なんであの患者さんキレてたん?「俺はこの検査を受ける為にわざわざ県外から来てるんだ」とか、「昨日、財布を落としてイライラしてるんだ!」とか言ってたけど、検査全然関係無いやんって思ったけど。
先輩も同じ事言ってましたよ。手に負えなくてヘルプをお願いしたんですけど、「それはただ文句を言いたいだけの人だから解決は不可能。だからサンドバックになってこいって」ひどくないですか?
稀におんねん。そういう人が。お客は神様という言葉を勘違いしてる人がな。
これはお客を神様のように扱えって意味で、お客が神な訳やらへんのやけどな。
そもそも神様ならそんな理由で怒らへんと思うねん。
もくじ
高安動脈炎(Takayasu arteritis)とは
高安動脈炎の概要
さて、今日は高安動脈炎についてレクチャーしてくで。高安動脈炎は大動脈炎症候群と呼ぶ事もあるな。
高安動脈炎は大血管や主要分枝などに生じる血管炎や。1:9で女性に多く20代が最も好発する年代やねん。でも中年でも発症する事もあるで。
高安動脈炎には特徴的な臨床所見があんねん。それは両上肢の血圧差がある事や。これは鎖骨下動脈なんかが炎症で狭窄して左右で非対称になる事が原因やねん。別名、脈無し病とも言われてるで。なんか右手だけだるいとか、そんなんが切っ掛けで発見される事もあるらしいで。
他の臨床症状は、狭窄や閉塞した部位に応じて出てくるで。脳血管が狭窄したら、そこに該当する機能に障害が出てくんねん。
治療法は投薬治療(ステロイド投与)なんやけど、減薬していく途中で7割程度で再燃してしまうとの報告もあんねん。他には外科的治療で狭窄部位に対して再建術が行われるんや。割合的には20%程度らしいな。
予後に関しては、検査機器の進歩で早期発見が可能になって、長期の生存も十分に可能となってるらしいで。
特徴 | |
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高安動脈炎(大動脈炎症候群) | 女性に多く20代で好発 年間500名程度が新規で罹患している 両上肢の血圧差が重要な臨床所見で脈なし病とも呼ばれる 他の臨床症状は継続する微熱や高熱、全身倦怠感など 不明熱の精査で見つかる事も多い 稀に冠動脈や頚動脈などにも狭窄を生じる事がある |
診断基準
以下は厚生労働省からの診断基準からの抜粋や。参考までにな。
診断 | 症状のうち1項目以上+ 検査所見のいずれかを認め、鑑別診断を除外したもの。 |
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症状 | 1.全身症状:発熱、全身倦怠感、易疲労感、リンパ節腫脹(頸部)、若年者の高血圧 (140/90mmHg以上) 2.疼痛:頸動脈痛(carotidynia)、胸痛、背部痛、腰痛、肩痛、上肢痛、下肢痛 3.眼症状:一過性又は持続性の視力障害、眼前明暗感、失明、眼底変化(低血圧眼底、高血圧眼底) 4.頭頸部症状:頭痛、歯痛、顎跛行※a、めまい、難聴、耳鳴、失神発作、頸部血管雑音、片麻痺 5.上肢症状:しびれ感、冷感、拳上困難、上肢跛行※b、上肢の脈拍及び血圧異常(橈骨動脈の脈拍減弱、消 失、10mmHg以上の血圧左右差)、脈圧の亢進(大動脈弁閉鎖不全症と関連する) 6.下肢症状:しびれ感、冷感、脱力、下肢跛行、下肢の脈拍及び血圧異常(下肢動脈の拍動亢進あるいは 減弱、血圧低下、上下肢血圧差※c) 7.胸部症状:息切れ、動悸、呼吸困難、血痰、胸部圧迫感、狭心症状、不整脈、心雑音、背部血管雑音 8.腹部症状:腹部血管雑音、潰瘍性大腸炎の合併 9.皮膚症状:結節性紅斑 ※a 咀嚼により痛みが生じるため間欠的に咀嚼すること ※b 上肢労作により痛みや脱力感が生じるため間欠的に労作すること ※c「下肢が上肢より10~30mmHg高い」から外れる場合 |
検査所見 | 画像検査所見:大動脈とその第一次分枝の両方あるいはどちらかに検出される(※a)、多発性またはびまん性の肥厚性病変(※b、※c)、狭窄性病変(閉塞を含む)、あるいは拡張性病変(瘤を含む)※d の所見 ※a大動脈とその一次分枝とは、大動脈(上行、弓行、胸部下行、腹部下行)、大動脈の一次分枝(冠動脈を含む)、肺動脈、心とする。 ※b多発性とは、上記の2つ以上の動脈または部位、大動脈の2区域以上のいずれかである。 ※c肥厚性病変は、超音波(総頸動脈のマカロニサイン)、造影CT、造影MRI(動脈壁全周性の造影効果)、PET-CT(動脈壁全周性のFDG取り組み)で描出される。 ※d狭窄性病変、拡張性病変は、胸部X線(下行大動脈の波状化)、CT angiography、 MR angiography、心臓超音波検査(大動脈弁閉鎖不全)、血管造影で描出される。上行大動脈は拡張し、大動脈弁閉鎖不全を伴いやすい。慢性期には、CTにて動脈壁の全周性石炭化、CT angiography、 MR angiographyにて側副血行路の発達が描出される。 画像診断上の注意点:造影CTは造影後期相で撮影。CT angiographyは造影早期相で撮影、三次元画像処理を実施。血管造影は通常、血管内治療、冠動脈・左室造影などを同時目的とする際に行う。 |
鑑別診断 | 動脈硬化症、先天性血管異常、炎症性腹部大動脈瘤、感染性動脈瘤、梅毒性中膜炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、血管型ベーチェット病、IgG4関連疾患 |
