神経鞘腫(schwannoma)

全くもって終わらんわー。なんやねん、どんどん未読の検査が増えていきよるで。

先生、この症例、至急で確認お願いします!

クソが!こんな時に限って至急あるあるや!

ん? なんかフローに入ったかもしれん。スラスラ読影が進んでいくで?
・・・おお、メッチャええやん。よっしゃ、どんどんこいや!今なら100件読める気がするで!

神経鞘腫(schwannoma)とは

ってな訳で、読影に使い果たして、ワシのやる気はすでにピークアウトしてんねん。せやから今日のレクチャーはサクッと終わらすで。

ダメです!

ちっ!

しゃーない、今日は神経鞘腫についてレクチャーしてくで。神経鞘腫は聴神経腫瘍のイメージがあるかもしれんな。でも実は皮下組織や軟部組織にもよく発生すんねん。

ちなみに、神経鞘腫をはじめとする神経原性腫瘍は次のように分類されてるで。

神経原性腫瘍の組織分類
神経鞘(末梢神経)由来
 神経鞘腫(schwannoma) 神経線維腫(neurofibroma) 悪性神経鞘腫(malignant schwannoma)
神経節由来
 神経芽腫(neuroblastoma) 神経節神経芽細胞腫(ganglioneuroblastoma) 神経節細胞腫(ganglioneuroma)
傍神経節由来
 傍神経節腫(paraganglioma)

神経鞘腫の概要から話していくで。そもそも神経鞘腫っていうのは、末梢神経を取り巻くシュワン細胞(schwan)から発生する良性腫瘍やねん。シュワン細胞は末梢神経の保護や再生、栄養に関係してんねんで。ちなみに良性やから1度完全に切除してしまえば再発する事はほとんどあらへんで。

シュワン細胞

似たようなものに神経線維腫(neurofibroma)があるわ。これは皮膚や皮下なんかの小さな神経から発生するのが違いやな。これらは似ているようで違ったりするから、以下にまとめておくから確認しておいてや。

神経鞘腫

  • シュワン細胞から発生
  • 被膜を持つ
  • 神経束に沿って発生し、頭頚部、上肢、下肢に発生する
  • 組織学的には細胞成分が多いAntoni A領域と細胞成分の少ないAntoni B領域から構成される
  • Antoni Aは中心に多くAntoni Bは辺縁領域に多い

神経繊維腫

  • 末梢神経から発生し、シュワン細胞だけでなく複数の細胞から構成される
  • 神経線維腫症1型と神経繊維腫症2型がある
  • 1型はNF1、もしくはフォン・レックリングハウゼン病とも言い、カフェオレ斑が特徴的で約90%に見られる
  • 若年層に多く、多発する事もある
  • 2型はNF2とも言い聴神経腫瘍が特徴的
  • NF1、NF2共に被膜を有さない事が多い
  • 神経線維腫症の半数は親からの遺伝(優性遺伝)で、残りは遺伝子変異によって発症する

臨床症状

これらの臨床症状は、腫瘍が発生する部位によって違ってくるな。神経鞘腫やNF1は四肢を含む広範囲に発生する可能性があるから、出来た部位によって神経が圧迫されたりして分かる事が多いで。

参考までに、NF1はカフェオレ斑と呼ばれる扁平で盛り上がりの無い斑が特徴的で90%以上に見られるわ。小児では0.5cm以上、成人やと1.5cm以上が基準やで。NF2は聴神経に関係する症状で発見される事が多いな。難聴、ふらつき、頭痛、顔面神経麻痺なんかが主な症状や。

治療法

治療方法についてやけど、基本的に切除術が第1選択や。概要のところでも話したけど、しっかり切除できれば再発もせーへん。

神経線維腫のNF1については、少数なら局所麻酔下で切除してしまう事も多いらしいな。ただカフェオレ斑は中々治療が難しいらしいで。NF2については外科的切除と放射線治療が行われるで。腫瘍が小さいうちに手術が出来れば、後遺症の可能性も少なく治療が出来るとの事や。逆に化学療法は期待できんらしいな。まぁ参考までにや。

