評価人事は重要項目
評価のズレ
なぜあの人が出世しているのか?なぜあの人が自分より高評価なのか?上にゴマをすっているだけだけじゃないか!
自分は同期よりも結果を出している自負がある。少なくとも負けてはいない。でもアイツの方が出世している。むしろあの上司こそ仕事が出来ないじゃないか。何でそんな上司に俺が評価されなきゃいけないんだ。あー、なんかイライラしてきた。飲んで憂さ晴らしするか!
サラリーマンあるあるです。会社員をしていると誰し1度は思った事がある事ではないでしょか。これは上司と部下(当事者)との評価にズレがある場合に起きます。そして大抵の場合は、埋まる事がない溝でもあります。
理想の評価方法
社員にとって評価は重要な項目の一つです。人が生きていくためにはお金が必要なので、結果を出したら評価されたいと思う事は当然の事です。売り上げ(目標)を達成すれば、それに応じた給与や賞与が得られる。基本的に会社と社員はこのような信頼関係によって雇用契約を結んでいます。
理想は好業績を出した全員に対して高評価をする事です。しかし人件費にも限りがあるので、そういう訳にもいきません。そのため同期内でも差がついたりする事が起きます。
今期はこれだけの実績が出せた。これくらいの評価は貰えるだろう。しかし実際には思ったほどの評価ではなかった。
これが1回目であれば「次はちゃんと評価してくれるだろう」とも思ったりもしますが、複数回続くと失望に変わります。ミクロとマクロ
このように社員はミクロの視点でしか見てませんが、役職者(評価者)はマクロの視点で見なければなりません。これが冒頭のような事が起きる原因の1つです。役職者はこのギャップを本人と話して埋める必要がありますが、実際にはそうなっていないケースも多いようです。これは会社にとってあまり良い状態とは言えません。
また給与という事については下記の記事で記載していますので、興味があれば読んでみて下さい。
現場のリアル
では企業(評価者)のほうからも見てみましょう。企業側から見ると若手の時期が一番コスパが良い時です。
病気のリスクも少なく、家族(両親)の介護もまだ。元気で多少の無理は利く年齢。独身な事も多く時間の制限も無い事が多いです。一方で若手(半人前)という事実があるので、賃金も安く設定出来ます。もちろん仕事を覚える期間は必要ですが、それを考慮しても割安な賃金で頑張ってくれるゴールデンタイムなのです。
コスパが逆転する年代
ちなにみこれが40代後半になると逆転します。支払われている賃金に対して能力が見合ってこなくなる人が出始めます。これが若手から見る働かないオジサンの正体です。このような人は今までのプライドが邪魔をして、古い固定価値観を持っている事が多く、柔軟な考え方が難しい年代でもあります。つまり時代に合わせて変化できないので、若手が頑張った稼ぎで給与を貰っている状態なのです。
今時の若手はシビアです。彼らに自分の将来を重ねます。そして将来が無いと判断したらすぐに辞めます。何故なら他の仕事の選択肢が多くあるからです。それほど若さというのは大きな武器なのです。
このように評価のズレが起き放置すると、良いことはありません。なので対話によってその溝を埋める必要があるのです。
評価のギャップが生まれることでの問題点
行動をおこしてくるだけまだマシ
このように当事者と評価者の間にギャップが生まれると、中には実際に説明を求めてくる社員もいます。
このような社員は評価者からすると一見、面倒に見えますが、実は行動に移してきている分、まだありがたいのです。行動に移すという事はまだ会社に期待しているという裏返しでもあります。ここで対策を打てればまだ十分にリカバリー出来ます。
評価ギャップを放置すると起きること
人は期待しなくなったら(失望したら)リアクションすら起こしません。起こしたところで何も変わらないからです。そうなるとどうなるのでしょうか?
