肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PE)

エコノミークラス症候群ってあるやん?

はい。

ビジネスやファーストクラス症候群ってあらへんの?

肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PE)とは

肺血栓塞栓症の概要

無いんじゃないですか・・・?

なんであらへんのやろな?前からちょっと疑問やってん。

まぁええか、レクチャー始めるで。今日は肺血栓塞栓症のレクチャーや。

肺血栓塞栓症やけど、これは肺動脈に血栓などが飛んできて閉塞させてしまう病態の事やで。

肺動脈を塞栓してまう事で、呼吸困難や胸痛、酷いときには急性心不全にまでになるヤツやねん。

別名エコノミークラス症候群とも言われてるな。むしろこっちのほうがメジャーかもしれん。

D-dimer

診断するにあたって、D-dimerという数値があんねん。

これはかなり感度が高いから、この値が正常であれば肺血栓塞栓症を否定する事が出来るんや。

D-dimarが上昇するのは深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓症(PE)なんかの血栓を形成する疾患なんや。

だいたい500ng/ml以上で陽性の判定になんねん。加齢によっても上昇する事が知られてるな。

重症度分類

他には重症度分類もあるから話とこか。以下の通りや。

このへんは技師はんは覚えとく必要は無いと思うねんけど、知ってるだけで役に立つ事があるかもしれへんからな。

急性肺血栓塞栓症
collapse型:心停止、あるいはそれに近い状態
massive型:血行動態不安定症例(ショック、あるいは収縮期血圧が90mmHg未満、あるいは40mmHg以上の血圧低下が15分以上続く場合)
submassive型:血行動態安定かつ心エコー上、右心負荷がある症例
non-massive型:血行動態安定かつ心エコー上、右心負荷がない症例

原因

原因は心臓や下肢静脈から飛んでくる血栓や。

特に下肢の深部静脈血栓が多いな。90%以上の塞栓源が下肢深部静脈血栓とも言われとる。

長時間同じ体勢でいると血流の循環が悪くなって静脈に血栓が出来んねん。

これが運動(歩行)する事で血栓が剥がれて、血流に乗って肺動脈までに飛ぶことで塞栓してまうねん。

肥満や妊娠、悪性腫瘍、長期臥床などがリスクファクターと言われてるで。

血栓が出来る仕組み

この疾患のポイントは肺血栓塞栓症の原因は90%以上で深部静脈血栓症やという事や。

すなわち肺血栓塞栓症を見つけたら、深部静脈塞栓症も検査する必要があるっちゅーことやな。

臨床の現場ではセットで検査される事も多いで。

臨床症状と治療法

臨床症状は呼吸困難や胸痛、重症例やとふらつきや失神、最悪の場合、心肺停止にまでなったりするで。

せやから検査で偶然見つけた時は、ダッシュで医師に知らせなアカンやつや。

治療法は投薬治療(血栓溶解など)やカテーテルでの血栓除去なんかやな。

早めに血栓を取り除いて血流を回復させる事がなにより重要や。

画像所見

肺血栓塞栓症の画像所見

次に画像所見についてや。

単純画像で血栓が高吸収として描出出来る事もあるんやけど、基本的に造影検査は必須やで。

造影で肺動脈内の欠損像を認めたらPEと診断出来るで。

息苦しさなどの症状が出てるちゅー事は、それなりに大きな塞栓ちゅー事やな。

あとは急性血栓は紐状の事が多いと言われとる。

この紐状血栓は両肺主肺動脈に見える事もあって、これをsaddle embolizationと呼んだりもしてるな。確かに読んでて紐状の事が多かった気がするわ。

他の特徴的な所見は、railway track sign、mural defect、右心内血栓の存在なんかや。

Railway track signは血栓が肺動脈内に浮遊し、周囲に造影剤が認められる状態、mural defectは肺動脈壁に付着した壁在血栓の事を言うねん。

後は画像上で右室拡大、左房縮小の所見があった場合は予後不良と言われとるで。

  • saddle embolization
  • railway track sign
  • mural defect
  • 右心内血栓の有無、右室拡大、左房縮小の有無

この辺を確認しとき。

実際の症例

肺動脈内に紐状の血栓、Saddle embolizationが確認できると思うわ。また右の肺動脈の抹消にも造影欠損像を認めるで。

胸部CT画像 肺血栓塞栓症
Case courtesy of Stefan Ludwig, Radiopaedia.org

この症例はrailway track signや。血栓が欠損像として認められて、その周囲に造影剤が認められると思うで。

これは線路のように見えることから、この名前がついてんねん。

胸部CT画像 肺血栓塞栓症
Case courtesy of Hani Makky Al Salam, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断やけど、胸痛や呼吸苦の症状は他の疾患でもありえるから、臨床的には胸部症状を呈する疾患が鑑別対象となるな。

リスクファクターがあったり、D-dimerの高値だった場合は積極的に本疾患を疑ってかかるべきや。

診断や治療の遅れが予後に関わってくるからな。

画像的には肺動脈周囲間質やリンパ節が血栓との鑑別に困難な事があるな。

まとめ

今日は肺血栓塞栓症についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

PEの原因の9割はDVT

D-dimarが高値になる

saddle embolizationやrailway track signなどの特徴的な画像所見を見逃さない

実際の臨床ではPEが疑われたらDVTも疑って検査する事が多いで。続けて撮影出来れば造影剤の使用も1回で済んで身体的負担も減るからな。

ってなわけで、今日のレクチャーはこんな感じや。

ほな、精進しいやー!