画像所見

神経鞘腫の画像所見

次に画像所見についてや。神経鞘腫と神経線維腫は基本的に似たような所見になる事が多いから纏めて話していくで。

  • T1WI:筋肉と同じか、やや低信号
  • T2WI:筋肉よりも強い高信号
  • 脂肪抑制:高信号
  • 造影効果もある
  • T2WIで辺縁が高信号、中心が低信号を示すパターンが特徴的でtarget appearanceと呼ばれる
  • target appearanceは神経鞘腫で~50%程度、神経線維腫で~100%の割合で見られる
  • 腫瘍サイズが大きいものは内部変性を伴うものもある
  • 基本的には辺縁平滑で楕円形の形状、また神経鞘腫は被膜を有する事が多い

基本的な所見についてはこんな感じや。次に実際の画像を見ていくで。

実際の症例

70代の症例や。皮下腫瘤と神経症状を認めて精査となった例やで。前腕の浅指筋腱近傍に約2cm大の主流を認めて神経鞘腫の診断となってるで。T2画像でtarget appearanceや被膜が確認できると思う。

神経鞘腫 MRI画像
左からT2-FS、T1WI、T2WI

別の症例や。こっちは下肢の例やな。右長腓骨筋内に1cm程度の腫瘤を認める事が出来ると思うで。

神経鞘腫 MRI画像
左からT2WI、T2WI、CE

鑑別診断のポイント

鑑別疾患

さて、鑑別診断のポイントや。他の末梢神経由来の腫瘍には以下のようなものがあるで。

  • 悪性神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor)
  • 外傷性神経腫(traumatic neuroma)
  • Morton病(Morton’s neutoma)
  • 神経内ガングリオン(intraneural ganglion)

外傷性は四肢切断なんかで神経切断端に発生するものや。ガングリオンは嚢胞性病変の事やな。これも普段検査しててたまに見る症例やろ。

粘液型脂肪肉腫

ここで1つ症例を紹介しておくで。この例は軟部腫瘤精査で検査して、その数ヶ月後に再検したところ急激に大きくなっていた症例や。組織生検の結果、軟部肉腫の診断となってるで。たった3ヶ月で大きさが全然違ってきてんねん。

神経鞘腫との違いは腫瘍の辺縁が不整なところやな。

粘液型脂肪肉腫 MRI画像
左からT2-FS、T2WI、T1WI

【3ヶ月後】

粘液型脂肪肉腫 MRI画像

左からT2-FS、T2WI、T1WI

【粘液型脂肪肉腫】

  • 50~60代の四肢(大腿)に好発
  • 腫瘍内は豊富な粘液基質
  • 内部は出血や壊死を伴う事もある
  • T1WIでは低信号(高信号は出血成分を反映している事が多い)
  • T2WIでは強い高信号
  • 不均一な造影効果を認める
  • 脂肪成分が半数以上で認められない

最初の所見からして神経鞘腫とは違うのが分かると思うけど、こういったパターンもあるのは知っておくべきやな。

まとめ

さて、そろそろまとめになるで。今日は神経鞘腫について話してきたで。ポイントは3つや。

辺縁が境界明瞭で楕円形の腫瘤

末梢神経のどこにでも発生する可能性がある

target appearanceが特徴的な画像所見

こんな感じやな。神経鞘腫はそれほど頻度は多くないにしても、たまに発見される疾患や。軟部腫瘤らしきものがありますで終わらせるんやなくて、神経鞘腫を疑うで。くらいまで言えるようになるとベストや。

これからの技師は撮影するだけじゃダメなんですね。

その通りや。

少子高齢化で検査数は多くなるのが必然的なのに対して、読影する側が全くおいついてへん。ここにタスクシフトで技師はんがサポートしてくれるようになると、全然違ってくると思うで。実際に静脈注射も出来るようになってきてるし、読影のタスクシフトの可能性が全く無いとも言い切れん。

注射も出来て、検査も出来て、読影も出来る。こんな技師はんがいたら1人で完結してまうやん。そんな技師はんになれるとええな。

さて、ちょっと脇道にそれたな。今日はこの辺にしとくで。

ほな、精進しいやー!