骨肉腫(osteosarcoma)

なぁ、この仕事してると普段、健康でいる事がどれだけ恵まれているかを実感する時あらへん?

たまにありますね。特に同年代の人が悪性腫瘍と診断されて検査しに来る時とか。

せやな。ワシらの年代になるといつ癌になってもおかしくあらへん。実際、周りに癌や血管系の疾患で入院してるヤツもちらほらおるしな。でも若い人にとっては全然現実的やあらへんやろ。そんな中、自分と同年代の人が必死に治療してる姿とか見ると、現実におるって実感が湧いてくんねんな。

なんでこんな話しをしたかって言うと、この間サルコーマの読影をしてな。読影の参考に患者背景なんかを確認するんやけど、その患者さんがまだ10代やってん。なんか、こう、何とも言えん感じになってもうたんよ。

いや、分かってるよ。都度感情移入してたらこの仕事出来ひんって事は。でもなー、ワシより全然若いねんで。なんかなーと思ってな。ワシが思った所でどうしようもないのは分かってんねんけどな。

骨肉腫(osteosarcoma)とは

骨肉腫の概要

今日は骨軟部腫瘍、特に骨肉腫についてレクチャーしてくで。

まず骨軟部腫瘍とはからや。骨軟部腫瘍は骨や筋肉、神経、脂肪組織なんかから発生する腫瘍の事を言うねん。WHOの分類(2013年)やと、24Category、192種類の病誌組織分類があって、良性から悪性まで多岐に渡るんやで。

悪性の場合は発生頻度としてはかなり低くて、悪性腫瘍全体の1%程度なんやけど、そのうち骨に関しては骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫の順に多いねん。骨肉腫とユーイング肉腫は10~20代の若者に多いという特徴もあるわ。

軟部組織は脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、粘液線維肉腫、平滑筋肉腫の順や。

 

分類

肉腫(サルコーマ)

【骨の肉腫】

骨肉腫、脊索腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫

【軟部肉腫】

悪性末梢神経鞘腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、骨外性ユーイング肉腫、GIST、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、明細胞肉腫、類上皮肉腫 など

この中で骨肉腫に関しては次のような特徴があんねん。1番の特徴は10代の若い世代に多いって事やな。半年以上継続する痛みが契機で発見される事が多いらしいで。

 

概要

骨肉腫

骨に発生する最も高頻度の癌

10代の発症が多いが3割以上は40代以降でも発症する

年間の罹患者数は200人程度で稀な疾患に分類されている

膝付近に発生する事が多く患者の6割が該当し、次に上腕骨頭付近

腫瘍が骨破壊と骨生成を行うのが特徴的

早期に転移する事も多く肺、別部位への骨転移が多い

主な症状は痛みと腫脹で継続する痛みを契機に発見される事が多い

通常型骨肉腫が多いが亜型として血管拡張型骨肉腫、小細胞型骨肉腫、低悪性度中心性骨肉腫、2次性骨肉腫が頻度が少ないがある

骨肉腫の原因と治癒率

最近になって腫瘍の中に癌抑制遺伝子のRB1遺伝子やP53遺伝子の変異がある事が確認されてるけど、具体的な原因や発生要因は確認されてへん。ただ網膜芽細胞腫の2次癌の多くが骨肉腫な事、家族性遺伝症候群のLi-Fraumeni syndromeで骨肉腫が高率で発症する事が知られてるで。

他には放射線治療後や骨壊死等の治療の過程からの2次癌として発生する事もあるらしいな。予後に関しては各病院で出しているデータがあるんやけど、概ね次のような感じやな。

・限局性骨肉腫の5年生存率は60~80%

・肺転移ありの症例の5年生存率は20~30%

遠隔転移があるか無いかで大きく数字が変わってくるって事や。これは骨肉腫に限った話しやないねんけどな。他の悪性腫瘍でも同じやで。

骨肉腫のTNM分類

次に骨肉腫の病期分類や。UICC8版とAJCCを参考に作成してあるで。また病期分類表は組織学的悪性度があるかいつもとは違う形で作成してあるから注意してーな。

T分類T1T2T3
原発腫瘍の最大径が8cm以下原発腫瘍の最大径が8cm以上スキップ転移がある
N分類N0N1N3
所属リンパ節への転移なし所属リンパ節転移がある
M分類M0M1
遠隔転移なしM1a:肺転移あり
M1b:肺外にも転移あり
                            TNM-UICC/AJCC8版を参考に作成
骨肉腫TNM組織学的悪性度
StageⅠAT1N0M0grade 1
StageⅠBT2 T3N0M0grade 1
StageⅡAT1N0M0grade 2/3
StageⅡBT2N0M0grade 2/3
StageⅢT3N0M0grade 2/3
StageⅣAAny TN0M1aAny grade
StageⅣBAny TN1Any MAny grade
Any TAny NM1bAny grade
組織学的悪性度はFNCLCC分類を使用(悪性度はGrade1<Grade2<Grade3)
TNM-UICC/AJCC8版を参考に作成

