【臨床症状】70代 2か月前転倒し頭部外傷 歩行時のふらつき、意欲の低下
【問題】画像所見と診断名は?
※ DWI、ADC、T2WI、T1WI、FLAIR、T2*の順に表示
➡ 冠状断 MRA-MIP
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- 各種シーケンスにて右硬膜下血種を認める
- T2WIやT1WIの信号強度から新鮮な出血や慢性の出血が混在していると考えられる
- また硬膜下血種により大脳を圧迫し正中線の変位も認める
- これに付随して大脳鎌ヘルニアも認める
- 鉤ヘルニアや小脳扁桃ヘルニアは認めない
- これらの所見より、急性(慢性)硬膜下血種、脳ヘルニア(大脳鎌)疑いとなった
【慢性硬膜下血種】
・頭部外傷後(軽微なものも含む)に一定期間経過後に硬膜下に血種を形成するものを慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma:CSH)と呼ぶ
・慢性硬膜下血腫は急性硬膜下血種の経時的変化とは限らないこともある
・比較的軽微な外傷でも起きる
・主な症状は、頭痛や認知機能低下、性格変化、麻痺など多彩
・高齢者で脳萎縮を伴う人や、血液疾患、抗凝固などの出血性素因がある人、アルコール多飲者に多いと言われている
・外傷時に架橋静脈に損傷が生じて血種を作る事が原因
・被膜が形成されるが、この被膜が血管に富み、ここが出血を繰り返す事で血種が増大すると考えられている
・被膜が厚くなる事、線維性の壁が形成され、器質化する事で石灰化を来すこともある
・一般的には三日月状の形態を認める事が多いとされているが、凸レンズ上の形態を認める事もある
・縫合線を越えて広がるのが特徴でもある
・正中線の偏位や脳ヘルニアの有無も確認する
・治療法は、軽微なら保存療法、症状があったり血種の量が多い場合はドレナージをすることもある
参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版
【脳ヘルニア】
脳ヘルニアとは、出血や腫瘍などの頭蓋内の病変により、頭蓋内圧が亢進し脳が圧迫され偏位した状態
様々な神経症状が出現し、重篤な後遺症や場合によっては致死的になる事も多い
嵌入した箇所の障害だけでなく、その部位の血管が圧排され梗塞を来すこともある
脳ヘルニアには以下のようなものがある
参考書籍:すぐ役立つ救急のCT・MRI 改定第2版
- 大脳鎌(帯状回)ヘルニア:帯状回の一部位が大脳鎌下縁を超えて反対側にヘルニアを起こした状態
- 鉤(海馬/下行性テント切痕)ヘルニア:テント切痕部の迂回槽内へ側頭葉内側部が嵌入し脳幹部が圧排されている状態
- 上行性テント切痕ヘルニア:尾側から頭側に向けてテント切痕(四丘体槽)内に小脳の一部が嵌入している状態
- 小脳扁桃(大孔)ヘルニア:小脳下部が大孔内に嵌入している状態で延髄が圧排される可能性がある