骨盤内感染症(pelvic inflammatory disease:PID)

自分、メラビアンの法則って知ってるか?

めらびあん?アルフィーの歌ですか?

骨盤内感染症(pelvic inflammatory disease:PID)とは

それは「メリーアン」や!

自分、昔の歌よく知っとるな。・・・

しかし今の例え、なかなかええで。うん、ええで。テンポも申し分あらへん。ワシ的に今月イチのヒットや。

ウデ上げたやんけ!

骨盤内感染症の概要

婦人科領域の急性腹症

さて、茶番はこれくらいにして、今日は骨盤内感染症についてレクチャーしてくで。

まず、婦人科領域における急性腹症の種類は何があるか知ってるか?

えーっと、卵巣捻転と、子宮筋腫捻転、異所性妊娠破裂とかですか。

せや。他に卵巣出血や卵巣腫瘍破裂、卵巣過剰刺激症候群、そして今日の内容でもある骨盤内感染症などや。

ほんで今回のメインでもある骨盤内感染症とは、読んで字の通り骨盤内臓器の細菌感染症の総称の事を指すんや。

骨盤内感染症(PID)の概要

骨盤内感染症とは、具体的には次のような状態の事を指すで。

  • 付属器の炎症
  • 卵管留嚢腫
  • 卵管卵巣膿瘍(tuboovarian abscess:TOA)
  • 骨盤腹膜炎

細菌感染で膣炎や子宮頚管炎を起こし、さらに子宮付属器炎へと上行感染して、そこから骨盤腹膜炎、敗血症にまでになるんや。

骨盤内感染症は、pelvic inflammatory diseaseの頭文字をとってPIDとも言われる事が多いな。

ちなみに生殖器からの感染の他に、虫垂炎や腹膜炎からの炎症波及によるパターンもあるんや。こっちは下行性感染とも言われとる。

感染理由から若い人に多いで。

骨盤内解剖
PIDの診断基準

日本産科婦人科学会ガイドラインには以下の診断基準が掲載されとる。

  • 必須診断基準 → 下腹部痛(圧痛)、子宮や付属器の圧痛
  • 付加診断基準及び特異的診断基準 → 体温が38.0度以上、WBC(白血球)増加、CRPの増加、画像診断で膿瘍が確認できる、ダグラス窩穿刺膿汁の吸引

ここでの画像診断は、CTやMRI、USになるで。

Fitz-Hugh-Curtis症候群

さらに覚えておかなアカンのがFitz-Hugh-Curtis症候群や。

これはPIDが上腹部、正確には肝臓周囲まで波及し炎症を起こしてまう事や。

PIDと肝臓周囲炎が合併した状態って事やな。右の季肋部痛が切っ掛けで発見される事も少なくないで。

特に最近はクラミジアの頻度が上がってきてる事もあるから、若年女性の急性腹症では鑑別に入れとく必要がある疾患や。

しかもクラミジアは半数以上は無症状とも言われてるしな。

PIDの原因

PIDの原因

原因としては、性行為、医原性、子宮内避妊器具挿入なんかやで。

起因菌としては、一般的なものと性行為感染で次のようなものがあるから、確認しておいてくれ。

  • 一般病原体 → グラム陰性桿菌(大腸菌やクレブシエラなど)、グラム陽性桿菌(ブドウ球菌、連鎖球菌など)、嫌気性菌(放射菌など)
  • 性行為感染 → クラミジア、トラコマティス、淋病、マイコプラズマ

このように原因(起因)菌は多岐に渡るんやで。

臨床症状と治療法

PIDの臨床症状

臨床症状は、下腹部痛や子宮付属器周辺の圧痛、発熱、炎症反応などで、これらがあればPIDを疑う必要があんねん。

ダグラス窩膿瘍などを形成しやすいとも言われとる。

このあたりは診断基準とリンクしているな。

ただ右下腹部痛の場合は虫垂炎と紛らわしい場合があるから、患者エピソードを確認することも重要やで。

PIDの治療法

治療法は投薬治療がメインで、抗菌薬が使われるで。

PIDは不妊症や異所性妊娠の原因にもなったりすんねん。せやから早期に診断して治療開始する事が重要や。

基本は外来治療なんやけど、進行して腹膜炎までになっている場合は、入院治療することもあって、抗菌薬に抵抗性で膿瘍を形成している場合は外科的にドレナージをする事もあるらしいな。

