今日は感染性の肺炎についてや。
まず最初に言っておくで。
一言で肺炎と言っても原因によっていくつものパターンに別れとる。
加えて肺炎以外の疾患でも同じような所見をする事も多くて、放射線科医でも診断に苦慮する事も多いんや。
つまり簡単にはいかへんって事や。
ほな、早速やっていくで!
了解です!
感染性肺炎(pneumonia)とは
肺炎の概要
まず肺炎の概要やけど、肺炎と名のつくもので感染性肺炎や間質性肺炎、急性好酸球性肺炎なんかがあんねん。
これら全部やるとキリが無いから、今回は感染性肺炎に絞って話していくで。
感染性肺炎とは
まずは肺炎とはなんぞや?からや。このあたりはメジャーな疾患やから、なんとなくでもイメージは湧くと思う。
感染性肺炎は、菌やウィルスの感染によって、肺に炎症が起きた状態の事や。飛沫感染なんかが多いで。
ストレスや他の要因で、免疫力が低下してると発症する確率が上がってくるで。
肺炎は年間7万人近くが死亡しているなんてデータもあるし、死因で5位にもランクされているほどの病気なんや。
同じ肺炎と名がついているものでも、間質性肺炎や好酸球性肺炎、薬剤性肺炎とは違うから注意が必要やで。
感染経路による肺炎分類
次に肺炎の分類や。これは感染経路による分類と原因菌による分類があるで。

