離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans:OCD)

「関節ねずみ」の由来って知ってる?

うっ・・・。えっ、今から救急でCTですか?分かりました。いますぐ行きます!

離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans:OCD)とは

逃げんなや。知らんかったら知らん!でええねん。それを機に覚えればええんやしな。

関節ねずみっちゅーのは、いわゆる俗称で、何かしらの原因で関節軟骨が剥離して、それが関節内を動き回っているように見える事からついて名前やねん。

悪ささえしなければええんやけど、時にロッキング症状なんかが起きたりすんねん。そうなるとスポーツをするのに障害が起きたりするわ。

ちなみに正式名称は「関節内遊離体」と言うで。これも合わせて覚えておくとええで。

離断性骨軟骨炎の概要

離断性骨軟骨炎の概要

さて、今日は離断性骨軟骨炎についてレクチャーや。OCDって略される事が多いな。

そもそも離断性骨軟骨炎ってどんな状態か知ってるか?

簡単に言うと、スポーツなどの繰り返す負荷で、軟骨や軟骨下骨が関節内に剥がれ落ちてしまっている状態の事や。

  1. 負荷によって血流障害が起きる
  2. 血流障害で骨壊死が起きる
  3. 骨壊死によって骨軟骨片が分離して関節内に遊離する

この遊離体がいわゆる関節ネズミと呼ばれてんねん。せやから離断性骨軟骨炎と関節ネズミは関係性が深いんやで。

発症部位は全身の関節なんやけど、肘が多くて、次に足関節かな。あくまで個人的な感覚になるけども。

圧倒的に10代のスポーツ、特に野球をしている人に多いな。

肘離断性骨軟骨炎(野球肘)

肘関節にOCDが起きる事を野球肘とも言ったりするで。

野球肘の概要については次の通りや。離断性骨軟骨炎と共通する点も多いで。当たり前っちゃ当たり前やけどな。

  • 反復的な負荷により関節軟骨の一部が軟骨下骨とともに母床より剥離や分離した状態
  • 10代に多く野球選手に多い事から外側野球肘の1つとして知られている
  • 負荷による血流障害から骨壊死、骨軟骨片の遊離という経過を辿る
  • 上腕骨小頭に好発するも脛骨側にも発生する
  • 透亮像のみの初期、骨片が認められる進行期、関節ネズミが認められる終末期に分類される
  • 骨釘を利用しての離断性骨軟骨片固定や自家軟骨柱移植などがある
  • 病変が母床から離断しているかいないかで治療方針が変わるため重要な所見
離断性骨軟骨炎病期

