社員の定着率

問題点を放置していませんか?

社員の定着率は組織の問題数と関係している

4月になり新卒が入社してきた。3ヶ月後に1名退職希望があった。半年後にも1名退職した。年明けには2名退職した。気がつけば残っているのは当初から半数程度・・・

このように入社しては退職しての繰り返しで、常に人手不足の状態の施設は少なくないと思います。特に飲食や宿泊は慢性的な人手不足のために、社員だけではなくバイト、パート社員の定着率も重要な項目です。下記のデータは厚生労働省が出しているデータですが、これからも飲食、宿泊業界では定着率が低いのが分かると思います。

産業別離職率データ
厚生労働省 令和2年度における新規学卒就職者の離職状況

定着率が低い場合には、組織に少なくとも複数の問題点があり、それが放置されている事が多いです。それは本人達が気がついているケースもあれば、気がついていないケースもあります。リクルート方法や、退職率について下記の記事を参考にして下さい。これらも関係してくる部分が多いです。

零細企業は意外と定着率が良い?

これは統計データからの情報ではないのでエビデンスという点から見ると不確定ですが、昔ながらの零細企業は良くも悪くも家族的な感じの職場が多いので、フィットする人が多いように思えます。

私がいる医療業界でも、職員数が多い大学病院などは毎年のように退職者がいるのに対して、町の小さなクリニックでおなじみの顔がいるようなイメージです。どうでしょうか?皆さんの周りでも、昔ながらの町の開業医では、顔見知りの人が多いのではないでしょうか?

狭く深くといった家庭的な感じを求めている人はうってつけですが、注意点もあり、零細企業の定義は5人以下なので自分を除いた4人とうまく人間関係が築けなければ地獄の空間に変わります。

ただあくまで1部のケースであり、大まかな傾向は大企業と比較して退職率は高めではあるようです。

定着率を上げるために必要なこと

社員が定着するにはいくつか条件が必要

新しく入社した社員が定着するにはいくつか必要な条件があります。それらは次の3つです。

  • 成功体験が得られる仕組み
  • 承認欲求を満たしているか
  • 人間関係

定着率が低い組織は何かしたこれらの項目に問題を抱えている事が多いです。では、順に見ていきましょう。

成功体験

まず1つ目が成功体験の有無です。小さくてもいいので成功体験が得られるような仕組みを作りましょう。

成功体験とは何かを成し遂げた時に得られる感情です。

これには適切な難易度の課題設定が重要です。具体的には少し頑張れば達成出来そうな目標です。これが簡単すぎると作業になり、難しすぎるとやる気がなくなります。

イメージとしてはドラゴンクエストのようなRPGゲームでしょうか。皆さん、最初はスライムから倒しますよね。そこからだんだんとレベルアップしていきボスキャラも倒せるようになっていきます。いきなりキラーマシーンと闘わなければならない状況だと、たいていの人はやる気がなくなります。

個々に合った難易度が設定されていて、挑戦と成功(もしくは失敗)が繰り返し感じられる場合が理想です。適切な難易度の課題を与えて、達成感を感じてもらいましょう。達成感が得られれば自己肯定感が育ちます。自己肯定感が高くなれば、自分に自信が持てるようになってきます。つまり自信を持つには成功体験がある事が必須なのです。

承認欲求

承認欲求とは他者に認めてもらいたい欲求の事です。別名、尊敬、自尊の欲求とも言われています。

多くの人は大小なりとも承認欲求を持っており、それが仕事に大きく関係している事が多いです。マズローの5段階欲求は有名なので知っている人は多いかもしれません。この4段階目に承認欲求というものがあります。これは所属する社会や組織の中で自分を認めて欲しいという欲求なのですが、これを感じる事が出来れば自分の存在意義を感じる事にもなり、定着率に大きく影響します。

マズローの5段階欲求
自己実現理論 Wikipedia

上司や先輩は、この承認欲求を上手く満たしてあげる事が定着率を上げるポイントです。部下や後輩との接触回数を多くし、今やっている事を認めてあげましょう。誰からも認めてもらえないのは、存在していない事と同じ意味になります。具体的にどのような形で貢献しているかも添えると、より効果的です。