高安動脈炎の重症度分類 III度以上を重症の対象とする。
I度 | 高安動脈炎と診断しうる自覚的(脈なし、頸部痛、発熱、めまい、失神発作など)、他覚的(炎症反応陽性、上肢血圧左右差、血管雑音、高血圧など)所見が認められ、かつ血管造影(CT、MRI、MRA、FDG-PETを含む)にても病変の存在が認められる。 ただし、特に治療を加える必要もなく経過観察するかあるいはステロイド剤を除く治療を短期間加える程度。 |
II度 | 上記症状、所見が確認され、ステロイド剤を含む内科療法にて軽快あるいは経過観察が可能 |
III度 | ステロイド剤を含む内科療法、あるいはインターベンション(PTA)、外科的療法にもかかわらず、しばしば再発を繰り返し、病変の進行、あるいは遷延が認められる。 |
IV度 | 患者の予後を決定する重大な合併症(大動脈弁閉鎖不全症、動脈瘤形成、腎動脈狭窄症、虚血性心疾患、肺梗塞)が認められ、強力な内科的、外科的治療を必要とする。 |
V度 | 重篤な臓器機能不全(うっ血性心不全、心筋梗塞、呼吸機能不全を伴う肺梗塞、脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、虚血性視神経症、腎不全、精神障害)を伴う合併症を有し、厳重な治療、観察を必要とする。 |
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
- 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
- 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
- なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者である
※厚生労働省. 「平成27年1月1日施行の指定難病 (告示番号1~110) 高安動脈炎 概要、 診断基準等
画像所見
高安動脈炎の画像所見
次に画像所見やな。
1番大きな所見が血管壁の肥厚や。他には活動性評価なんかもあるんやけど、血管壁肥厚にはUSや造影CT、造影MRIが、活動性評価には18FDG-PETが、拡張評価には血管造影が有効やと診療ガイドラインに記載されとるで。
肉芽腫性変化による壁肥厚から時間経過と共に線維化していく事で、狭窄やPRES、RCVS、時には脳梗塞の所見が確認される事もあんねん。狭窄部位は、総頚動脈、鎖骨下動脈、腎動脈において頻度が高いで。ソウケイサジンや。
ソウケイサジン?
アホ、語呂合わせや。各々の頭文字を取って総頚鎖腎っちゅーわけや。こっちの方が覚えやすいやろ。なぬっ?そんな事あらへんって?
まぁとにかくや、高安動脈炎はまずは血管壁の肥厚が重要な所見やから、そこをちゃんと拾えるようにな。
ほんで選択肢の1つに上げられるまでになるとかなりええで。
画像所見 | 他 | |
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高安動脈炎 | 急性期は血管壁肥厚などの肉芽腫性変化、慢性期には線維化による狭窄など 狭窄によるRCVSやPRES、CIなどの所見が見られる事もある | 血管壁肥厚にはUSや造影CT、造影MRIが、活動性評価には18FDG-PETが、拡張評価には血管造影が有効 狭窄部位は総頚動脈、鎖骨下動脈、腎動脈が多い |
実際の症例
画像については該当するのが見つからへんかったから、Radiopaediaなんかで確認しとくとええで。
っていうか見た事が無い人は必ず1度は確認しておき。Radiopaediaやなくても日本語のサイトは検索すれば出てくるからな。
鑑別診断のポイント
血管壁肥厚病変
次に鑑別診断や。これは自ずと血管壁肥厚を認める疾患って事になるな。
血管型Behcet症候群やIgG4関連大動脈周囲炎、血管炎症候群などや。
高安動脈炎は肺動脈にまで病変があるかどうかが鑑別の助けになるで。なぜなら肺動脈は末梢まで弾性線維があるからなんやけども、具体的な所見としては肺動脈陰影の減少や透過性の亢進や。もちろん肺動脈に所見があれば高安動脈炎の疑いが強くなるで。
ここまでやなくても、血管壁の肥厚や狭窄なんかを見たら、臨床所見と照らし合わせて高安動脈炎を鑑別診断の1つにあげられれば万々歳や。色々な症例パターンもあるしな。
総頚動脈、鎖骨下動脈ならまだしも、中々1回のMRI検査で腎動脈までは検査せーへん事がほとんどやからな。脈の左右差が記載されてればまだしも、CIやPRESの所見があったからといって画像診断だけで高安動脈炎の診断は難しいかもしれんな。
まとめ
今日は高安動脈炎についてレクチャーしたで。今回のポイントは1つや。
高安動脈炎はソウケイサジン
これにつきるで。総頚動脈、鎖骨下動脈、腎動脈の狭窄の狭窄と臨床症状を加味するんや。不明熱で上記に狭窄があったら鑑別の1つとして考慮してもええレベルやと思うで。
今回は脳疾患ととちょっと違う形になるかもしれんけど、高安動脈炎で脳血管が狭窄する事もあるからな。これを機に覚えておくとええで。
さて、今日はちょっと長なったな。若造から意味不明なクレームが来る前に終わりにしとこ。
ワシもある意味、神様みたいなもんやからな。色々と忙しいねん。
ほな、精進しいやー!