あ、よくよく考えてみるとスマホって凄ない?この小さなヤツで色んな事が出来んねんで。動画とかゲームとか、あとゲームとか!
いや、物心ついた時からスマホがあったので。。。
信じられへんかもしれんけど、昔は地図アプリなんてもんはあらへんかったからドライブとか遠出の時にはコンビニとかで紙の地図買っててんで。昔は車の座席の裏のポケットに紙の地図が入ってるのがデフォやってん。地図がかっこよく読めるだけでモテた時代もあったんや。
そんなワシの過去の栄光もスマホを作ったスティーブ・ジョブズにぶっ壊されてん。何してんねんって話しやけどな。ただ便利なのは間違いあらへん。そんなジョブズも膵臓癌で死んでもーたからな。偉大な人やったで。
せや、今日はジョブズのが罹患した膵臓癌についてレクチャーしてこかな。メジャーな癌やし、1回ここらで話しておいた方がええやろ。
もくじ
膵臓癌(pancriatic cancer)とは
膵臓癌の概要
膵臓癌は別名「サイレントキラー」とも呼ばれてんねん。初期には自覚症状が無い事から、発見時には進行してる事が多くて生存率が低いのが理由やで。何で生存率が低いかっていうと、膵臓の周りには血管やリンパ管が多くあって、数センチ程度の大きさでも転移をしている場合が多いからなんや。症状がなくて転移しやすい癌やねん。
主な自覚症状は背部痛や腹痛、黄疸なんかやねんけど、これはある程度症状が進行してへんと出てこーへんねん。逆に症状が出てる時は進行癌の状態の可能性大って事や。
ちなみに直近のデータやと年間4万人強が膵癌と診断されて、その内の8割が死亡してまうらしいねん。国立がん研究センターのデータやと、5年相対生存率は9%弱らしいで。中々エグい数字やな。
概要 |
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・中年以降に増加し男性の比率が高い ・周囲に血管やリンパ感があり容易に浸潤や転移を来すためサイレントキラーとも呼ばれている ・早期(Stage0、Stage1)で発見された数は全体の約2%程度というデータもある ・リスクファクターとして家族歴、遺伝性、糖尿病、肥満、慢性膵炎、喫煙、飲酒などがあると言われている ・膵腫瘍は上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍に分けられ、上皮性腫瘍は外分泌腫瘍、神経内分泌腫瘍、併存腫瘍、分化方向の不明な上皮性腫瘍などがある ・外分泌腫瘍が9割以上を占めて、その中でも膵管癌が最も多く全体の8~9割程度である ・膵臓癌の中でも予後が比較的良い粘液性膵癌もある |
膵臓の解剖と役割
膵臓は十二指腸の横にある横長な臓器で長さは約15~20cm程度、重さは100グラム程度や。部位によって頭部、体部、尾部に分けられるで。
主な役割は2つあって、外分泌機能と内分泌機能や。外分泌機能はアミラーゼやリパーゼといった消化酵素を作って膵管を経由して膵液ちゅー形で消化管へ分泌すること、内分泌機能はインスリンやグルカゴンなどのホルモンを作って血中へ分泌することや。インスリンなどはランゲルハンス島から分泌されるんやけど、これは膵臓全体に点在する形で存在してるで。このインスリンが産生されなくなったり、効きが弱くなったりした時に糖尿病になるんや。糖尿病になって放置してまうと、血管がダメージを受ける事で失明や、腎不全、四肢の壊死による切断なんかが起きてくるで。
膵臓癌の原因と治癒率
発生を高めるリスクファクターとして、糖尿病、肥満、喫煙、飲酒、過度のストレスなどがあって、他に慢性膵炎、IPMN、家族歴などと言われとる。膵炎なんかは食生活の欧米化で脂肪分摂取の増加が原因とも言われとる。つまり生活習慣病やな。ただこれはリスクファクターであって、原因やあらへん事に注意やで。ちなみに検査しててよく目にするIPMNは、膵癌に移行する可能性があるから定期的にフォローしとかなアカンやつやで。
5年生存率は国立がん研究センターのデータで以下のように出てるわ。Ⅰ期でも半数近い数字ってのは前立腺癌や乳癌と比較するとかなり低い数字ってのが分かると思う。
膵臓癌(5年生存率) | Ⅰ期:51.8% Ⅱ期:22.9% Ⅲ期:6.8% Ⅳ期:1.4% |
膵臓癌のTNM分類
次に膵臓癌のTNM分類や。これにはUICC8版と膵癌取扱い規約第7版があるで。両者で若干違うから注意が必要やで。どちらかというと膵癌取扱い規約の方が使われる傾向にあるって話しや。