ちなみに膿瘍形成する場合は、グラム陰性桿菌や、嫌気性菌が多いとの話や。

画像所見

骨盤内感染症の画像所見

PIDの画像所見

続いて画像所やけど軽微な段階だとCTやMRIでも指摘が難しい事が多いで。まずは次の内容を確認してくれや。

  1. 子宮内膜炎 → 子宮腫大や内膜肥厚など
  2. 卵管炎   → 卵管壁の肥厚と造影効果、周囲の脂肪組織濃度上昇
  3. 卵管嚢腫  → 卵管壁の肥厚と造影効果、拡散強調で高信号、ADCで低信号
  4. 卵管卵巣膿瘍→ 壁の厚い多房性嚢胞と造影効果、嚢胞壁の最内側がT1で高信号
  5. Fitz-Hugh-Curtis症候群 → 肝皮膜の造影効果(右葉外側中心)
子宮内膜炎

PIDは初期は画像診断が難しい事が多いんやけど、ある程度進行してくると子宮内膜炎なんかを反映して子宮腫大や子宮内膜肥厚、子宮内腔の液体貯留なんかが指摘出来るようになるで。

卵管炎

進行して卵管炎にまでなると卵管壁の浮腫や肥厚から卵巣腫大と造影効果増強、そして膿瘍形成や付属器領域の多房性嚢胞性腫瘤を形成するようになるから画像診断でも分かるようになるな。

卵管卵巣膿瘍

卵管卵巣膿瘍の場合は、膿瘍壁の最内層の微小出血を反映してT1で高信号になる事が特徴的やで。

Fiz-Hugh-Curtis症候群

Fitz-Hugh-Curtis症候群はDynamic-CTの早期相で肝被膜の造影効果を認めんねん。肝被膜は右葉外側中心に多いで。

慢性期になると後期相でも造影効果を認めるんやけど、急性期の診断はDynamicが必要やから、この疾患を鑑別に挙げられるかどうかやな。

早期診断のポイントは季肋部痛の時にFitz-Hugh-Curtis症候群を疑えるかどうか、そしてDynamic撮影が出来るかどうかやな。

実際の症例

実際の画像を見ていこか。

各種シーケンスで右卵巣に膿瘍を認めるで。特に拡散強調画像で高信号なのが特徴的やな。

骨盤MRI 2方向 骨盤内感染症
Case courtesy of Ian Bickle, Radiopaedia.org
骨盤MRI 骨盤内感染症
Case courtesy of Ian Bickle, Radiopaedia.org

別症例や。

この症例も付属器に膿瘍形成を認めるで。

腹部CT 骨盤内感染症
Case courtesy of Fakhry Mahmoud Ebouda, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断についてやけど、特に臨床症状が虫垂炎と似る事が多いから、まずはここの鑑別が重要やな。

他にはS状結腸憩室炎の可能性も考慮する必要があるで。

他の急性腹症で臨床症状が似る場合があるのは、次のようなものがあるな。

放射菌症

他にIUD関連疾患として放線菌症があるのを知っておくんや。

放射菌症は放射菌なんかで引き起こされる限局性、または血行性の慢性嫌気性菌感染症となっとる。

放射菌は普段は口内や腸粘膜におんねんけど、それが何らかの原因、例えば傷なんかで骨盤に感染した時に発症すんねん。

罹患者の多くが子宮内避妊器具の長期使用歴があるで。

ちなみに、嫌気性っちゅーのは、酸素を必要とせんって事やで。

腫瘤が浸潤性やから悪性腫瘍との鑑別がしばしば問題になるんや。

まとめ

さて、今日は骨盤内感染症をレクチャーしたで。ポイントは3つや。

骨盤内感染症(PID)は若年性の女性の急性腹症では頻度が高い

子宮や付属器に細菌感染が波及し、膿瘍形成にまでなる事がある(初期では画像上では分からない事も多い)

診断や治療が遅れると不妊や異所性妊娠の原因にもなる

こんな感じや、若年女性の急性腹症の場合は骨盤内感染症を考慮することが重要やで。

婦人科領域の画像診断はあくまで補助的なものであるってのを講演で聞いた事があるわ。

つまり画像診断だけだと分からないものも多くあるって事やな。

また、若年女性で右季肋部痛の時にFitz-Hugh-Curtis症候群も疑えるかどうかも重要やで。

他に早期相で肝被膜に造影効果を認める疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、上部消化管穿孔、穿孔性胆嚢炎、結核性腹膜炎なんかがあるからな。

ちなみに、メラビアンの法則やけど、

これは言葉と感情に矛盾があった時に何を優先させるかの法則やねん。その中で視覚情報が55%という割合なんやけど、

簡単に言うと、「楽しい」って言ってても顔で笑ってなければ、視覚情報の顔の情報が優先されるって事や。

つまり、絶対ウソやんけ!ってな形になる訳やな。

気ぃつけーよ。言葉と表情が一致しないとか結構あるあるやからな。

最後は余談になってもうたけど、ほな、精進しいやー!