腱板断裂(supraspinatus tendon tear)

なぁ、コレちょっと見てみぃや。

なんですか、コレ?

国内の医療機関の情報や。2020年で全国に約10万件のクリニックがあんねんけど、そこの医師の平均年齢が60歳以上の割合が50%らしいで。

令和3年医療施設動態調査(厚生労働省)

令和2年医師・歯科医師・薬剤師統計の概要(厚生労働省)

内訳的には10件のクリニックがあったら、院長の年齢が60代が3施設、70代が2施設、50代以下が5施設ってな具合らしいで。

なんか衝撃的な数字やあらへん?なんかもう町のお医者さんがいなくなるんちゃうかなってレベルやん。

ちなみに2011年での代表者の年齢分布は56歳が最多やってんけど、2021年やと66歳が最多らしいねん。つまり世代交代が進んでおらへんって事やな。

このままやと10年後は今の70代院長のクリニック分の4万件近くが無くなるかもしれんで。それでもコンビニ数の5万件と比較すると多いんやけどな。

いや、むしろ今が多すぎるのかもしれんな。

腱板断裂(supraspinatus tendon tear)とは

腱板断裂の概要

さて、今日は腱板断裂についてや。

肩を動かす時に痛みが走る原因の1つや。

まず腱板の役割をざっくり言うと、上腕骨頭を肩甲骨側に引っ張ってる腱ってとこやな。せやから、腱板断裂になると上腕骨頭と関節窩の動きがスムーズにいかなくなって挙上の際などに痛みが起きんねん。最も頻度が高いのが棘上筋大結節付着部やで。

大きな意味で40肩や50肩と呼ばれる事もあるで。実は40肩(50肩)は癒着性肩関節包炎という病名もついてんねんけど、それも含めて肩関節周囲炎=40肩(50肩)というくくりで使われる事も多いわ。

ちなみに痛みの原因は断裂による炎症が原因や。せやから腱板断裂があっても炎症があらへん場合は痛みが無い人もおんねん。

有痛者は断裂してる人の4割程度という数字もあるで。

概要
腱板損傷腱板は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋から構成される腱
中年以降の男性の右肩に発症する事が多い
症状は肩の痛み(夜間痛)と挙上困難(可動域制限)
挙上する時に腕の角度が60~120度の時に痛みがあるのが特徴
誘因なく発生する事が多く、若年者の場合はスポーツが原因の事が多い
完全断裂と不全断裂に分類される
腱板断裂していても症状が無い場合もあり、痛みの原因は炎症によるもの
最も損傷しやすいのは棘上筋大結節付着部
腱板断裂の分類としてCofield分類、Goutallier分類、Thomazeau分類、Ellman分類などがある
断裂長や脂肪変性の有無、筋萎縮などで分類している

腱板断裂の分類

せっかくやから腱板断裂の分類についても記載しておこか。以下の絵でイメージしておいてくれや。

分類方法
腱板損傷断裂の深さ:完全断裂、部分断裂
断裂の大きさ:小断裂(<1cm)、中断裂(1~3cm)、大断裂(3~5cm)、広範囲断裂(5cm<)
断裂形状:三日月型、U字型、K字型
腱板損傷

腱板の解剖

腱板って何から構成されてるか知ってるか?棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つから出来てんねん。これをローテーターカフとか回旋筋腱板とか呼んでるで。これらは上腕骨頭を肩甲骨側に引き寄せる役目の他に、肩関節の挙上や回旋にも影響してるで。

肩解剖
ローテータカフ

腱板損傷の原因と臨床症状

腱板損傷の原因は転倒やスポーツなどの外傷の事が多いで。ただ、日常の何気ない動作でも損傷する事があんねん。これは加齢や腱板の変性なんかが原因と言われてるな。

発症年齢で見ると、中年以降に多くて50代以上の25%で発症するとまで言われてんねん。スポーツが原因で若い人も発症するで。

治療法としては、保存療法と外科的療法があるで。ただ腱板損傷の厄介なところが腱板は血行状態が他の部位と比較して悪い事が多いねん。つまり保存的治療でも自然回復が難しいケースが多いって事やな。このあたりは膝の半月板にも通じるものがあるで。

