腱板断裂(supraspinatus tendon tear)

なんですか、コレ?

国内の医療機関の情報や。
2020年時点で全国に約10万件のクリニックがあんねんけど、そこの医師の平均年齢が60歳以上の割合が50%らしいで。
高齢化はこんなところにも影響が出てきてんねんな。

腱板断裂(supraspinatus tendon tear)とは

腱板断裂の概要

さて、今日は腱板断裂についてや。

肩を動かす時に痛みが走る原因の1つやな。若い人はスポーツ外傷、高齢者では転倒して負傷する事なんかが多いで。

まず腱板とはをざっくり言うと、上腕骨頭を肩甲骨側に引っ張ってる腱やねん。というのも、肩甲骨と骨頭は股関節のように臼蓋でカバーされてる訳やあらへんねん。これが可動域が広いっていうメリットにもなってんけど、腱板があらへんと保持できへんのや。

これが何らかの原因で腱板断裂になると、上腕骨頭と関節窩の動きがスムーズにいかなくなって挙上の際などに痛みが起きんねん。最も頻度が高いのが棘上筋大結節付着部やで。

ちなみに痛みの原因は断裂による炎症が原因や。せやから腱板断裂があっても炎症があらへん場合は痛みが無い人もおんねん。

有痛者は断裂してる人の4割程度という数字もあるで。

ちなみによく言われる40肩や50肩は、癒着性肩関節包炎という病名があんねんけど、世間的には腱板損傷(断裂)=40肩(50肩)というくくりで使われてる事も多いな。

  • 腱板は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋から構成される腱
  • 中年以降の男性の右肩に発症する事が多い
  • 症状は肩の痛み(夜間痛)と挙上困難(可動域制限)
  • 挙上する時に腕の角度が60~120度の時に痛みがあるのが特徴
  • 誘因なく発生する事が多く、若年者の場合はスポーツが原因の事が多い
  • 完全断裂と不全断裂に分類される
  • 腱板断裂していても症状が無い場合もあり、痛みの原因は炎症によるもの
  • 最も損傷しやすいのは棘上筋大結節付着部
  • 腱板断裂の分類としてCofield分類、Goutallier分類、Thomazeau分類、Ellman分類などがある
  • 断裂長や脂肪変性の有無、筋萎縮などで分類している

腱板断裂の分類

せっかくやから腱板断裂の分類についても記載しておこか。以下の絵でイメージしておいてくれや。

分類方法
  1. 断裂の深さ:完全断裂、部分断裂
  2. 断裂の大きさ:小断裂(<1cm)、中断裂(1~3cm)、大断裂(3~5cm)、広範囲断裂(5cm<)
  3. 断裂形状:三日月型、U字型、K字型
腱板損傷

腱板の解剖

腱板って何から構成されてるか知ってるか?棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つから出来てんねん。

これをローテーターカフとか回旋筋腱板とか呼んでるで。これらは上腕骨頭を肩甲骨側に引き寄せる役目の他に、肩関節の挙上や回旋にも影響してるで。

肩解剖
ローテータカフ

腱板損傷の原因と臨床症状

原因

腱板損傷の原因は、転倒やスポーツなどの外傷の事が多いで。

ただ高齢者では日常の何気ない動作でも損傷する事があんねん。これは加齢や腱板の変性なんかが原因と言われてるな。

発症年齢で見ると、中年以降に多くて50代以上の25%で発症するとまで言われてんねん。結構多いな。

スポーツ外傷や交通外傷が原因で若い人でも発症するで。

症状

症状は痛みがほとんどや。夜間痛や挙上不可なんかが代表的な症状やで。

治療法

治療法としては、保存療法と外科的療法があるで。ただ腱板損傷の厄介なところは、腱板の血行状態が他の部位と比較して悪い事が多いねん。つまり保存的治療でも自然回復が難しいケースが多いって事やな。このあたりは膝の半月板にも通じるものがあるで。

