仙骨嚢腫(Tarlov cyst)

なんでアイツがこの事知ってんねん・・・

どうしたんですか?1週間前にこっそりお漏らししたのがバレたんですか?

せやねん。講義中だったんやけど、限界ギリギリやったから誰にも分からんようにひっそりと5滴ずつ漏らしたのに。

・・・っておい!何で知ってんねん!桑さん、もう終わりや。

しかし秘密ってのは必ずバレると思っておいた方がええな。恐ろしいもんやで。
ちなみに上司たるもの、秘密を守ったりするような信頼は必須やで。これ超重要やから覚えとき!

仙骨嚢腫(Tarlov cyst)とは

さて、一方でワシがやってる本レクチャーは秘密にせんと、どんどん拡散せーや。ガンガン拡散してワシを有名にしてくれや!期待してるで!

今日は仙骨嚢腫についてレクチャーしてくで。まぁこれも普段検査してて、比較的よく見る疾患やな。

仙骨嚢腫の概要

仙骨嚢腫ってのは、その名の通り仙骨部に嚢胞ができてしまう状態や。1938年にTarlovによって初めて報告されてんねんけど、これは脊髄膜が大きくなって嚢胞を形成すんねん。この時、場所や大きさによっては神経根を圧迫したりして、下肢痛などの症状が出る事もあるんやけど、基本的に無症状で偶然発見される事の方が多い疾患や。発生部位はS2-3の神経根部分に多いで。

また脊髄領域の髄膜嚢胞(meningeal cyst)はNaborsらによると次の3つに分類されてるで。

  • type1:神経根を内部に含まない骨膜外嚢胞
  • type2:神経根を内部に含む骨膜外嚢胞
  • type3:硬膜内嚢胞
椎体の解剖

仙骨嚢胞が出来る原因

そもそもの原因やけど嚢腫内の圧力上昇によって増大してくんねん。この圧力の原因は、出産や外傷、炎症なんかの影響が考えられているんやけど、正確には分かってへんねん。くも膜下腔との交通が無い事もファクターの1つやと考えられてるで。つまり脳脊髄液の逃げ場が無いから嚢胞が増大するって事やな。

臨床症状

臨床症状は坐骨神経痛や腰痛、下肢の痺れ、場合によっては膀胱直腸障害が起きる事もあんねん。S1-3は下肢の後面を主に支配してるから、その部分にあった症状が出るで。

その一方で上で話した通り無症状の事も多いんや。

デルマトーム

治療法

治療については、症状があるかどうかでまず分かれるで。症状があらへん場合は基本的に放置や。

症状がある場合は、まず保存療法が選択される事が多いで。保存的治療の効果があらへんくて、かつ症状が重い時は外科的手術の対象になんねん。

ただし、症状がある(症候性)場合は全体の20%程度である事、症候性であっても直径が1.5cm以下のものは外科的治療を行っても症状改善度が高く無いというデータがあるで。

J M Voyadzis, P Bhargave et al.:Tarlov cysts:a study of 10 cases with review of the literarure

M.Tnaka,S.Nakahara et al.:Surgical results of sacral perineural (Tarlov) cysts

画像所見

仙骨嚢腫の画像所見

次に画像所見について話していくで。

単純写真ではなかなか分からない事も多いで。診断にはMRIが一番有用や。基本的に嚢胞やから、それに準じた信号強度になるで。

  • T1WI 低信号
  • T2WI 高信号(脊髄液よりも高信号になる事が多い)

こんな感じやな。それほど難しい所見やあらへんと思うで。ただボケっと撮影してるとスルーしてしまうから注意せなアカンで。

実際の症例

ほな実際の画像をみていこか。次の症例は20代で腰痛精査で実施したMRIや。S2に仙骨嚢胞を認める事が出来ると思うで。

よく見ると、嚢胞内に神経根を含んでいるのが分かると思うねん。Naborsらの分類によると、type2になるかな。

仙骨嚢腫MRI画像
左からT2WI、3D-T1、T2WI-axi

次の症例や。こっちは30代の例でヘルニア疑いで検査して見つかった例や。S2付近に仙骨嚢腫を認める事が出来ると思うで。

仙骨嚢腫MRI画像
左上からT2WI、T1WI、左下からT2-FS、T2WI-axi

鑑別診断のポイント

鑑別疾患

さて鑑別診断についてやな。これは神経鞘腫なんかが該当するで。神経鞘腫との鑑別ポイントは、

  • 嚢胞内に神経根が同定できるかどうか
  • 造影効果があるかどうか

この2点でおおよそ鑑別することが出来んねん。もちろん神経鞘腫の方が造影効果があるで。

他に関連する所だと次のようなものがあるな。合わせて確認しておいてくれや。

まとめ

そろそろ本日のまとめやな。今日は仙骨嚢腫についてレクチャーしたで。ポイントは3つ。

S2-3が好発部位で、あまり自覚症状がない腫瘍

神経鞘腫との鑑別は神経根の同定と造影効果の有無

無症状なら基本的に放置しておいても問題ない

こんな感じやな。症候性は20%程度って事は、残りの80%は無症状って事でもあるから、特段症状が酷くない限りは臨床的にあまり問題となる事は少ないな。

まぁそれほど頻繁に遭遇するもんでも無いけど、これを機に覚えておいてもらえたらええかなと思うてる。

ってな訳で今日のレクチャーはこれくらいにしよかなと思うてんねんけど、レクチャー終了時にダッシュでSNSで拡散するんやで。「桑さんっていうヤバいドクターがおるで!」ってな。

お漏らしドクターで拡散しておきますね。

それやと違う意味になってまうやん!ヤバイの意味が違ってくるやん!

ったく自分には敵わんで。

もうええわ、今日は終わりにするからな。

ほな、精進しいやー!