T分類 | Tis | T1 | T2 | T3 | T4 |
膵臓癌(取り扱い規約第7版) | 癌が粘膜内にとどまっている | T1a:腫瘍が膵臓に限局し腫瘍最大径が0.5cm以下 T1b:腫瘍が膵臓に限局し腫瘍最大径が1cm以下 T1c:腫瘍が膵臓に限局し腫瘍最大径が2cm以下 | 腫瘍が膵臓に限局し最大径が2cmより大きい | 腫瘍が膵外に浸潤するが腹腔動脈、上腸間膜動脈に浸潤していない | 腹腔動脈、上腸間膜動脈に浸潤している |
膵臓癌(UICC8版) | 上皮内癌:粘膜固有層に浸潤 | T1a:腫瘍最大径が0.5cm以下 T1b:腫瘍最大径が0.5~1cm以下 T1c:腫瘍最大径が1cm~2cm以下 | 腫瘍最大径が4cm以下 | 腫瘍最大径が4cmより大きい | 大きさに関係無く腹腔動脈、上腸間膜動脈、総肝動脈に浸潤している |
N分類 | N0 | N1 | N2 | N3 | |
膵臓癌(取り扱い規約第7版) | リンパ節転移なし | N1a:領域リンパ節転移が1~3個 N1b:領域リンパ節転移が4個以上 | |||
膵臓癌(UICC8版) | リンパ節転移なし | 領域リンパ節転移が1~3個 | 領域リンパ節転移が4個以上 | ||
M分類 | M0 | M1 | |||
膵臓癌(取り扱い規約第7版) | 遠隔転移なし | 遠隔転移あり(領域リンパ節を越えるリンパ節転移ありを含む、腹腔洗浄細胞診陽性はM1に含めない) | |||
膵臓癌(UICC8版) | 遠隔転移なし | 遠隔転移あり(領域リンパ節を越えるリンパ節転移ありを含む) |
膵癌取扱規約7版 | N0 | N1 | M1 |
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T1 | ⅠA | ⅡB | Ⅳ |
T2 | ⅠB | ⅡB | Ⅳ |
T3 | ⅡA | ⅡB | Ⅳ |
T4 | Ⅲ | Ⅲ | Ⅳ |
UICC8版 | N0 | N1 | N2 | M1 |
---|---|---|---|---|
T1 | ⅠA | ⅡB | Ⅲ | Ⅳ |
T2 | ⅠB | ⅡB | Ⅲ | Ⅳ |
T3 | ⅡA | ⅡB | Ⅲ | Ⅳ |
T4 | Ⅲ | Ⅲ | Ⅲ | Ⅳ |
以上が膵癌の概要や。次に画像所見についてレクチャーしてくで。
画像所見
膵臓癌の画像所見
画像所見で重要なのは手術対象かどうかの判定や。もちろん膵癌の存在診断も重要なんやけど、治療方針が変わってくるからここの診断はより重要なんやで。膵癌取扱い規約7版に切除可能性分類が出てるから記載しとくわ。
切除可能性分類 | |
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R(Resectable):切除可能 | ・SMV/PVに腫瘍の接触を認めない、もしくは接触や浸潤が180度未満だが閉塞を認めないもの ・SMA、CA、CHAと腫瘍の間に明瞭な脂肪組織を認め接触や浸潤を認めないもの |
BR(Borderline resectable):切除可能境界 | ・BR-PV(門脈系への浸潤のみ) SMA、CA、CHAに腫瘍の接触や浸潤は認められないが、SMV/PVに180度以上の接触や浸潤、あるいは閉塞を認め、その範囲が十二指腸下縁を超えないもの ・BR-A(動脈系への浸潤あり) SMAあるいはCAに腫瘍との180度未満の接触や浸潤を認めるが固有肝動脈やCAへの接触や浸潤を認めないもの |
UR(Unresectable):切除不能 | ・UR-LA(局所進行) SMV/PVに180度以上の接触や浸潤、あるいは閉塞を認め、かつその範囲が十二指腸下縁を超えるもの SMAあるいはCAに腫瘍との180度以上の接触や浸潤を認め、かつ固有肝動脈やCAに接触や浸潤があるもの 大動脈に腫瘍の接触や浸潤を認めるもの ・UR-M(遠隔転移あり) 領域リンパ節を超えるリンパ節への転移を有する場合も含む |
この早期相で低吸収パターンがほとんど(約9割)なのに対して、残りの1割で早期相で等吸収、平衡相で高吸収を示すパターンもあんねん。等吸収の膵臓癌は高~中分化型が多いって話しやで。つまり基本は乏血性腫瘤やけど、例外もあるって事を知っておく必要があるって事や。
実際の症例
60代女性で腹部違和感とCEA高値の例や。CTで膵頭部に3cm大の腫瘤を認めて膵臓癌の診断となってるで。右上の画像でSMAの周りとCAに接する腫瘍を認めて浸潤が疑われる症例や。肝転移も認めてることから切除不能例と診断されてるで。