外科的治療については、内視鏡(関節鏡)で断裂した部分を縫合するんや。50%以上の断裂で手術が選択肢になるらしいで。

ただ再断裂の可能性があるから、手術後も安静保持が必要やねん。スポーツに復帰するのは早くても半年はかかるとの事や。

もちろん手術後のリハビリは必須やで。

画像所見

腱板損傷の画像所見

次に画像所見についてや。

まず単純写真やCTやと腱板そのものは見えへん。ただ腱板損傷が進行すると肩峰と上腕骨頭、肩甲上腕関節面の狭小化を認めるで。これは腱板が衝撃で薄くなった事を意味してるんや。

MRIやと断裂部における液体貯留などでT2強調や脂肪抑制画像で高信号を認めるで。単純写真なんかと比較すると見やすさは段違いやな。

以下が各モダリティの特徴や。1度目を通しておいてくれや。

  • 単純写真
    • 初期は指摘が難しい(腱板そのものが抽出出来ない)
    • 進行すると肩峰と上腕骨頭、肩甲上腕関節面の狭小化を認める
  • MRI
    • 断裂部が炎症や液体貯留するためにT2強調や脂肪抑制で高信号になる
    • 腱の菲薄化や部分断裂、変性連続性不整も認める(部分断裂の場合は断裂の程度が50%以上か以下かを確認する)
    • 矢状断が分かりやすい事がある
    • 断裂後に時間経過をすると筋が萎縮、脂肪変性を来たしT1強調で高信号になる(fatty atrophy)

他に重要な事として、腱板損傷に随伴するMRI所見があんねん。つまり、この所見があったら腱板損傷も疑えって事やな。

  • 腱板損傷随伴所見
    • 肩峰下-三角筋下滑液包の液体貯留
    • 肩峰下骨棘や烏口肩峰靱帯の肥厚
    • 腱の退縮や筋萎縮、脂肪変性
    • 大結節前上部の嚢胞性変化
    • 筋肉の浮腫や嚢胞性変化
    • 上腕二頭筋長頭腱の断裂や内方変位
    • 肩鎖関節嚢胞

実際の症例

60代男性で挙上困難で精査となった例や。完全断裂のパターンやな。

左から脂肪抑制画像、T2WIの斜冠状断、仕様朴正画像の矢状断

70代男性で、これも挙上困難で精査になった例や。T2強調で腱内部に信号上昇を認めるやろ。部分断裂(腱内、関節面)>完全断裂の症例やで。


こっちは腱内部分断裂の例で、矢状断で肩峰下-三角筋下滑液包の液体貯留も認めるで。

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

鑑別診断についてや。肩関節周囲の痛みの原因になり得るインピンジメント症候群や脱臼については以下でもレクチャーしてるで。

ちなみに肩痛の原因は整形領域だけとは限らへんのや。

代表的なものにPancoast腫瘍があんねん。肩痛で精査して異常無しやってんけど、よくよく精査してみたら肺癌が原因やったというケースも少なからずあるらしいで。

まとめ

今日は腱板損傷についてレクチャーしたで。ポイントは4つや。

中年以降の挙上時の痛みが主な症状(痛みが無い場合もある)

腱板は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋で構成されている

完全断裂と部分断裂に分けられ、棘上筋大結節付着部が好発部位

腱板損傷の随伴MRI所見を覚えておく

これらを覚えておけば大丈夫やろ。

高齢者の場合はちょっとした転倒でも損傷する場合があるから注意が必要やで。

ちなみに医者の高齢化も進んでるって事は、当然放射線科の医者も高齢化してるって事やからな。ますます画像が読める技師はんが重宝されるんちゃうんかなと思うで。

冒頭のクリニック院長年齢やと、10施設中に60代が3施設、70代が2施設、50代以下が5施設ってな具合らしいしな。

まぁ頑張りや。
ほな、精進しいやー!

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