人は管理されたがっている?

サラリーマンは自由なのか?

サラリーマンの自由度は高くない

「管理された環境」と「自由がある環境」どちらが良いでしょうか?

こう聞かれて「管理された環境」と答える人は少ないと思います。次のデータは総務省の数値ですが、2022年の就業者数は6723万人で自営業者は648万人となっています。

このデータによると全体の労働者のうち10%が自営業やフリーランスとして働いている計算になります。サラリーマンより起業したりフリーランスになった方が自由度は高いです(そのぶん、全て自己責任になりますが)。1日に働くのが3時間でも20時間でも自由です。8時間という労働契約に縛られる事もありません。報酬もサラリーマンと比較すると高い事も多いです。では先ほどの質問に戻ります。

「管理された環境」と「自由がある環境」、どちらがいいでしょうか?

自由な環境と管理された環境

管理されない働き方をしている人もいる

上記で話した通り、10%程度ですが自分の裁量で仕事を決められるように起業したりフリーランスとして働く人もいます。これらのメリットは次の通りです。

  • 仕事する時間を自由に設定できる(働くのも働かないのも自由)
  • 頑張ればその分収入も多くなる
  • 仕事の内容を取捨選択できる

一方でデメリットもあります。

  • 安定とは無縁(やらないとそれだけ収入が減る)
  • 自分に何かあったら終わり

起業したりフリーランスになったからといって、仕事が楽になる訳ではありません。むしろ全て自己責任になるので、余計に大変になる事が多いです。ただ自由に働く環境を手にいれるためには、現状フリーランスや起業するしかないのも事実です。少なくともよほど制度の整った会社ではない限り、サラリーマンの状態でこのような業務形態は難しいでしょう。

管理される側で働いている人が多いのはなぜか?

口では自由に働きたいと言っている一方で、サラリーマンを選択する人は多いです。ではなぜ管理されている側で働いている人の方が多いのでしょうか?それにはは2つの要因が考えられます。

まず1つめが「管理される方が楽だから」、そして2つめが「そもそも自由に働くという考えが無かった」という事です。

順に見ていきましょう。

管理される方が楽?

人間は出来るだけ楽をしようとする生き物です。そりゃそうですよね、自分から喜んで困難に飛び込む人は少数(一定数はいます)です。

そしてその中でも一番楽なのが、自分の頭で考えないという事です。

実は考えるという事はかなりの労力を使います。考えるというのは何をやるか決断するという事です。過去のデータや経験から仮説を作ってその対応策を考える。つまり不確定要素を考慮して、未来や結果をイメージして実行するプランを作り、やるという決断をする事。これをやって始めて考えるという形になります。

これは脳にものすごいストレスを与えています。そして人間は1日に多くの決断をしています。ケンブリッジ大学のBarbara Shakina教授の研究によると、人間は1日で約35,000回判断しているという結果もあります。35,000 Decisions: The Great Choices of Strategic Leaders

これら全て自分の頭で考えて判断していたら、とてもではありませんが持ちません。なので過去の傾向や経験を参考にして大多数を無意識下で判断し、より重要な事や始めての事に対してのみ意識して考えるようになっています。

起業やフリーランスになると、誰も指示してくれませんし、自分で考えて行動しなければなりません。全て意識して考える必要があります。一方でサラリーマンは会社や上司が何をやればいいかを指示してくれます。特に考えなくても仕事は出来てしまうのです。人間は出来るだけ楽をしようとする生き物なのは最初に話した通りです。

こういった背景があり、雇用される側を選ぶ人が多いのです。

現状維持バイアス

大多数を無意識下で判断していると上記で書きました。ここで考慮しなければいけないバイアスがあります。それは「現状維持バイアス」というものです。

この現状維持バイアスは、今までやってきた事を継続させる(変化させない)事で脳の決断や判断にかかるエネルギーを少なくさせるものです。基本的に人間は必要に駆られない以上は変化をしません(好みません)。

実はこの裏には現状を変更することでの損失を回避するという心理があるのですが、これを意識しないと気がつかないうちにこのバイアスが影響している事もあるのです。

今の仕事は大変なんだけど、転職するリスクや転職失敗による損失が嫌だから現状維持を選択する。これも現状維持バイアスの1つなのです。

自由に働くという考えが無かった時代

もう1つが、そもそも自由に働くという考えが少数だったという事です。今でこそインターネットやSNSの発達で職業に幅が出てきて、企業に属さなくても稼げるようになりました。少し前までは考えられなかったような職業、例えばインスタグラマーやYoutuberのようなものも出てきています。

ただそれ以前は働く=就職するという考えがメインだったので、起業するというのは1部の人達だけがやるような事だったのです。そして転職も今ほど活発ではありませんでした。転職はどちらかというと、落ちこぼれがやるようなイメージだったのです。

これらの社会背景もあり、今のミドルの人達は自由に働くと言う考えがありませんでした。

これら2つの理由に共通しているもの

実はこの2つは繋がっていたりします。それは「自分の頭で考える」という行為が欠落している事です。

現代では情報はインターネットの中にほとんど落ちています。その情報を組み合わせて自分の頭で考えるかどうかがカギになります。考えるという事を放棄してしまうと、結果として他人の引いたルールの上で生きていく事にもなるのです。

自分で考え納得して決めたのであれば問題ありませんが、実際は周りが就職しているから自分も就職するといったような形も多いのではないでしょうか?