肘関節の解剖

野球肘に代表されるように、肘にも高頻度で起きるんや。せやから今回は肘の解剖を載せておくで。

上で話した通り全身の関節で起きる可能性がある疾患やから、肘だけやなく他の関節の解剖も知っておく必要があるんやけどな。

ちなみに野球肘で重要なのは上腕骨の外側上顆付近と橈骨近位端やで。

上腕から手関節までの解剖

離断性骨軟骨炎の原因と臨床症状

離断性骨軟骨炎の原因

野球肘をはじめとする離断性骨軟骨炎の原因については、スポーツや部活動によるオーバーユースが最多や。

繰り返し負荷がかかる事で軟骨下骨に損傷が発生して炎症が起きんねん。

そして血流障害から壊死して、最終的に骨片が遊離するんや。

おのずと10代の子でスポーツをやっている子に多いで。

離断性骨軟骨炎の臨床症状

臨床症状は、初期には無症状の事が多いで。

進行して関節軟骨に変性が生じてくると疼痛が出てくんねん。

さらに進行して関節軟骨が遊離すると、場合によってはロッキング症状なんかも起きる事があるで。

離断性骨軟骨炎の治療法

治療法としては、まずは保存療法や。

これは骨軟骨片が安定してる場合やけどな。

保存療法で効果があまりあらへん場合は遊離軟骨の大きさによって摘出術を行う事もあるらしいで。

あまりにも大きい場合は、大腿骨非荷重部から自家骨軟骨片を移植するケースもあるとの事や。

画像所見

離断性骨軟骨炎の画像所見

次に画像所見についてや。単純写真やCTやと軟骨下骨の透亮像や骨硬化像で診断する事ができるで。

MRIやとT1強調、T2強調で低信号を示すんやけど、脂肪抑制画像では周囲の骨髄浮腫を反映して高信号になるで。

  • 単純写真では軟骨下骨の透亮像や骨硬化像を認める
  • CT検査でも同様
  • MRI検査ではT1強調とT2強調で低信号を示し関節面の不整などが確認される
  • MRI画像で離断部位に関節液の侵入や、病変と正常骨髄の間にT2強調で高信号の肉芽腫病変があると不安定性病変の特徴的な所見と言われている

実際の症例

肘離断性骨軟骨炎(野球肘)

次に実際の画像や。10代の野球少年で、投球時に肘痛を感じて精査となった例や。

単純写真やCTでは骨透亮像を、MRIやと該当部位に骨髄浮腫を反映した脂肪抑制画像での高信号域を確認出来ると思うで。

単純写真-離断性骨軟骨炎
肘CT-離断性骨軟骨炎
肘MRI-離断性骨軟骨炎
肘MRI-離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎(足関節)

この症例は10代の男の子でテニスをやっている少年や。足関節に離断性骨軟骨炎を認めるで。

足MRI-離断性骨軟骨炎
左側脂肪抑制、右側がプロトン強調画像

離断性骨軟骨炎(膝関節)

10代の男の子で野球少年や。キャッチャーをやってて、膝の痛みが出現して精査となった例や。

大腿骨内顆に初期の離断性骨軟骨炎を認めるで。

膝MRI-離断性骨軟骨炎
左からT2スター、プロトン強調、T2脂肪抑制の矢状断と横断像

鑑別診断のポイント

Panner病

次に鑑別診断やな。肘離断性骨軟骨炎と同じような部位におきる病変として、Panner病があるで。

Panner病は教科書的には上腕骨小頭骨端核の無腐性壊死で、分節化と骨硬化を来すこともあるとされとる。

簡単に言うと、成長軟骨が何らかの原因で血流障害が起きている状態で、血流障害が起きた結果で分節化や骨硬化を認めるようになるんや。

離断性骨軟骨炎よりも低年齢の5~10歳に発生して、主な原因は外傷に関連した骨壊死と考えられてるな。

予後は良好で、数年で変形を残さずに治癒するで。

Panner病と肘離断性骨軟骨炎の臨床所見上の違いは、以下の通りや。

  1. Panner病は伸展と屈曲の両方で可動制限が出る
  2. 離断性骨軟骨炎は伸展制限のみの事が多い

画像所見は次のような形や。

  1. Panner病は上腕小頭の骨化核の不整像、骨髄浮腫、脂肪変性、無腐性壊死
  2. 野球肘は軟骨下(関節面)の不整像、関節内遊離体

同じような臨床所見でも病態は全然違うから要注意やで。

他のスポーツ外傷

他に関節付近に疼痛を認めるスポーツ外傷には次のようなもんがあるな。

基本的にMRIを撮影すれば鑑別できるものばかりやけど、合わせて確認しておいてもらえるとええな。

まとめ

今日は離断性骨軟骨炎をレクチャーしたで。ポイントは3つ。

原因はスポーツなどのオーバーユース

MRIが最も有用だが、レントゲンやCTでも骨透亮像や骨化像を見逃さないように注意する

肘離断性骨軟骨炎(野球肘)の鑑別にPanner病がある

こんなところや。離断性骨軟骨炎は知ってても、Panner病まで知ってる技師はんはそうそうおらんと思うで。

特に整形外科が無い施設なら尚更やな。

こういうのを知っておくと、仲間内でドヤ顔出来るで。

あと繰り返しになるけど、離断性骨軟骨炎は肘だけやなくて全身の関節に起きる可能性があるからな。

ってな感じで、関節ネズミとの関係性も分かったと思うし、今日はこれくらいにしとこかな。

ほな、精進しいやー!