ほうですか。どもども参考になりましたわ。ほな。
誰と話してたんですか?
放射線治療の先生や。脳メタで何個まで定位放射線治療できるのか聞いてみたんや。
せや、今日は脳転移について話していこか。
もくじ
転移性脳腫瘍(metastatic brain tumor)とは
転移性脳腫瘍の概要
転移性脳腫瘍の概要
転移性脳腫瘍は、脳腫瘍全体のうち15~20%くらいの割合で高齢者に多いで。これは癌でも治療法の発達で長期生存する人が増えてきてる事に関係してんねん。
高齢化や食生活の変化で癌に罹患する人も増えてきているんやけど、治療技術の進歩でBSC(best supportive cure)の状態でも原発のコントロールが出来てる人も増えてきてんねん。
ただゆっくりとは進行してしまうから、おのずと脳転移する例も増えてくるって訳やな。
ちなみに今回は転移性について話していくけど、もちろん脳腫瘍が原発のケースも多くあるで。
脳への転移経路
転移経路については、血行転移がほとんどで脳へ転移しやすい原発は次の通りや。
肺癌(52%)、乳癌(10%)、腎癌(5%)、大腸癌(5%)、胃癌(5%)、肝癌などや。
圧倒的に肺癌が多くて、これは肺自体が全身の血液循環に関係している事が挙げられてるで。
また肺癌に関しては、原発腫瘍の大きさ、右上葉発生、低分化度の非扁平上皮癌が脳転移のリスクファクターとして知られてるな。
80%以上で大脳半球の皮髄境界に発生して、他には小脳、脳幹、硬膜、軟膜なんかにも転移する事もあるで。ちなみに転移経路は3つあって血行性転移とリンパ行性転移、播種性転移や。
- 血行性転移 癌細胞が血管(血液)を介して転移する事
- リンパ行性転移 癌細胞がリンパ管に侵入して全身に転移する事
- 播種性転移 胸腔や腹腔内に癌が転移する事
血行性転移は癌細胞がVEGF(vascular endothelial growth factor)を放出する事で血管新生を促すねん。癌細胞の中に血管新生ができれば、血行性転移も容易におきやすくなるって事や。もちろん転移だけやなくて、血管から栄養も補給してるから増大スピードも早くなるで。
リンパ行性転移はまず付属リンパ節転移を起こして、その転移巣からリンパ管に侵入、そして全身へ転移するものや。
播種性転移はそのままやな。癌細胞が種を捲くように散らばって転移する事や。胸腔や腹腔内で見られるで。
こんな風にして、癌細胞が原発から転移して脳内で増殖してしまった状態を転移性脳腫瘍と言ってんねん。
癌細胞はBBB(Blood Brain Barrier)を通過する
本来、脳にはBBBという脳を保護しているバリアがあって、栄養物質を通過させる一方で、有害物質から防護している機能があんねんけど、癌細胞はこのBBBを通過してしまうんや。
一方で抗癌剤などの薬剤は通過できひん事もあって、これが脳転移(血行性転移)が多くなっている原因の1つとも言われとる。
BBBは脳の毛細血管の内壁の内皮細胞から出来てるらしいな。
転移性脳腫瘍の臨床症状
臨床症状やけど、これは腫瘍が出来る位置によって違ってくるで。ふらつきや頭痛精査で発見されるパターンもあるし、前頭葉に腫瘍ができると人格変化や言語障害、海馬付近にできると認知機能低下なんかが起きてくんねん。
あとは腫瘍が大きくなってくると周囲に浮腫伴う事から頭蓋内圧亢進症状が出てくる事もあるで。この時の症状は頭痛や吐き気や。脳室を圧迫すると水頭症にまで至るケースもあるで。
脳の解剖
せっかくやから解剖も載せておくで。おまけで脳の機能分野もや。合わせて覚えておくと、臨床症状と照らし合わせる事が出来るようになるで。
転移性脳腫瘍の治療方法
治療法やけど、これは全身状態や転移の個数、大きさなんかで変わってくるで。
単発転移の場合で原発がコントロールされている場合は手術や放射線治療(定位放射線治療)で治療をする事が多いな。
手術は身体への侵襲度が高いから、最近は放射線治療が選択されるケースが増えてきとる。
おおよそやけど転移数が3~5個以内であれば、定位放射線治療といって放射線をピンポイントで当てる治療法も可能だったりすんねん。ただ転移数があまりにも多い場合は化学療法を先行して行ったり、全脳照射したりするケースになるな。
もちろん治療後の定期的なフォロー検査は必要やで。
転移性脳腫瘍のまとめ
転移性脳腫瘍についてのまとめや。
- 血行性転移によるものが多く、原発は肺癌、乳癌、腎癌、大腸癌が多い