社員は積極的に仕事をしなくなります。考えてみれば当たり前の事ですね、結果を出しても評価に繋がらないからです。
中には上司を手玉にとって上手く仕事をする人もいますが、そのような人はごく少数なのと、そういう機転が利く人は早めに会社に見切りをつけて転職していきます。つまりぶら下がり社員(働かないオジサン社員)が多くなります。この状況は会社にとっても個人にとっても非効率でしかありません。
評価ギャップを放置すると、
- 失望が続くと行動を起こさなくなる
- 出来る人から転職していく
このような事がおきてくるのです。
評価ギャップが生まれる原因
相対評価と絶対評価
評価ギャップが生まれる原因には、評価方法が相対評価である事が考えられます。もう少し詳しく言うと、当事者は絶対評価で考えていて、評価者は相対評価で行っている事に起因します。評価方法には相対評価と絶対評価の2つがありますが、双方でメリットとデメリットがあります。なのでどちらが良いとは一概に言えず、組織の方向性やカラーによって適性が違ってきます。ここでの問題点は双方の評価基準が一致していないという事なのです。
絶対評価のメリットとデメリット
絶対評価は目標に対して個人が上げた実績についてS~Cの評価を割り当てる方法です。組織内の順位に関係がなく、結果に対して評価するので理論上は全員S評価という事もあり得ます。この時の目標は個人の能力や過去の実績で決められ、目標を大幅に達成すればS評価、未達ならC評価になります。
メリット
メリットは評価基準が明確なので不満が生まれにくい事です。評価軸が自分なので、上で述べたとおり目標に対して結果を出せば全員がS評価という事もあり得ます。これは働く側からすると納得しやすいですね。
デメリット
一方でデメリットもあり、全員が共通の尺度で評価されない事で不満が出やすい事です。
例えば、今年と昨年、共に2億の売り上げだったので評価は現状維持のBとなった人に対して、昨年の売り上げが300万で今年度が900万、300%アップなので評価はSの人がいたりします。
もちろん能力や基本給の差はありますが、金額的に見ると前者の方が圧倒的に貢献している一方で、評価はそういうふうにはならなくなってしまうのです。
相対評価のメリットとデメリット
一方の相対評価はグループ(組織)の中で予めS~Cの評価数が決まっており、そこに対象者を当てはめていく方法です。評価軸が他者になるので必ずS~C評価の人が出ます。
メリット
このメリットは評価軸が他者になるので評価者の主観を除く事が出来る点です。他にも人件費の総額のイメージがしやすというのもあります。
デメリット
デメリットは比較対象が過去の自分ではなく他者になるので、能力の低い人は結果が出しづらいという事です。上記の例でいうと、2億がS、900万がCになります。つまり能力が低い人のプロセスは考慮されにくいのです。
評価基準はブラックボックスになりがち
相対評価になると評価に対する説明も難しくなります。対象が他人になるからです。
上記の例で言うと、対前年比で300%は相当努力しなければ達成出来ません。しかし結果としては低評価になります。評価ルール上、これは仕方が無い事なのですが、この理由を説明するにあたって伸びしろとか、評価軸が他人なのでと言っても納得してもらえる事は希なのです。
表面上は納得したような雰囲気でも、内面では納得していません。
絶対評価と相対評価、これが双方で違う事がギャップが生まれてしまう原因なのです。
今の企業はどちらの評価方法が多いのか?
以前と比べると絶対評価を導入する企業も増えてきたと聞きます。しかしまだまだ相対評価で行っている施設が多いのではないでしょうか?
参考までに、我々の施設では基本的に相対評価で、項目により相対評価を取り入れている形でバランスを取っています。
やはり企業にとって人件費というのは大きなものなので、ここがコントロール出来るというのは大きなメリットです。ただ相対評価が多い以上、上記の例のように前年比300%を出しても評価が伴わない事も出てきてしまうのです。
評価ギャップを解決する方法
ギャップ解決方法について
ではどうやったら解決出来るのでしょうか?方法はあるのでしょうか?次からは自社の例も織り込みつつ有効だった内容を記載していきます。
前提として会社の評価が相対評価で行われているという形で話していきます。
ギャップ解決方法 その1
まず1つ目として事前の評価基準や方法を十分に共有しておく事です。
そもそもの原因がお互いの目標や結果への評価方法の違いです。この違いを埋めるためには、最初の段階で評価方法を明確にして、共通認識にしておく必要があります。どんな結果を出せば希望の評価が得られるのかを共有しておきましょう。上記のような2億と900万の例は極端ですが、たいていは同じような能力の人達の場合が多いと思います。希望の評価に対して必要な目標値を設定し、定期的に進捗確認と現状確認を実施する。
この定期的にというのがポイントで、評価は半期や1年といった長期スパンなので若手ほど忘れます。そのため期末の面談で始めて現状を知り、巻き返しが難しい状況になっている事で不満が生まれます。