そのためには普段からのコミュニケーションと観察力が重要になってきますが、これには1on1と呼ばれるミーティングが効果的です。1on1については次の記事で記載しているので読んでみて下さい。

適度な難易度の課題をトライし、結果が出たら認める。この仕組みが出来ている組織は侵入社員の定着率が高い事が多いです。

人間関係

3つ目は人間関係です。職場環境とも言う事ができます。いくらやりがいがある職場でも、人間関係が悪ければ長続きしません。自社の例で恐縮ですが、女性が退職する理由の多くが人間関係によるものでした。考えてみれば当たり前の事で、1日のうち最大8時間は一緒に仕事する間柄です。はやりここの関係性は定着率に大きく影響します。

心理的安全性

またグーグルが実施したプロジェクトアリストテレスで心理的安全性の重要さが大きな注目を集めました。(「効果的なチームとはなにか」を知る Google

心理的安全性とは、「メンバーの誰もが非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言できる状態」の事を言います。

「色々な価値観を認める事」とも言えると思うのですが、この心理的安全性が高いと「否定される不安が無くなる」というメリットがあります。

人が発言をためらう時はどんな時でしょうか?それは否定されるかも知れないと思った時です。

日本では周りとの協調性が重要視されてきた時代が長く続きました。それには日本が島国であり違う民族が入ってくるケースが低く、長年同一民族内で生活をしてきた事が関係しています。

同一民族の中で一番のリスクはグループから外れる事です。グループから外れると生きていけないので、皆と歩調を合わせる事を優先してきたのです。その結果、欧米人と比較して自分の発言をする頻度が少ないように見えてしまうのです。

人間関係が悪化する時は、価値観が違う事が原因です。しかし10人いれば10通りの価値観があります。今の時代、これを1つの個人の価値観に合わせるのは無理なのです。心理的安全性を高め否定される恐怖を無くす事(他者の考えを受け入れられるようになる事)で、人間関係も良好に築ける事が出来るようになるのです。

心理的安全性の落とし穴

なお心理的安全性だけでもダメです。心理的安全性だけが高くなると、「何を言っても大丈夫」がいつの間にか「自分の発言に責任を持たなくでも良い」に解釈されてしまう事があります。心理的安全性があった上でお互いの意見を述べる事で、新しい視点が見えてきます。

まとめ

社員の定着率向上に必要なこと

職員が定着するには、

  • 心理的安全性を高める
  • 成功体験が得られる
  • 承認欲求が満たされる

これら3つの要素が満たされる必要があります。心理的安全性がある状態で成功体験を得る。その結果、認めてもらい承認欲求も満たされる。自己肯定感も上がり向上力も出てくる。このループに入ればそうそう人は辞めません。

また心理的安全性を作るのは、時間も必要ですし、1人では難しい事が多いです。時には自分より上位職の協力が必要な時もあるでしょう。そのような時に協力してもらえるような関係性を今から作っておきましょう。

もちろん待遇も重要

他に重要な点として待遇があります。やはり生活していく上で稼ぎは重要です。これが同業他社より低い場合は定着率が低くなる原因にもなりますが、この項目を上記の原因の中に上げなかったのは理由があります。

それは待遇は状況によって優先順位が変わるからです。

男性35歳/家庭あり/子供2人と、女性30歳/家庭あり/幼児1人では稼ぐ事の優先度が違います。前者は稼がなければいけませんが、後者は必ずしもそうとも言えません。むしろ休みやすさの方が重要だったりします。

またこの項目は中間管理職では対応が難しい場合も多いです。給与体系を修正するので経営層の判断も必要になり、それだけ難易度が高くなります。そしてその点も一般の社員は分かっています。なので転職していくのです。

人は生活していかなければなりません。その生活の維持に必要な金額が貰えない場合は退職していきます。背に腹は替えられないからです。待遇は低いけど我慢して下さいでは定着しないのです。

定着率に悩んでいる人は心理的安全性、成功体験、承認欲求の3点を意識してみましょう。これは給与と違って現場で対応できる事です。

ぜひ若手が定着し成長できる組織を作って下さい。