小腸癌(small intestine cancer)

小腸の長さってどれくらいあると思う?

昔、学生時代に勉強した記憶が。待って下さいね、確か10mくらいでしたっけ?

微妙に違うな、日本人で大体6~8mくらいらしいねん。栄養を球吸収するためやと言われてるけど、それでも長いわな。そんな長い管がお腹の中にハマってるって不思議やあらへん?

っていうか何で小腸の話しをしたかと言うと、昨日の読影で小腸癌の症例があったからなんや。実は大腸や胃と比較すると小腸癌の頻度は少ないねん。メチャ少ないねん。長さは全く違うのにや。単純に考えて長いとその分癌化するリスクも増えそうなんやけどな。っていうか、外すんならもっと盛大に外せや。なに微妙なとこ突いとんねん。

ってな訳で、今日は小腸癌について話していくで!

小腸癌(small intestine cancer)とは

小腸癌の概要

まずは小腸癌からや。これは十二指腸癌と重なる部分が多いねん。というのも十二指腸は小腸の一部やからな。十二指腸の時と繰り返しにはなるんやけど、再度話していくで。

小腸の悪性腫瘍には神経内分泌腫瘍、腺癌、悪性リンパ腫、肉腫があんねん。その中で1番多いのが神経内分泌腫瘍、次いで腺癌になるんや。検査が難しい部位やから発見が遅れる事も多いねん。

概要
・10万人あたり数人の稀な疾患で原因となるものは今現在無い
・Crohn病などの自己免疫疾患、遺伝性疾患がリスク因子として知られている
・中年(50~70歳)に比較的多く、男性に多いとのデータもある
・神経内分泌腫瘍、腺癌、悪性リンパ腫、肉腫が組織型としてあり、神経内分泌腫瘍、腺癌の順に多い
・無症状の事が多く進行して血便や貧血、腹部膨満感などが出てくる
・空腸、回腸は内視鏡で確認が難しい位置のため発見が難しい事が多い
・十二指腸に45%、空腸が35%、回腸が20%の割合で発生する
・空腸癌はTreitz’s 靱帯から60cm以内、回腸癌は回盲弁から40cm以内が多い

小腸の解剖と役割

次に小腸の解剖についてや。小腸は約7mくらいの長い管状の消化管やで。十二指腸、空腸、回腸に分かれてんねん。十二指腸のファーター乳頭部にはオッディ括約筋ってのがあって、これがあるおかげで胆汁の分泌や食物も総胆管への逆流を防いでくれてんねん。

小腸の内側にはケルクリングヒダ(Kerckring folds)があって、これは空腸に多いねん。ちなみに回腸にはほとんどあらへんとの事や。ケルクリングヒダの先には腸絨毛があって、ここから糖やビタミン、ミネラルなどの体内に必要な物、ほぼ全てを吸収してんねんで。

小腸の解剖
消化管解剖
小腸粘膜ヒダ

小腸の役割についてや。

まず十二指腸は、胃から運ばれてきた消化物にVater乳頭から胆汁や膵液を加えて消化吸収や胃酸の中和を行う場所なんや。ここで活躍するのがオッディ括約筋やで。十二指腸下行部に食物が流れてくると、コレシストキニンが分泌されて胆嚢が収縮、オッディ括約筋が弛緩する事で単純が排出されんねん。

次に空腸や回腸やけど、これらは十二指腸からの消化物を更に吸収するところや。腸絨毛がある事で表面積を大きくしてより効率よく消化吸収出来るようになってんねん。聞いた事あるやろ?小腸を広げたらテニスコート一面分とか何とか。それやで。ちなみに回腸の終末部でのみビタミンB12を吸収する役目があって、ここを切除するとビタミンB12不足障害が出てくるで。

小腸癌の原因と治癒率

原因については上で話した通り、特定の原因は今のところ解明されてへん。ただリスク因子としてCrohn病や潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患や、家族性大腸腺腫症やLynch症候群などの遺伝性疾患があると言われてるわ。

