

ちなみに体の中心に近い方を近位部、遠い方を遠位部と呼ぶで。大腿骨遠位部と言ったら膝の辺りを指してねんで。

全身骨の解剖

転移性骨腫瘍の原因と臨床症状

原因は原発からの骨転移や。腎癌、肺癌や乳癌、前立腺癌、消化器系癌が原発の頻度が多いで。骨転移のサイクルにはパラサイロイドホルモン関連タンパクが関係してると言われとる。まぁ細かい事はええやろ。骨転移しやすい癌の種類を覚えておいてくれや。

臨床症状は疼痛やな。脊椎に転移すると神経症状も出てくる事があるで。

治療法は化学療法や放射線治療や。転位の部位が骨やから切除するって事はあまり聞かんな。通称ケモラジと呼ばれる化学療法と放射線治療を併用した治療が行われる事が多いで。

画像所見

転移性骨腫瘍の画像所見

次に画像所見についてや。

単純写真やCTやと椎弓根の消失や圧迫骨折、骨硬化性変化なんかを認めるで。ただ骨梁間型は分からん。

MRIやと溶骨型はT1強調で低信号、T2強調で高信号に描出されるで。造骨型はT2強調でも低信号の事があるし、骨梁間型はT1強調で低~等信号、T2強調で等信号の事もあって様々な信号パターンを呈するんや。

他には造骨型には骨シンチグラフィ、溶骨型にはFDG-PETが有効やで。

MRI
溶骨型T1強調で低信号、T2強調で高信号、拡散強調で高信号、造影で増強骨シンチで高集積
造骨型T1強調で低信号、T2強調で低信号、拡散強調で高信号、造影効果は多少FDG-PETで高集積
混合型T1強調で低信号、T2強調で一部高信号、拡散強調で一部高信号、造影で一部増強骨シンチ、FDG-PET共に高集積の箇所があり
骨梁間型T1強調で低~等信号、T2強調で等信号、拡散強調で高信号、造影効果はあまりないFDG-PETで集積あり

実際の症例

60代男性で背部痛、腰痛精査でMRIを実施した例や。脊椎に転移を認めて多発骨転移と診断された例や。特にC6の左側には腫瘤性病変も認めるで。参考までに後日、原発精査でFDG-PET検査を実施したから、その画像も載せておくで。

全脊椎MRI-骨転移
頚椎MRI-骨転移
胸椎MRI-骨転移
FDG-PET画像-骨転移
FDG-PET画像-骨転移2

造影効果があった所に一致してFDGの高集積を認めると思うで。他には腸骨にも骨転移を認めてんねん。

念のための確認やけど、FDG-PETで高集積を示すのは造骨型、混合型、骨梁間型やで。溶骨型は集積せん事があるから、FDG-PETで集積が無くても骨転移無しとはならん事に注意やで。

鑑別診断のポイント

類似疾患

次に鑑別診断についてやな。鑑別診断には次のようなものがあって、多発性骨髄腫、圧迫骨折、感染性脊椎炎、脊椎血管腫、仙骨の脆弱性骨折なんかやで。各々の画像所見はどんな感じなのかを知っておくのが重要やで。

まとめ

今日は転移性骨腫瘍についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

悪性骨腫瘍の中では転移性骨腫瘍が最も頻度が高い

造骨型、溶骨型、混合型、骨梁間型があり信号パターンの傾向もある

原発によって骨転移のパターンの傾向がある(前立腺癌は造骨性が多いなど)

この辺りを押さえておけば大丈夫やろ。一言で骨転移って言うても複数の種類があるからな。このパターンによって画像所見も違ってくるから注意やで。画像所見の欄でパターン別のMRIの信号強度を載せておいたから、それを参考に診断してもらえるとええで。

特に骨梁間型は単純写真では異常があらへんから要注意や。

この辺は経験がものを言うねん。読影は千里の道も1歩からや。キュリー夫妻も地道な実験の結果でノーベル賞をゲットしとんねん。

自分も頑張りや。応援してるからな。

ほな、精進しいやー!