膝蓋靱帯断裂(rupture of patellar rendon)

メッチャ不思議やん?

確かに。

膝蓋靱帯断裂(rupture of patellar rendon)とは

まだ何も言ってへんやん。適当に答えんなや。

ワシが言いたいのはMRIや。だって磁力で体内を見る事が出来んねんやろ?最初に考えたヤツなんなん?アホレベルの天才やんけ!

って事を考えながら、この前、膝のMRI検査受けててん。

膝蓋靱帯断裂の概要

ってな訳で、今日は膝蓋靱帯断裂についてや。断裂やのーて損傷の場合もあるんやけど、ほぼ同じと考えてもらってOKやで。

  1. 強い外力によって大腿四頭筋腱、膝蓋靱帯や膝蓋大腿靱帯が損傷、または断裂した状態
  2. 強い痛みと歩行困難を伴う事がある
  3. 全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ、慢性腎疾患、ステロイド治療中に好発する事が知られている

膝蓋靱帯断裂は何かしらの外力が加わって、膝蓋骨を支持している腱が損傷や断裂する事や。ちなみに膝蓋靱帯の断裂は膝蓋骨下極の付着部に最も多いと言われてるで。

強い外力、つまりスポーツや部活動なんかが原因の事が多いな。もちろん交通事故なんかの外傷でも起きうるで。

上記で話した通り、全身性エリテマトーデスや関節リウマチ、ステロイド治療中に起こりやすいとも言われてるから、臨床情報をチェックするのも忘れんようにな。

他に似た疾患で、オスグッド・シュラッター病と膝蓋靱帯炎、通称ジャンパー膝というのがあるんやけど、それは鑑別疾患のとこで話していくで。

膝蓋靱帯の解剖

膝蓋骨は近位側に大腿四頭筋腱、遠位側に膝蓋靱帯があんねん。内側に内側膝蓋大腿靱帯(medial patellofemoral ligament:MPFL)があって膝蓋骨の脱臼に関係してくるで。主な解剖については次の画像で確認してみてーや。

膝の解剖

膝蓋靱帯断裂の原因

膝蓋靱帯断裂の原因は上で述べた通り、スポーツや外傷によるものが大半や。

一方で、ステロイド使用や膠原病なども原因になりうるとも言われてるから、患者背景も要チェックやで。

膝蓋靱帯断裂の臨床症状

臨床症状は靱帯損傷の程度で変わってくるで。

【靱帯損傷】:膝痛や血腫なんかが症状のメインや。放置すると痛みが慢性化したりする事もあるで。

【靱帯断裂】:断裂までになると激しい痛みが起きるで。通常の歩行や階段の上り下りでも痛みが出て関節の不安定化が出てくる事もあんねん。日常生活に支障を来すレベルにまでなる事もあるで。

画像所見

膝蓋靱帯断裂の画像所見

実際の画像にいく前にこの表を載せておくで。膝のシーケンス別の所見表や。

シーケンス別の画像所見
【半月板】  プロトン密度強調は半月板と軟骨、関節液のコントラストがつきやすい
       T2スターは変性や断裂の感度が高い
【靱帯や腱】 いずれのシーケンスでも明瞭に低信号で描出される
       炎症などの所見がある場合はT2脂肪抑制で高信号として描出される
【骨髄】   骨髄病変はT1強調で低信号、T2強調で等~高信号、T2脂肪抑制で高信号
【関節軟骨】 T1強調で関節液よりやや高信号、プロトン密度強調でやや低信号、T2強調で低信号として描出される

MRIの画像所見やと、膝蓋靱帯の断裂がある場合は、断裂部の信号上昇や腫大を認めるで。部分断裂の場合は、該当部位の信号上昇や腫大や。

上の表の靱帯や腱の項目を参考に読影してみてくれや。

patella altaとpatella baja

膝蓋靱帯断裂の時に見られる膝蓋骨が高位になる事をpatella alta(膝蓋骨高位)と呼んでんねん。これは膝蓋腱断裂や膝蓋骨脱臼後に見られる事があんねんで。膝蓋靱帯損傷を判断する材料の1つや。