外科的治療については、内視鏡(関節鏡)で断裂した部分を縫合するんや。ただ再断裂の可能性があるから、手術後も安静保持が必要やねん。スポーツに復帰するのは早くても半年はかかるとの事や。もちろん手術後のリハビリは必須やで。

画像所見

腱板損傷の画像所見

次に画像所見についてや。

まず単純写真やCTやと腱板そのものは見えへん。ただ腱板損傷が進行すると肩峰と上腕骨頭、肩甲上腕関節面の狭小化を認めるで。これは腱板が衝撃で薄くなった事を意味してるんや。

MRIやと断裂部における液体貯留などでT2強調や脂肪抑制画像で高信号を認めるで。単純写真なんかと比較すると見やすさは段違いやな。

以下が各モダリティの特徴や。内容を1度目を通しておいてくれや。

モダリティ画像所見
単純写真初期は指摘が難しい(腱板そのものが抽出出来ない)
進行すると肩峰と上腕骨頭、肩甲上腕関節面の狭小化を認める
MRI断裂部が液体貯留するためにT2強調や脂肪抑制で高信号になる
腱の菲薄化や部分断裂、変性連続性不整も認める(部分断裂の場合は断裂の程度が50%以上か以下かを確認する)
矢状断が分かりやすい
断裂後に時間経過をすると筋が萎縮、脂肪変性を来たしT1強調で高信号になる(fatty atrophy)

他に重要な事として、腱板損傷に随伴するMRI所見があんねん。つまり、この所見があったら腱板損傷も疑えって事やな。

腱板損傷随伴所見肩峰下-三角筋下滑液包の液体貯留
肩峰下骨棘や烏口肩峰靱帯の肥厚
腱の退縮や筋萎縮、脂肪変性
大結節前上部の嚢胞性変化
筋肉の浮腫や嚢胞性変化
上腕二頭筋長頭腱の断裂や内方変位
肩鎖関節嚢胞

実際の症例

60代男性で挙上困難で精査となった例や。完全断裂のパターンやな。

肩MRI-腱板損傷(完全断裂)

70代男性でこれも挙上困難で精査になった例や。T2強調で腱内部に信号上昇を認めるやろ。部分断裂(腱内、関節面)>完全断裂の症例やで。

MRI画像(腱板部分断裂)

腱内部分断裂の例で肩峰下-三角筋下滑液包の液体貯留も認めるで。

肩MRI-腱板損傷(内部分断列)

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断についてや。

腱板断裂と他の鑑別というよりは、部分断裂でどこが断裂しているのか、断裂の程度は50%以上かどうかなんかが重要や。50%以上で手術適応になるらしいで。肩関節周囲の痛みの原因になりえるインピンジメント症候群や脱臼については以下でもレクチャーしてるで。

ちなみに肩痛の原因は整形領域だけとは限らへんで。代表的なものにPancoast腫瘍があんねん。肩痛で精査して異常無しやってんけど、よくよく精査してみたら肺癌が原因やったというケースも少なからずあるらしいで。

まとめ

今日は腱板損傷についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

誘因無く発症する事があり挙上の際の痛みが特徴(痛みが無い場合もある)

完全断裂と部分断裂に分けられ、棘上筋大結節付着部が好発部位

腱板損傷の随伴MRI所見

この3つを覚えておけば大丈夫やろ。腱板損傷はよく遭遇するからな。

個人的な感覚やと交通事故とか転倒とか外傷での精査で見つかる事が多いような気がするな。外傷の場合は所見が派手(断裂)になる事が多いで。

これから医者の高齢化が進んでるって事は、当然放射線科の医者も高齢化してるって事やからな。ますます画像が読める技師はんが重宝されるんちゃうんかなと思うで。その時までに自分の市場価値を高めておくんやで。

ほな、精進しいやー!