生存率については十二指腸癌のところと同じになるけど、国立がん研究センターから5年生存率が下記のように出てるで。空腸、回腸に出来ると中々早期で見つけにくいのが難点やな。

小腸癌(5年生存率)Ⅰ期:80.8% ⅡA期:85.8% ⅡB期:77.8% ⅢA期:51.6% ⅢB:20.8%
国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システムより

小腸癌のTNM分類

次に小腸癌、特に腺癌のTNM分類について話していくで。基本的に十二指腸癌と同じやな。T分類だけ少し違ってるで。ステージ評価も同じや。ステージⅢまでは基本的に切除して治療するで。切除後の追加治療はまだ確立されてへんから、厳重にフォローする形らしいな。ステージⅣになると化学療法をまず実施してという形になるって話しや。

T分類T1T2T3T4
T1a:癌が粘膜内にとどまっている T1b:癌が粘膜下層にとどまっている癌が固有筋層にとどまっている粘膜下層までにとどまっている(漿膜を破っていない腸管膜まで:空腸/回腸のみ、後腹膜浸潤まで:十二指腸のみ)多臓器浸潤がある(T3に該当しない腸管膜、後腹膜臓器浸潤はT4)
N分類N0N1N2
リンパ節転移なし所属リンパ節内にリンパ節転移が1~2個所属リンパ節内にリンパ節転移が3個以上
M分類M0M1
遠隔転移なし遠隔転移がある
                             UICC-TNM分類 8版を参考に作成

ステージ分類や。

N0N1N2M
T1ⅢAⅢB
T2ⅢAⅢB
T3ⅡAⅢAⅢB
T4ⅡBⅢAⅢB

さて、小腸癌について概要が分かったところで画像所見について話していくで。

画像所見

小腸癌の画像所見

小腸癌の画像所見や。十二指腸までは内視鏡や胃造影で観察が可能や。そっから先は中々難しいから画像診断になるで。

CTの所見やと、腸管壁肥厚や造影効果がある腫瘤影として認められる事があるで。CTで感度92%、特異度99%だったというデータもあるらしいねん。「Helical CT-enteroclysis in the detection of small-bowel tumors: a meta-analysis」で検索すると出てくるで。

Pubmed 「Helical CT-enteroclysis in the detection of small-bowel tumors: a meta-analysis」

実際の症例

60代男性、回腸腫瘍による小腸閉塞の精査となった例で、切除術の結果、回腸腺扁平上皮癌のの診断となった例や。回盲部から回腸側に入ったとこに腫瘤影が認められると思うで。

腹部CT-小腸癌

70代の女性で、腹痛、食欲不振の精査CTで腹部腫瘤を認めたんや。ドーナッツ状に造影される壁肥厚と、そこに一致してFDG-PETでの集積を認めるで。精査の結果、小腸癌と診断された例や。

腹部CT-小腸癌
腹部CT-小腸癌
FDG-PET-小腸癌

鑑別診断のポイント

平滑筋肉腫、悪性リンパ腫

鑑別疾患は平滑筋肉腫や悪性リンパ腫なんかやな。他には狭窄を来す炎症性腸炎との鑑別も必要になる時があるから注意やな。

他の消化器系の悪性腫瘍

まとめ

今日は小腸癌についてレクチャーしたで。ポイントは2つや。

希少癌であり、かつ空腸、回腸は内視鏡で観察が難しい箇所が多く、発見が遅れる事が多い

CT検査が小腸癌に対して感度や特異度が高いという報告がある(壁肥厚や造影効果など)

こんな感じやな。普段読影してても中々小腸癌の症例に出くわす事が無いんやけど、それでも数年に1回程度は見るな。まぁそれでも十二指腸癌が多いけどな。

なんにせよこの仕事は知識と経験が重要や。過去に見た事がある症例かどうかが重要なんや。画像の違和感にさえ気がつけば調べるってとこまで行けるからな。ただ言うは易く行うは難しやで。せやから、日々の蓄積が重要なんやで。サボるなよ。

ほな、精進しいやー!