ラトケ嚢胞(rathke’s cleft cyst)

ラトケ嚢胞ってあるやん?あれの語源って知ってる?

ラトケって人が見つけたからじゃないんですか?

 まぁまぁ正解や。もうちょっと詳しく経緯を説明すると、マルティン・ラトケって人が下垂体の前葉と中葉の元になるものを発見して、それをラトケ嚢と呼ぶようになってん。これは胎児期に作られて下垂体が出来てくると無くなるんやけど、中には残ってしまうケースもあってな。実はこれがラトケ嚢胞と呼ばれてんねん。

ちなみにマルティン・ラトケは海洋生物学のパイオニアの1人って言われるほどの人物やねんで。

ってか、なんで正解してしまうん?そこは間違えて欲しいとこやん。もし仮に正解が分かっても盛大に外しにいくとこやん。ワシにドヤらせてーな!そのへんやで、自分に足らへんのは!

Rathke嚢胞(rathke’s cleft cyst)とは

Rathke嚢胞の概要

ちょっと予想外の返しに動揺して逆にテンション上がってしもー訳やけど、気分一新、今日のレクチャーに入るで。

今日はRathke嚢胞や。これは比較的よく見るヤツやろ。

Rathke嚢胞の詳細はRathke嚢内腔のRathke裂ってのが閉鎖せずに遺残した嚢胞の事で、辺縁平滑で境界明瞭な嚢胞や。内容物は漿液性や粘液性で、内部の蛋白濃度に応じて様々な信号パターンを示すで。

MRI検査の普及で臨床症状が無い時に発見されるも多くなってきたな。もちろん嚢胞が大きくなると症状も出てくるで。

臨床症状は視野障害や尿崩症なんかや。場所的に視神経やホルモン分泌に関係するねん。

発生部位やねんけど、Rathke嚢胞はトルコ鞍内、もしくは鞍内と鞍上の組み合わせがほとんどや。鞍内と鞍上のパターンで70%近くを占めるで。逆に言うと、鞍上部のみは稀っちゅー事や。

下垂体周辺の解剖

治療としては嚢胞の内容物のドレナージだけで終わるらしくて、鼻腔からアプローチする事が多いようや。大きさによっては開頭手術をする事もあるっぽいねんけど、頻度的にほとんどあらへんらしいな。

概要としてはこんな感じや。

特徴臨床症状
Rathke嚢胞Rathke裂が閉鎖せずに遺残したもの
70%が鞍内、鞍上に発生
境界明瞭な嚢胞で内容物によって信号パターンは様々
治療は内容物のドレナージ
視野障害や尿崩症など
MRI検査の普及で臨床症状が無く偶然発見されるパターンも多い

画像所見

Rathke嚢胞の画像所見

次に画像所見についてやな。

さっきも話したけど、内容物によって信号パターンは変わってくるで。おおよその割合で話すと、T1強調は2/3で高信号、1/3で低信号、T2強調では1/2で高信号や。ただ内容物が蛋白濃度が高かったりすると、T2強調でも低信号を示すも時もあるで。造影効果は無いで。

また、内部に増強効果の無い嚢胞内結節を認めT1強調で高信号、T2強調で低信号を示す事があって、これをwaxy noduleと呼ぶ事もあるで。

これはRathke嚢胞に特徴的な所見やと言われとる。waxy noduleの正体は嚢胞内容が濃縮、凝固したものと考えられてるな。まぁRathke嚢胞の画像は特徴的っちゃ特徴的やから、以外と簡単に診断は出来たりすんねんけど、その中でも鑑別が難しいのもあるで。それは次で説明してくわ。

T2WIT1WいCE
Rathke嚢胞半数で高信号2/3で高信号
1/3で低信号
造影効果なし嚢胞成分の中にT2強調で低信号、T1強調で高信号
これをwaxy noduleと呼び、Rathke嚢胞に特徴的な所見

実際の症例

さて、実際の画像を見ていこうか。70代男性で頭痛精査で発見された例や。下垂体に腫瘍があんねんけど、造影効果はあらへんな。

頭部MRI-ラトケ嚢胞
左上段からT2WI、T1WI、FLAIR、下段左からDWI、CE、CE矢状断

こっちは20代女性の例や。特に臨床症状はあらへんで。

頭部MRI-ラトケ嚢胞2
左側がT2WIの矢状断と冠状断、右側がT1WIの矢状断と冠状断

60代女性で視野異常で精査となった例や。Complicated cystやな。

頭部MRI-ラトケ嚢胞(complecated-cyst)
左からT2WI、T1WI、CE

ちなみにWaxy noduleは見た事が無いと充実成分と間違えてしまう事もあるから、1度どんな感じかっていうのを確認しておくとええで。

後は、そうやな。CTだと~20%くらいで石灰化を嚢胞壁に認めるからこれも1つの診断材料になるな。

鑑別診断のポイント

頭蓋咽頭腫や下垂体腺腫

鑑別診断のポイントや。まず頭蓋咽頭腫との鑑別が問題となるんやけど、これは石灰化が無い事と増強効果が無ければほぼRathke嚢胞と診断出来るで。

下垂体腺腫との鑑別は、Rathke嚢胞の9割が正中に位置しているのと、T1強調で高信号、T2強調で低信号の信号強度でRathke嚢胞と診断出来るわ。後は、腺腫は境界不明瞭で造影効果があるんやけど、Rathke嚢胞は境界明瞭で造影されへん事も鑑別ポイントになるな。

  • 頭蓋咽頭腫との鑑別ポイントは石灰化の有無と増強効果の有無
  • 下垂体腺腫との鑑別ポイントは位置とMRIの信号強度、造影は境界明瞭か、造影される

これらで鑑別可能や。下垂体腺腫についてはここでレクチャーしとるから、興味があったらそっちも覗いていってやー。

まとめ

今日はラトケ嚢胞についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

トルコ鞍内に嚢胞が出来る事

T1強調やT2強調は内容物によって信号強度は様々だが造影効果は無い

この2つや。T1強調、T2強調では内容物によって様々な信号パターンを示すんやけど、基本的にはT2強調で低信号、T1強調で高信号や。加えて造影効果なし、waxy noduleが特徴的やで。

日頃良く見る疾患もこうやって詳しく見ていくと知らない事もいくつもありますね。

そうやで。まだまだ覚えなアカン事は沢山あるで。特に頭部はメチャ多いねん。参考書なんか見てみぃや。メチャメチャ分厚いで。さすがに全部を覚えるのは無理ゲーやけど、代表的なCommonDiseaseは知っておかんとな。症例が多い分、それだけやりがいがあるって事にもなるんやで。

先は長いように見えるけど、着実に進んでいけばある時点で振り返った時に自分の成長を感じられる時が来るで。

ほな、精進しいやー!