まずは感染経路による分類からや。成人肺炎診療ガイドライン2017によると、肺炎は次の3つに分類されてとる。
- 市中肺炎 (community acquired pneumonia:CAP)
- 院内肺炎(healthcare-associated pneumonia:HAP)
- 医療、介護関連肺炎(nursing home-healthcare associated pneumonia:NHCAP)
順に解説してくで。
市中肺炎 (community acquired pneumonia:CAP)
市中肺炎は基礎疾患を持ってない人が発症する肺炎で、起因病原体は肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、マイコプラズマなんかが多いと言われるで。一般的な感染経路やな。
早期に診断して適切な治療を開始すれば完治が期待できるパターンや。
院内肺炎(healthcare-associated pneumonia:HAP)
院内肺炎は、「入院48時間以降に新たに発現した、基礎疾患を有する患者の肺炎」と定義されてて、起因病原体は黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎桿菌なんかや。
人口呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)も含まれてて、これは気管挿管や人口呼吸器開始48時間以降に発症した肺炎や。緑膿菌やMRSAが原因菌で、予後が悪い事で知られてるで。
免疫力が低下している場合が多くて、VAPに限らずHAPは予後が悪いと言われとる。
医療介護関連肺炎(nursing home-healthcare associated pneumonia:NHCAP)
医療介護関連肺炎は、「市中肺炎と院内肺炎では分類できない中間に位置する肺炎群」となっとる。
誤嚥性肺炎なんかが該当するで。
原因菌による肺炎分類
また肺炎は原因菌によっても分類されてんねん。大きく分けて次の3つや。
- 細菌性肺炎
- ウィルス性肺炎
- 非定型肺炎
これも順に見ていくで。
細菌性肺炎
まず細菌性肺炎やけど、原因はその名の通り細菌感染や。
肺炎球菌がメインで、他にブドウ球菌やグラム陰性桿菌なんかがあるで。ほとんどそのへんにある細菌やな。
これらが体内に入った時に体の抵抗力や免疫力が弱まってると発症すんねん。せやから高齢者にも多いわ。
飛沫感染や接触感染が主なルートや。細菌やから抗生物質が良く効くで。
臨床症状としては、発熱や咳、息切れ、倦怠感なんかや。免疫不全や慢性の臓器障害、喫煙歴などが重症化のリスクファクターとして知られてるで。
ウィルス性肺炎
ウィルス性肺炎はインフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、水痘ウィルス、サイトメガロウイルスなんかやな。成人の場合はインフルエンザウィルスが最多やで。感染経路は飛沫や接触感染や。
またインフルエンザ肺炎は3つに分類されてとる。覚える必要はあらへんけど、こんなのもあるんやな程度に知っておくとええで。
- 純ウィルス性肺炎:インフルエンザウィルスによって発症した状態
- 2次性細菌性肺炎:インフルエンザウィルス肺炎治療後に損傷した気道上皮から細菌が感染し再度肺炎を発症した状態
- ウィルス/細菌混合性肺炎:インフルエンザウィルス肺炎と細菌性肺炎が混在している状態
ウィルス性肺炎については、こっちでも取り上げてるで。
非定型肺炎
そもそも非定型肺炎ってのは、一般的な細菌以外の微生物が原因で発症する肺炎の事や。具体的には、マイコプラズマやレジオネラ、クラミジアなんかや。
感染経路は飛沫感染が多いな。マイコプラズマは比較的、若い人にも発症する事が知られてるで。
またマイコプラズマは、激しい咳(特に夜間)が続くという特徴があんねん。若くて、長く続く咳嗽があったら、マイコプラズマ肺炎を疑うんや。
ちなみにこれらはマクロライド系、ミノサイクリン系などの抗菌薬が効くんやけど、一方の細菌性肺炎は抗生物質が有効やねん。つまり原因によって治療方法が変わってくるんや。
病理学的な分類
参考までに病理学的にも分類が可能やで。むしろ画像診断ではこっちの方が重要なくらいや。
- 肺胞性肺炎
- 気管支肺炎
- 間質性肺炎
特に肺胞性肺炎と気管支肺炎については、画像所見でも重要やから後で話すで。
他(間質性肺炎、好酸球性肺炎)
ちなみに間質性肺炎は、間質がびまん性炎症や線維化などで起きる肺炎や。
ARDSに移行する事もある予後が悪い疾患も含まれてるで。
好酸球性肺炎は喫煙や薬剤の過敏性反応でおきる肺炎や。急性は喫煙開始時などで見る事があるな。
これについては、以下の記事を見てくれや。
肺炎の重症度分類
肺炎の重症度分類にはいくつかあんねん。A-DROPシステム、CURB-65システムなんかがあるで。
今回はA-DROPシステムを記載しておくわ。
- A-DROPシステム
- A(Age):男性70歳以上、女性75歳以上
- D(Dehydration):BUN21mg/dl以上、または脱水有り
- R(Respiration):SpO2が90%以下(PaO2が60torr以下)
- O(Orientation):意識変容あり
- B(Blood Pressure):血圧(収縮期)が90mmHg以下
- 重症度判定
- 軽症:上記5項目のいずれも満たさないもの
- 中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの
- 重症:上記項目のうち3つを有するもの
- 超重症:上記項目の4つ、または5つを有するもの ただし、ショックがあれば1項目のみでも超重症とする
こんな感じやで。参考までにな。
肺の解剖
まずは肺の解剖からや。このあたりはサラっとにするで。詳しくは別で解説してるから、そっちを参考にしてな。