70代男性で膵体部癌の症例や。同部に3cm大の腫瘤を認められると思う。
60代女性で肝障害の精査で膵癌が見つかった例や。MRIの症例やけど膵頭部に3cm大の腫瘤を認めて精査で膵癌と診断されてるで。膵外に浸潤してるのが確認出来ると思う。これも切除不能例や。実際にBSEの方針となってるで。
鑑別診断のポイント
腫瘤形成性膵炎、自己免疫性膵炎
鑑別診断は腫瘤形成性膵炎や自己免疫性膵炎、悪性リンパ腫などや。所見別での鑑別一覧を載せておくで。
所見 | 膵臓癌との主な鑑別疾患 |
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びまん性膵腫大 | 急性膵炎、自己免疫性膵炎、悪性リンパ腫、白血病、転移、膵臓癌 など |
主膵管拡張 | 慢性膵炎、膵臓癌、総胆管結石、IPMN(SCN:serous systic neoplasm、MCN:mucinous systic neoplasmが膵管と交通する事は稀)、加齢 など |
石灰化 | 慢性膵炎、腫瘍内石灰化、血管の石灰化、副甲状腺機能亢進症 など |
充実性腫瘤 | 膵臓癌、腫瘤形成性膵炎、慢性膵炎 など |
多血性腫瘤 | 動脈相や膵実質相から造影される病変は膵内分泌腫瘍や腎癌、乳癌の転移 など |
嚢胞性腫瘤 | 単房性嚢胞、多房性嚢胞、膵管との交通があり膵管が拡張しているかの3点を確認する |
この中で重要な疾患としてIPMN(intraductal papillary mucinous neoplasms)があるで。IPMNは膵管内乳頭粘液性腫瘍とも言うんやけど、3つに分類されてその中で悪性化しやすいものがあんねん。ちなみに膵嚢性腫瘍の分類はこんな感じや。
膵嚢胞性疾患分類 | |
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膵嚢胞性疾患 | 【良性】:仮性嚢胞 漿液性嚢胞性腫瘍 【悪性リスク】:膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液生産膵腫瘍(MCN)、膵神経内分泌腫瘍(P-NET)、Solid pseudopapillaey neoplasm(SPN) |
せっかくやから、IPMNについてもう少し詳しく話していくで。IPMNは「粘液産生能を有して乳頭状増殖を特徴とする上皮より構成される膵管内腫瘍」と定義されてんねん。病名のままやな。上皮の異型度によって、腺腫、境界病変、癌腫に分類されてて、病変が出来る部位によって以下の3つに分けられてるで。この中で主膵管型は悪性の頻度が70%程度と言われてて手術の対象になってんねん。一方の分岐型は悪性の頻度は20%程度と言われてるが、体感やけど実際はもっと低いかもしれんな。
IPMNの特徴として膵臓を含む他の臓器に癌を併発しやすいと言われてんねん。ただ最近の調査では必ずしもそうやないっていうデータもあるで。いずれにせよIPMN、特に主膵管型を見つけたら要フォローが必要って事や。最後にIPMNの特徴をまとめておくで。
概要IPMN |
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・高齢男性に多い 膵頭部と体部に比較的多い ・主膵管型、分岐型、混合型に分類される ・主膵管型は悪性化する可能性が高い |
関連する悪性腫瘍
他にはこの辺も見ておくとええで。
まとめ
今日は主に膵臓癌についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。
非常に予後が悪い癌で早期にリンパ節転移を来す
画像診断は局所診断に加え、手術対象(血管や他臓器浸潤の有無)かどうかの判断も重要
基本的に「乏血腫瘍」だが1割程度で早期相で等信号を呈する膵癌もあるので、平衡相を撮影する事が重要
こんな感じや。最後はIPMNについても話したけど、それも合わせて覚えておくんやで。
腫瘤形成性膵炎との鑑別はどうやるんですか?
ええ質問やな。ダイナミック画像が重要や。膵炎は漸増性の造影パターンに加えて、腫瘤形成性膵炎は主膵管が腫瘤内部を走向する所見(duct-penetrating sign)、自己免疫性膵炎は腫瘤形成部に主膵管の狭細像を認める所見が特徴的と言われとる。合わせて覚えておくとええで。
さて、今日はこれくらいにしとこかな。
ほな、精進しいやー!