自分の頭で考えられない原因

自由にしてOKと言われても出来ない訳

今でこそフレックス制度やリモートワークといった働き方が増えてきて一昔前と比較するとだいぶ自由度が上がったと思います。しかし会社員である以上は1日の内で最低限働かなければならない時間が決まっており、まだまだ自由度は高くありません。

「明日から自由です。出勤でもリモートワークでも可です。勤務時間も自由です。好きな時に働いて、好きな時に休んで下さい。結果だけ出してもらえれば働き方は自由です。」

こう言われてたらどうでしょうか?どうやって働けばいいかイメージが湧きますか?実際にはどうしたらいいか分からない人が多いのではないでしょうか?

このように実際に自由になった途端に何も出来ないのは、実は「何をすればいいのかが分からない」というのが根底にあるのではないでしょうか?

何をしたらいいか分からない原因

これは学校教育の影響が大きいと思います。

今の学校教育の基本的なスタイルは、正解至上主義、つまりすでにある答えを知っているかがメインで、それらはほとんど変わる事無く今現在まで継続されています。

この問題点は答えの無い問題に対してのトレーニングが不足している事です。

何かを新しく考えるという行為は非常にエネルギーを使う事は上で話しました。そして答えの無い問題に対して考えるというのは、1回では上手くいく事はほとんど無く、普通は何回かトライ&エラーを行っていくので、非常に大変です。そうやって失敗と成功を繰り返しながら自分の答えというものを作っていきます。

しかしこれが誰かが設定したルールの上なら自分で考え実証する必要が無くなります。すでに誰かが答えを決めてくれているからです。ゆとり教育によって自主性を育てようという試みも行われてきましたが、未だに記憶する事がメインです。これが今の義務教育なのです。

学生の時には誰かが決めた答えをいかに覚えているかがメインだったのに対して、社会人になったら答えが無い問題を解けと言われる。これでは自分の頭で考える人が未だに少ないのも頷けるのではないでしょうか?

考えると悩むの違い

よく混同されがちなのが、考える事と悩む事です。これらは明確に違います。違いを言える事が出来るでしょうか?

結論から言うと、「考える」は何かしらの答えを出す事で、「悩む」は答えを出さない事です。「考える」という行為はその背景に解決に向けたロジックがあります。例えば、

今年の売り上げが予算に対してショートしている

→データを見ると20~30代の購買率が低い

→若者に訴求できるような施策はないか?

→今の若者はデジタルネイティブ世代だ

→現行のテレビCMだけじゃなく、SNSマーケやリスティングを小規模で実施してデータを取ってみて、その中から効果がありそうなものを実施しよう!

一方の「悩む」はというと、

今年の売り上げが予算に対してショートしている

→データを見ると20~30代の購買率が低い

→どうしよう、うーん、でも広告費も限りがあるし、人的リソース的にも限界があるしなぁ・・・

実際はもっと深掘りしますが、こんな感じがイメージに近いかなと思います。このように何かしらの仮説であったり答えを出すのが「考える」という行為です。一方の「悩む」という行為は、問題に対してどうしようと思っているだけで、何も実行しない状態をいいます。同じように見えても、実際にやっている事は全く違うのです。

まとめ

これからは自分の頭で考える事が必要

世の中には信じられないほど考えている人達がいます。その人達はどうやったら売れるか、今の流行を作れるかを考えています。今流行っているものや目にしている看板は、その人達が自分に有利になるようにした結果なのかもしれません。

今後において、自分の頭で考えるという事は必須の能力だと思います。実は考える事を必要としないのは、AIが最も得意とするものでもあるからです。

考えないという事は確かに楽です。誰かが道筋を立ててくれて自分はそれに乗る。これほど楽な事はありません。しかし自分の頭で考える、つまり自分の意見を持つという事をしないとAIと同じ土俵に乗るという事です。AIは電源さえあれば働いてくれます。しかもインターネットという膨大な知識のバックグラウンドがあります。到底、人間が敵うものではありません。でも現時点で考える事は出来ません。AIはガラケーの延長線上のものは提案出来ても、スマホを発明する事は出来ないのです。

自分の頭で考えるのは、すぐに出来るようにはなりません。なので小さな事から考えるようにしてみましょう。「他人が」じゃなく、「自分はどうしたいのか」。これを意識するだけで全然違います。

脳は新しい事に対してすごくエネルギーを使います。新しい事をやると脳が適応しようとして一生懸命働き出すのです。これが成長であり、自分の価値観をアップデートしていきます。そうすればいずれは、起業やフリーランスを選択しても、会社員を選択したとしても、少なくても今よりは納得出来る人生になるのではないでしょうか?

くれぐれも思考停止にはならないようにしましょう。