画像所見
肺炎の画像所見
次に画像診断やけど、肺炎のやっかいなところが、同じ病原体でも患者の免疫状態などによって違う画像所見を呈したりすんねん。
画像所見で、肺胞性肺炎(airspace pneumonia)と気管支肺炎(bronchopneumonia)に分類する方法があって、これが重要やねん。
肺胞性肺炎は大葉性肺炎、気管支肺炎は小葉性肺炎とも呼んだりするわ。これらに肺膿瘍も加えてもええで。
肺胞性肺炎
肺胞性肺炎は非区域性の分布をするで。簡単に言うと、気道に沿わずに広がるパターンの事や。
病原体が肺胞に達した後に発症して、炎症性浮腫によって肺胞腔内に滲出液が溜まるんや。その後、滲出液がKohn孔を介して横方向に広がる為にそう見えんねん。
せやから画像所見的には浸潤影で、気管支区域を越えて非区域性の分布になるで。
加えて内部に開存した気管支透亮像を認める事もあるし、滲出液が充満しきれていない箇所はすりガラス影を示すで。
これが肺葉全体に広がると大葉性肺炎になるんや。
気管支肺炎
次に気管支肺炎やけど、小葉中心性粒状影・小葉性陰影が多発性に認められるで。数㎝大のコンソリデーションが区域性、斑状分布に混在するのが特徴や。
病原体が終末細気管支などの気道粘膜を障害した際に、周囲の肺胞領域に炎症細胞が広がんねん。
この時に滲出液が出るんやけど、その滲出液が少ないために小葉中心性の粒状影として描出されるんや。
進行すると、これらが融合して浸潤影や気管支壁肥厚を示す事も多いで。さらに進展すると小葉全体に波及し小葉性肺炎となんねん。
気管支肺炎は胸膜直下に病変があらへんのも特徴や。
他には小葉中心性分岐状構造(tree-in-bad appearance)なんかの所見もあるで。
tree-in-bad appearanceってのは、本来見えへん呼吸細気管支が分岐状に明瞭化する所見や。これも肺炎を疑う所見の1つとも言われとる。
肺膿瘍
ちなみに細菌性肺炎では肺膿瘍になるパターンもあるんや。化膿性の病原菌が、肺実質へダメージを与えた結果、壊死性空洞病変になんねん。ちなみに空洞化するのは壊死組織が排出されるためやで。
この空洞内に膿が溜まる事もあって、それが画像所見になると液面形成を伴ったり、また膿胸を合併する事もあるで。
各種画像所見のまとめ
画像所見 | 起炎菌 | |
---|---|---|
肺胞性肺炎 | 浸潤影 気管支透亮像 辺縁にすりガラス影 非区域性 | 肺炎球菌 肺炎桿菌 レジオネラ |
気管支肺炎 | 小葉中心性粒状影 多発小葉陰影 区域性 | インフルエンザ桿菌 黄色ブドウ球菌 マイコプラズマ |
肺膿瘍 | 空洞形成 内部壁は平滑 液面形成を伴う事あり | 黄色ブドウ球菌 肺炎桿菌 |
実際の症例
さて、実際の症例を見ていこか。
40代男性で発熱と咳があって、CRPとWBCの上昇を認めて精査となった例や。
浸潤影と周囲にすりガラス陰影のコンソリデーションを認めるで。肺胞性肺炎疑い例や。

別の例や。区域性のコンソリデーションで気管支透亮像を認めるで。気管支肺炎疑いや。

こっちは小葉中心性のコンソリデーションの例で、気管支肺炎やで。tree in bud が確認出来るな。

右S6に小葉中心性の陰影や。

鑑別診断のポイント
鑑別診断について
鑑別診断で一番手にあがるのが肺癌との鑑別や。中には肺炎と肺癌の両方が存在してるのもあるから注意や。
他に重要な点としては、小葉中心性陰影を認めたからといって、感染性肺炎とは限らないって事や。小葉中心性の陰影を呈する疾患で他には、膠原病関連、喫煙関連、過敏性肺臓炎なんかがあるで。
ただ最初で言った通り、肺疾患は免疫状態や他の条件で画像所見が変わってくる事もあんねん。ここが肺炎診断の一筋縄ではいかんとこや。
所見をスルーするってことはあらへんと思うけど、それが何なのかを推察する能力も必要やで。
まとめ
今回はボリュームが多いねんから、ポイントは簡単に3つにまとめるで。
画像診断では、気管支肺炎と肺胞性肺炎の鑑別が重要
小葉中心性陰影、区域性コンソリデーション等が気管支肺炎を疑う代表的な所見
浸潤影 気管支透亮像 辺縁にすりガラス影 非区域性等が肺胞性肺炎を疑う所見で、肺炎球菌、クレブシエラ、レジオネラなどが代表的
こんなところや。肺胞性肺炎、気管支肺炎で病変の広がり方が違うからな。そこも覚えておくとええで。
基本的に呼吸細気管支以降はCTで見えへんねんけど、これが見える時は何かしらの異常があって、感染症の疑いが大きいって事も言えるで。
肺炎と一言で言ってもその内容はかなりボリュームが多いねん。ただそれぞれに特徴的な画像所見があったりするから、地道に覚えていくしかないんやで。
次回は間質性肺炎について話していこかな。
ほな、精進しいやー!