- 高齢者に多く、腫瘍が出来る部位によって多彩な症状を呈する
- ふらつき、頭痛、人格変化、認知機能低下など
- 脳転移数が少なければ定位放射線治療で治療する事も可能
実は臨床症状から脳転移が見つかって、精査してみたら肺癌がありましたなんて例も少なくないねん。言い替えると、それほどまでに転移が好発するって事やな。
画像所見
転移性脳腫瘍の画像所見
さて、次に画像所見についてや。
まず知っておいて欲しいのが、転移性脳腫瘍のMRI信号パターンは多岐に渡るって事や。
なぜかっていうと、原発の種類や大きさによって違う所見を呈するからなんや。
せやから、これから話すのは傾向という感じで聞いてもらえればと思うで。
転移性脳腫瘍は通常は境界明瞭な球状の腫瘤影やけども、小細胞癌なんかやと、びまん性浸潤のパターンもあるんや。
MRI画像やと下記の通りや。
- T1強調では基本的に低~等信号で、出血なんかがあると高信号になる事もある
- T2強調は基本的に高信号だが、原発によって信号強度が変わる場合もある
- 浮腫はFLAIRでよく分かる
- 造影では充実部が造影効果を認めるが、壊死や出血などでリング状から結節状のように様々なパターンがある
- ある程度大きくなるとリング状造影効果を持つ腫瘍が多い
DWI | T2WI | T1WI | FLAIR | CE | |
---|---|---|---|---|---|
転移性脳腫瘍 | 低信号 小細胞肺癌では高信号の事がある | 基本的に高信号 大腸癌では低信号の場合あり | 等~低信号 | 浮腫は高信号 | 基本的にリング状 小さいと結節状の事もある |
脳メタ=リング状の造影効果やと思ってる人もおると思う。それも間違いやないんやけど他にもパターンはあるって話やねん。注意すべきポイントや。
実際の症例
肺癌 小脳転移
さて、実際の画像を見ていこか。小脳に転移性腫瘍を認めるで。
50代 女性 肺癌
こっちは50代女性で肺癌の脳転移の症例や。腫瘍の周囲に浮腫性変化を認めて、リング状に造影されるのが分かると思う。
70代 女性 肺癌術後
70代女性で肺癌の左小脳転移や。こっちは転移病変が小さくてリング状の造影効果は見られへんで。むしろ造影以外のシーケンスやと分からんな。
鑑別診断のポイント
膠芽腫や悪性リンパ腫、多発性硬化症との鑑別
鑑別診断のポイントや。鑑別疾患にあがるのが、膠芽腫や悪性リンパ腫、多発性硬化症なんかやな。
膠芽腫は浸潤性で多中心性なのが鑑別ポイントや。
悪性リンパ腫は均一に造影されるのと、拡散強調で高信号を示すのが鑑別ポイントやな。
多発性硬化症は同じようにリング状の造影効果を認めるんやけども、open-ringと言って、リング状が不完全な形で呈するが鑑別ポイントやな。Open-ringは脱髄疾患に特徴的な所見って言われてるで。
MAGIC-DR
下記がリング状の造影効果をする疾患が対象や。これらの頭文字を取って、「MAGIC-DR」って呼ばれたりすんで。
- M:Metastasis(転移性脳腫瘍)
- A:Abscess(脳膿瘍)
- G:Glioblastoma(膠芽腫)
- I:Infarct(亜急性期脳梗塞)
- C:Contusion(脳挫傷)
- D:Demyelination(脱髄)
- R:Radiation necrosis(放射線壊死)
脳転移が多い原発疾患
原発に関しては肺癌と乳癌が多いから、以下のレクチャーで確認しておいてくれや。
まとめ
今日は転移性脳腫瘍についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
血行性転移で肺癌、乳癌、大腸癌、腎癌からの転移が多い事
画像所見は様々なパターンを呈するが、基本的にはT1強調で低信号、T2強調で高信号、拡散強調で低信号、リング状の造影効果(結節状のパターンもある)
「MAGIC-DR」が鑑別すべき疾患
こんな感じやな。その他の画像所見や鑑別ポイントについては該当箇所で確認しといてな。
転移性脳腫瘍と言っても知らない事が沢山あったやろ。しかも厄介な事に基本パターン以外の例外的な所見もある疾患が多いねん。
それは他の情報も組み合わせて最終的に画像診断すんねんけど、難しいところでもあり、やりがいがあるポイントでもあるな。画像診断って中々奥が深いんやで。
先生をちょっと尊敬し始めました。
はっはっは!ちょっとしか尊敬してないんかい!って野暮なツッコミはせんといたるわ。
ほな、精進しいやー!