定期的に面談をして経過を知る機会を作れば、挽回する期間も十分にあります。そして小さな課題を設定したりして目標達成出来るようにフォローも入れます。ここまですれば結果に対して不満が生まれません。双方の評価項目がリンクしていると尚、良いですね。
「俺、A君を〇〇まで育成する事を目標課題にしてるから、どうしてもここまでマスターしてもらう必要があるんだよ。だから協力してくれ。」
「先輩、マジすか。分かりました。その代わり、ちゃんと教えて下さいね。」
達成レベルを共有する事で、もしかしたら上記みたいな会話が生まれチーム内のコミュニケーション生まれる起点になるかもしれませんよ。
ギャップ解決方法 その2
2つ目ですが、そもそも評価方法を変えてみる案もあります。
つまり相対評価から絶対評価に変更してみるのです。これは規定を変える事になるのでハードルが高いかもしれませんが組織のカラーによっては効果が高いかもしれません。
相対評価は基本的に同じグループやチームで実施され、その中には能力の高い人も低い人もいます。問題は、他と比較してアウトプットのレベルは低いけれども、努力して対前年比では結果を出している場合です。評価軸が他人なので、どうしても低評価になってしまいます。これではモチベーションも続きません。また優秀な人のポテンシャルが十分に発揮出来ない可能性もあります。これも評価軸が他人だから起きる事です。であれば、優秀な人はどんどん難易度が高い業務にチャレンジし、経験を詰んでもらうような形にしたらいいのではないでしょうか。そして結果を出せればそれに見合った報酬が得られる。
そちらの方が企業や個人にとってもwinwinの関係になると思います。
実際のケース(自社の例)
私たちの施設では、以前は相対評価で行っていました。その時に上記のようなケースに直面し、不本意ながらもC評価を付けた事があります。
部下としては、当然納得できない事なので説明を求めにきた人もいましたが、「気持ちは分かるが、そういうルールだから」というしかありませんでした。今思えば言い方を変えたり面談したりと方法はあったと思いますが、当時はそこまで考えが回る事もなく、辞める人が多くいました。
その後、同じ事の繰り返しは辞めようと思い、退職率を下げるためのプロジェクトを上司と相談して立ち上げ、更に上層部も巻き込んで評価制度も変更しました。(なかなか大変でしたが100人程度の企業で上層部と距離が近いというのもあったと思います)
大きな項目を2つに分け相対評価の項目と絶対評価の項目を作った結果、以前と比較して評価が理由で退職していく人は減りました。これに加え、目標設定の際に評価方法を共有する事も実施しています。
大切なのは評価方法を納得するまで話し合う事だと思っています。全ての原因はこれで、お互いが違う取扱説明書を読んで組み立てているようなものです。取扱説明書を共有しましょう。
個人的には絶対評価の方が良い
また個人的には絶対評価が良いと考えているのですが、これだとプロセスが評価対象外になってしまうので注意が必要です。プロセスの評価も時には必要です。プロセスに関しては評価に直結するというよりは、承認を満たすようなイメージで取り組むといいかもしれません。
実際に自社の例だと、絶対評価が7~8割、相対評価が2~3割程度で総合判定しています。
絶対評価の良いところは、個人の判断が入る余地が少ない事です。ここが大きいと上司のお気に入りという事で、評価が高くなるという事態が起こりえます。その人物がちゃんと結果を出していれば問題ありませんが、結果を出していないにも関わらず社内政治で高評価を得るようになると不公平感が発生します。
定期面談の重要性
また評価について定期的に面談をする事をお勧めします。年度末や半期に1回の評価面談だと、評価ギャップが判明しても挽回できる期間が短い事が多いです。これを毎月くらいのペースで面談を実施し、今の進捗度と目標に対しての課題を共有しておけば、それほどギャップが生まれる事もなく、また軌道修正も簡単に済みます。
定期面談(1on1)についてはこちらの記事でも記載しています。是非読んでみて下さい。
コミュニケーションについてはこちらにも記載しています。
まとめ
納得できる評価のために
お互いの目標が共有されていて、同じ目標に向かって仕事をしている。
これほど理想的な状態はありません。そのためには評価制度は重要な要素です。全員の希望を満たすような理想のルールがあれば別ですが、そんなルールはありません。なので事前のルール共有が重要になります。スラムダンクの世界にドラゴンボールを持ち込んでも評価できないのです。
まずは事前の共有で評価ギャップが生まれる原因を潰しておく。目標値の設定と結果を定期的に確認する場を作る。これだけでも大きく違います。定期的に面談をする事で、何に躓いているのか、何が課題なのかの現状把握も出来ます。そしてコミュニケーションが増え、結果的にグループが良い方向に進むきっかけにもなると思います。
今後はAIで評価する時代が来るかもしれません。そちらの方が個人の好みという説明不可能な要素を排除出来るからです。そうなると上司の役目は適切な目標設定とその軌道修正に集約されるのかなと思っています。つまりチームの結果を出させる事ですね。
ぜひ皆さんには評価方法を通じて、チームで結果が出せる管理職(マネージャー)になってもらえればと思います。