肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PE)

エコノミークラス症候群ってあるやん?
ほな、ビジネスやファーストクラス症候群ってあらへんの?

無いんじゃないですか・・・?

なんであらへんのやろな? 前からちょっと疑問やってん。
まぁええか、レクチャー始めるで。
今日は肺血栓塞栓症や。

肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PE)とは

肺血栓塞栓症の概要

肺血栓塞栓症の概要

肺血栓塞栓症とは、肺動脈に血栓(塞栓子)が飛んできて閉塞させてしまう病態の事やで。

血栓が大きいと肺動脈を閉塞させて突然死の原因にもなったりすんねん。

じゃあこの血栓はどこから飛んでくるかというと、下肢静脈からが多いんや。別名エコノミークラス症候群とも言われてるな。むしろこっちのほうがメジャーかもしれん。

肺動脈を塞栓してまう事で、呼吸困難や胸痛、最悪のケースやと急性心不全にまでになるヤツやねん。

おおよそやけど、年間で50~60人程度が発症しているというデータがあるで。

D-dimer

診断するにあたって、D-dimerという数値があんねん。

D-dimerは、かなり感度が高い代わりに特異度は低いねん。せやから、この値が正常であれば肺血栓塞栓症を否定する事が出来るんや。

D-dimarが上昇するのは深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓症(PE)なんかの血栓を形成する疾患で、だいたい500ng/ml以上で陽性の判定になんねん。

加齢によっても上昇する事が知られてるから注意やで。

重症度分類

他には重症度分類もあるから話とこか。以下の通りや。

このへんは技師はんは覚えとく必要は無いと思うねんけど、知ってるだけで役に立つ事があるかもしれへん。

  • collapse型:心停止、あるいはそれに近い状態
  • massive型:血行動態不安定症例(ショック、あるいは収縮期血圧が90mmHg未満、あるいは40mmHg以上の血圧低下が15分以上続く場合)
  • submassive型:血行動態安定かつ心エコー上、右心負荷がある症例
  • non-massive型:血行動態安定かつ心エコー上、右心負荷がない症例

原因

肺血栓塞栓症の原因は、心臓や下肢静脈から飛んでくる血栓や。

特に下肢の深部静脈血栓が多いな。90%以上の塞栓源が下肢深部静脈血栓とも言われとる。

長時間同じ体勢でいると血流の循環が悪くなって静脈に血栓が出来る事が知られてんねん。これが運動(歩行)する事で血栓が剥がれて、血流に乗って肺動脈までに飛んで塞栓してまうんや。

肥満や妊娠、悪性腫瘍、長期臥床などがリスクファクターと言われてるで。

現場やと肺血栓塞栓症を見つけたら(疑ったら)、深部静脈塞栓症も一緒に検査する事も多いで。

血栓が出来る仕組み

臨床症状と治療法

肺血栓塞栓症の臨床症状

臨床症状は呼吸困難や胸痛、重症例やとふらつきや失神、最悪の場合、心肺停止にまでなったりするで。

せやから検査で偶然見つけた時は、ダッシュで医師に知らせなアカンやつや。

治療法

治療法は投薬治療(血栓溶解など)やカテーテルでの血栓除去なんかやな。

早めに血栓を取り除いて血流を回復させる事がなにより重要や。

画像所見

肺血栓塞栓症の画像所見

単純X線

次に画像所見についてや。

単純X線画像やと、knuckle signや、Westermark sign、Hampton's humpなんかがあると言われとる。

knuckle signは中枢性の塞栓症に見られて、肺血管陰影が肺門部で太く、末梢で急激に細くなる所見やし、Westermark signは塞栓によって抹消領域の肺血流が減少して透亮像として確認できる所見や。

Hampton's humpは肋骨横隔膜角に肺門に向かって楔状陰影を認める事や。

ただ、これらは確認が難しい事もしばしばやで。

CT画像

CT画像やと、単純画像で血栓が高吸収として描出できる事もあるんやけど、基本的に造影検査は必須やで。肺血栓塞栓症の場合、造影で肺動脈内の欠損像を認めるんや。

急性血栓は紐状の事が多いと言われとる。この紐状血栓は両肺主肺動脈に見える事もあって、これをsaddle embolizationと呼んだりもしてるな。

他には、railway track sign、mural defect、右心内血栓の存在なんかがあるで。

Railway track signは血栓が肺動脈内に浮遊し、周囲に造影剤が認められる状態、mural defectは肺動脈壁に付着した壁在血栓の事を言うねん。

後は画像上で右室拡大、左房縮小の所見があった場合は予後不良と言われとるで。

  • X線画像
    • knuckle sign
    • Westermark sign
    • Hampton's hump
  • CT画像
    • 肺動脈内の欠損像
    • saddle embolization
    • railway track sign
    • mural defect
    • 右心内血栓の有無、右室拡大、左房縮小の有無

この辺を確認しとき。

実際の症例

次に実症例や。

肺動脈内に紐状の血栓、Saddle embolizationが確認できるな。また右の肺動脈の抹消にも造影欠損像を認めるで。

胸部CT画像 肺血栓塞栓症
Case courtesy of Stefan Ludwig, Radiopaedia.org

この症例はrailway track signや。

血栓が欠損像として認められて、その周囲に造影剤が認められると思うで。

これは線路のように見えることから、この名前がついてんねん。

胸部CT画像 肺血栓塞栓症
Case courtesy of Hani Makky Al Salam, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断やけど、臨床的には胸部症状を呈する疾患が鑑別対象となるで。

本症例のリスクファクターを持っていたり、D-dimerの高値で症状がある場合は積極的に本疾患を疑ってかかるべきや。

診断や治療の遅れが予後に関わってくるからな。

画像的には肺動脈周囲間質やリンパ節が血栓との鑑別に困難な事があるな。

まとめ

今日は肺血栓塞栓症についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

肺血栓塞栓症の原因の9割は、深部静脈血栓症

D-dimarが高値になる

saddle embolizationやrailway track signなどの所見が造影CTで確認できる

実際の臨床では単純CTでもウィンドウを絞る事で塞栓子を指摘できる事があるで。

PEはFASTの確認項目にもなってるから、単純検査やから分からんっていうんじゃなく、可能な限りチェックする事が重要や。

特に呼吸苦などの症状があった場合は尚更やで。

ってなわけで、今日のレクチャーはこんな感じや。

ほな、精進しいやー!

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