腱鞘炎(tenosynovitis)

先生、この所見なんですけど、緊急性は高いですか?

あぁこれな。これは大丈夫なやつや。ただスルーはアカンやつやから指摘しておくべき所見やな。

ありがとうございます!

・・・ええやん。

腱鞘炎(tenosynovitis)とは

腱鞘炎の概要

・・・うん、ええな!

ふふふ、さて、今日は腱鞘炎についてレクチャーしてくで。

まず腱鞘炎とはなんぞやってとこからやな。教科書にはこう記載されとる。

「腱鞘炎とは腱を包む滑膜組織である腱鞘に炎症を生じたものである」

まんまやな。じゃあ、腱鞘はなんぞやって話しなんやけど、腱鞘は腱を包んでいる組織なんや。

この組織が何らかの原因で厚くなったり硬くなる事で、中を通る腱との摩擦で炎症を起こすねん。これが腱鞘炎の正体や。

原因としてはパソコン操作やスポーツ、加齢などがあるで。以下が概要や。

  • 腱を包む滑膜組織の腱鞘に何らかの原因で肥厚や硬くなる事で、腱との摩擦により炎症を引き起こした状態
  • 原因は、PC操作などの繰り返し動作やスポーツ、加齢、リウマチなどがある
  • 臨床症状は疼痛や腫脹、熱感など
  • また腱に繋がる部位の動きが悪くなる
  • 腱鞘は特に手首や指付近に多いため、手に発症するのが多い
  • いわゆる「ばね指」は腱鞘炎が進行した状態

ドケルバン病

腱鞘炎の1つにドケルバン病ってのがあるんや。de Quervain(デケルバン)病とか狭窄性腱鞘炎(stenosing tenosynovitis)とも呼ばれるで。

これは短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通る腱鞘に炎症が起きた状態の事を言うねん。

原因は母指の使いすぎと言われとる。キーボードを使ったりスマホを使う現代人には多いのかもしれんな。他には妊娠出産期や更年期、手をよく使うスポーツ選手にも多いと言われとる。

母指側の手首付近に腫脹や圧痛を認めたり、フィンケルシュタインテスト変法(母指と一緒に手首を小指側に曲げると痛みが増強する事)が陽性やとより疑われるで。イメージとしては、片方の手で親指を掴んで小指側に引っ張るような感じやな。

治療は基本的に保存料方法で、それでも改善せんときは腱鞘切開を行って治療するとの事や。

ばね指

ばね指も腱鞘炎が関係している疾患や。指の曲げ伸ばし時にひっかかりのような現象(ばね現象)があると、ばね指と診断されんねん。

これは指の酷使で炎症が起きて、腱の肥大と腱鞘の肥厚が進行して腱の通過障害を起こした状態やねん。

進行すると指が動かなくなる事もあるで。主な症状は指の疼痛、腫脹、熱感なんかや。朝方に症状が強い事が多いらしいで。

妊娠出産期、更年期の女性、指を使うスポーツ選手、仕事で指をよく使う人、糖尿病、リウマチ患者、透析患者に多く発生して、糖尿病、リウマチ、透析患者は多発性になる事もあるらしで。

ちなみに母指、中指に多いと言われとる。

治療法は保存療法(投薬、腱鞘内ステロイド注射)なんかで対応して、それでも効果があらへん、もしくは再発を繰り返す場合は外科的治療(腱鞘切開)も選択肢に入ってくるとの事や。

ドケルバン病とばね指

指~手関節の解剖

今回は手の解剖を載せておくで。ドケルバン病では、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が重要やで。

指や手の解剖

腱鞘炎の原因と臨床症状

原因

腱鞘炎の原因はオーバーユースによるものがほとんどや。酷使によって腱と腱鞘が炎症を起こして痛みが発生するんやで。

スポーツはもちろんの事、パソコン操作や、育児家事なんかでも発症する原因になったりすんねん。

症状

臨床症状は疼痛やな。ホンマに痛いらしいで。

治療法

治療法はまずは保存療法で、それでも改善せんかったら腱鞘切開のような外科的治療になるとの事や。

自己判断で放置すると進行してまう事があるらしいから注意やで。

画像所見

腱鞘炎の画像所見

画像所見については、単純写真やCTやと判別が難しいで。

MRIでの所見は、T1強調で低信号、T2強調で高信号の病変が腱に沿って認められるんや。これは腱鞘内に液体貯留がある事を反映してんねん。肥厚した腱鞘は造影でよく濃染されるから、これも鑑別の手助けにもなるな。

  • 単純写真やCTだと判別が難しい
  • MRIでは液体貯留を反映してT1強調で低信号、T2強調で高信号が腱に沿って認められる
  • 肥厚した腱鞘は造影でよく濃染され液体と鑑別が出来る
  • 慢性期の腱鞘炎では線維化を反映してT2強調で低信号を示し、予後不良の所見とされている

実際の症例

実際の症例や。70代の女性で草むしり後からの疼痛があって、その精査や。浅/深指屈筋の周囲に液体貯留があるのが分かるやろ。

臨床所見と合わせて腱鞘炎と診断された症例や。

手MRI-腱鞘炎
脂肪抑制画像

次の症例は50代男性で尺骨側の疼痛で精査となった例や。該当の部位に信号上昇を認めるのが分かると思う。これも臨床所見と合わせて尺側手根伸筋腱の腱鞘炎と診断されたで。

ちなみに、尺側手根伸筋腱の腱鞘炎は、デケルバン病に次いで多い部位やで。


次はドケルバン病の例や。該当の箇所が高信号を呈してるのが分かると思う。参考までに載せておくで。

手関節MRI-ドケルバン病

鑑別診断のポイント

尺側手根伸筋腱炎 TFCC損傷

鑑別診断は手首に関して言えば、尺側手根伸筋腱炎やTFCC損傷なんかや。

いずれも同じような部位に炎症所見があるから解剖を良く知っておく事が重要やで。

まとめ

今日は腱鞘炎についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

腱鞘炎は臨床所見で診断が可能な場合が多く、画像診断は腫瘤性病変、腱の病変との鑑別のために行う

腱鞘に炎症がある場合はMRIでT2(もしくは脂肪抑制)画像で高信号を示す

腱鞘炎の種類にドケルバン病やばね指がある

こんな感じやな。今回は腱鞘炎だけやなくて、それに関係するドケルバン病やばね指も話したで。

こうやって少しずつ知識を増やしていって、かつ自分でも使えるようになれば最高や。近道はあらへん。1歩1歩や。

しっかし、ちょっと感心したで・・・

以前は所見について聞いてくる事なんてほぼあらへんかったやん。それが今や相談しに来とる。ワシは成長を実感しとるで。

いよいよこのレクチャーを卒業する日も近づいてきたって事かもしれんな。

「いつまでもいると思うな親と桑さん」や。

嬉しい反面、寂しくもあるで。ただそんな事ばかり言ってられへんな。

ほな、精進しいやー!

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