ちなみに参考までに軟部腫瘍のバージョンも載せておくで。

T分類T1T2T3T4
原発腫瘍の最大径が5cm以下原発腫瘍の最大径が5cmを超えて10cm以下原発腫瘍の最大径が10cmを超えて15cm以下原発腫瘍の最大径が15cmを超える
N分類N0N1N3
所属リンパ節への転移なし所属リンパ節転移がある
M分類M0M1
遠隔転移なし遠隔転移あり
                                     NM-UICC/AJCC8版を参考に作成
悪性軟部腫瘍TNM組織学的悪性度
StageⅠAT1N0M0grade 1
StageⅠBT2 T3 T4N0M0grade 1
StageⅡT1N0M0grade 2/3
StageⅢAT2N0M0grade 2/3
StageⅢBT3 T4N0M0grade 2/3
StageⅣAny TN1M0Any grade
Any TAny NM1Any grade
組織学的悪性度はFNCLCC分類を使用(悪性度はGrade1<Grade2<Grade3)
TNM-UICC/AJCC8版を参考に作成

以上が骨肉腫の概要や。次に画像所見について見ていくで。

画像所見

骨肉腫の画像所見

次に画像所見についてや。

単純写真やと骨硬化型、溶骨型、混合型の3つに分類されて、1番多いのが混合型や。

境界不明瞭な骨破壊像、骨硬化像、Codman三角やhair-on-end、sunburst patternのような骨膜反応、軟部腫瘤が確認出来るで。Codman三角は、骨から離れて骨膜が形成される三角領域の事やで。

MRIやとT1強調で低信号、T2強調で不均一な高信号、造影後も不均一な濃染を認めるで。骨化の強い部分はT1強調、T2強調共に低信号を示すんや。

実際の症例

10代男性の症例や。持続する右肩痛の精査で骨肉腫と診断された例や。上腕骨から外側に進展する巨大腫瘍(7cm*8cm)を認めるで。

肩CT-骨肉腫
肩MRI-骨肉腫

鑑別診断のポイント

ユーイング肉腫

鑑別診断というよりここではユーイング肉腫について話しておくで。

ユーイング肉腫は小児や若者に発生する骨腫瘍(肉腫)の1つや。骨肉腫との違いは、病理学的な違いの他に骨肉腫は骨幹端部に発生するのが多いのに対して、ユーイング肉腫は骨幹部に発生する事が多いねん。

あとは30歳以上での発症は稀で、ほどんどが10代で発症してるのも違いやな。

ユーイング肉腫の概要
10代で発症する事がほとんで、30歳での発症は稀
骨肉腫は骨幹端部に、ユーイング肉腫は骨幹部に発生する
骨肉腫とは病理学的に違う
病期は限局例と転移例に分類されて予後も違う(転移例の方が予後が悪い)
ほとんど症状もなく痛みがあっても軽度の事が多い
発生頻度が高い順に骨盤、大腿、下腿、胸壁(四肢が53%、体幹47%)となっている
現在はユーイングファミリー肉腫と呼ばれており骨以外にも発生する事が分かってきている
腫瘍容積が200l以上、体幹部に近い、17歳以上、初期化学療法の反応不良が予後不良因子

8歳の男児の症例や。CD99も認めてユーイング肉腫の診断となった例や。右上腕の骨幹に単純写真やCTで透亮性骨破壊像と骨膜肥厚を認めて、MRIでは尺骨骨幹中心に軟部腫瘤を認めると思うで。

前腕CT-ユーイング肉腫
前腕MRI-ユーイング肉腫

ユーイング肉腫は小児悪性骨腫瘍の中やと、骨肉腫に次いで多い病気やから名前と好発部位だけでも覚えておくとええで。他に発生部位別の鑑別指標は次の通りや。

・骨肉腫 ⇒ 膝、上腕骨などの骨幹端

・軟骨肉腫 ⇒ 骨盤、胸骨、肩甲骨など体幹の中心に近い箇所

・骨巨細胞腫 ⇒ 橈骨遠位などの長管骨の骨端

・ユーイング肉腫 ⇒ 骨幹

まとめ

今日は骨肉腫についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

小児の骨悪性腫瘍で1番多い

骨幹端に発生する傾向がある

こんな感じやな。あまり遭遇する症例やあらへんけど、覚えておくべき症例の1つや。それなりに所見が派手やから、異常所見自体を見逃すって事はあらへんかと思うけど、鑑別診断でピックアップ出来るようにしとくんやで。

悪性腫瘍シリーズもそれなりの数をレクチャーしてきたから、今までのをマスターしてるとそれだけでも全然違うはずやで。

さて、今日はこれくらいにしよかな。

ほな、精進しいやー!