正常では膝蓋骨の高さ(LP)と膝蓋靱帯の長さ(LT)がほぼ同じになる。

LT/LP比が1.3より大きい場合(つまりLTの方が長い場合)は膝蓋骨高位と判定される。

なお、LT/LP比が0.8以下はpatella baja(膝蓋骨低位)とされる

他に膝蓋骨高位(patella alta)になる原因としては下記のような事が知られてるで。合わせて覚えておくとええで。

  • 膝蓋骨脱臼
  • 先天性によるもの
  • 膝蓋骨軟骨軟化症
  • 脳性麻痺
  • オスグッド・シュラッター病 など

膝蓋骨低位(patella baja)になる原因は次のようなものがあるで。

  • 軟骨無形成症
  • 外傷などによる膝蓋腱の線維化
  • 神経筋疾患
  • 若年性関節リウマチ など

他の診断法もあって、Modified Insall-Salvati Ratioや、Caton-Deschamps Index、Blackburn-Peel Ratioなんかがあるらしいけど、個人的にはここまで覚える必要はあらへんと思っとる。

実際の症例

40代 男性 子供の運動会で転倒

さて、実際の画像や。これは断裂の症例で、所見としては派手やな。完全断裂しているのが分かると思うで。全てのシーケンスで断裂してるのが分かるし、T2脂肪抑制で断裂部の浮腫を反映してか高信号となっとるな。

膝MRI-膝蓋靱帯損傷
左からT2スター、プロトン強調、T2脂肪抑制

他の所見としては、patella altaがあるな。正常例と比較して膝蓋骨が高いやろ。膝蓋靱帯の完全断裂がある場合は膝蓋骨が高位に偏位する事が多いねん。これは損傷や部分断裂では起きひんで。


20代 男性 交通外傷

次は膝蓋靱帯損傷の例や。20代の男性で交通事故の精査でMRI検査となってるで。膝蓋靱帯の内部にT2脂肪抑制で高信号を認めて、損傷疑いとなった例や。

膝MRI-膝蓋靱帯損傷

鑑別診断のポイント

オスグッド・シュラッター病 膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)

さて、次に鑑別診断のポイントや。上で挙げた通り膝蓋骨の高位、低位で他の原因のパターンがある事は伝えた通りやけど、膝蓋靱帯に関係するもので2つほどピックアップしておくわ。

それはオスグッド・シュラッター病と膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)や。これらの概要は次の通りや。

好発年齢概要
オスグッド・シュラッター病スポーツを行う若年層跳躍やボールを蹴る動作が多いスポーツに多い
大腿四頭筋の牽引動作により脛骨結節の成長線に不可がかかり、脛骨粗面が剥離する事で発生する
成長期を過ぎれば自然と軽快する事が多い
膝蓋靱帯炎スポーツを行う若年層膝の伸展を繰り返し行う事で膝蓋靱帯に炎症が起きた状態
跳躍を繰り返すスポーツに多い
着地の際に膝蓋骨の下に痛みが生じる
腫脹や熱感がある場合も 

他の膝痛を呈する疾患は以下のようなものがあるで。合わせて確認しておいてや。

まとめ

今日は膝蓋靱帯断裂と鑑別疾患についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

スポーツなどの外力により負傷するため臨床症状やエピソードのチェックが重要

靱帯損傷や断裂部には信号強度の上昇や腫大を認める

patella alta(膝蓋骨高位)が診断の参考になる

特に関節の中で膝と肩は検査頻度が多い印象やな。せやから今日の症例について頭の中に入れておいて欲しいわ。断裂までいくと所見が派手になるからスルーする事はめったにあらへんと思うけど、小さな損傷の場合はよく画像を見んと分からん場合もあるからな。

後は、鑑別については膝蓋靱帯断裂/損傷とオスグッド・シュラッター病、ジャンパー膝はMRIを撮影すればおおよそ判別出来ると思うで。

しっかし、こう考えるとホンマにMRIって凄いんやって思うわ。

撮影する側や画像を読む側がそれに負けへんようにせんとな。

ちなみに検査毎に自分で画像を読影してみる癖をつける&後でレポートと答え合わせすると読影力は爆上がりするで。

ほな、精進しいやー!