子宮筋腫茎捻転(torsion of uterine myoma)

いたた!子宮筋腫が捻転したかもしれん!

あなた、男性でしょ。

子宮筋腫茎捻転(torsion of uterine myoma)とは

子宮筋腫茎捻転の概要

冗談やがな。そんな冷静にツッコまんでもええやん。ちょっとしたアイスブレイクやがな。

ってな訳で、今日のレクチャーを早速始めていくで。

子宮筋腫茎捻転の概要

今日は子宮筋腫茎捻転や。

子宮捻転は比較的稀な疾患ではあるんやけど、定義としては、

「子宮が長軸方向に沿って45度以上回転した状態」

となってて、子宮筋腫が大きく関係してくるんや。

簡単に言うと、何らかの原因で子宮筋腫が捻れてしまっている状態や。

閉経前に起きる事が多くて、逆に閉経後はあまり聞かへん。

子宮筋腫が大きく関係してくるから、まずは簡単なおさらいからしてくで。

子宮筋腫とは

子宮筋腫は平滑筋由来の良性腫瘍や。大きい物は数十cmになる事もあって、女性ホルモンによって増大すると考えられてるで。

実はかなりの頻度で発生してて、性成熟期女性の~40%程度に認められるとも言われてんねん。

子宮筋腫には発生する場所によって3種類に分類されてて、以下の通りや。

  1. 漿膜下筋腫
  2. 筋層内筋腫
  3. 粘膜下筋腫

これに頸部筋腫も含めて4つで分類するパターンもあるけどな。

この中でどれが捻転しやすいか、言い換えれば急性腹症の原因となる子宮筋腫か分かるか?

それは「漿膜下筋腫」や。

これは筋腫が出来る場所を考えてみれば分かるで。

子宮は内側から、

  1. 子宮腔
  2. 内膜
  3. 筋膜
  4. 漿膜

という形で形成されてるのは知ってるよな?漿膜を腹膜と合わせて子宮外膜とも呼んだりするな。

漿膜下筋腫は、その名の通り筋腫が漿膜下に発生するんねん。

解剖学的に漿膜下筋腫は発育するに従って茎を有する腫瘤として外に突出しやすいねん。これは下記の図を見てみると分かりやすいな。

他の部位の筋腫やと粘膜下筋腫にも捻転が起こる事があるんやけど、頻度としては漿膜下筋腫の方が多いわ。

子宮筋腫 種類

ちなみに余程大きくなって、症状が出てこーへん限りは経過観察する事が多いな。

子宮筋腫については子宮癌のページでも話してるから、そっちも参考にしてみてくれや。

茎捻転の原因

子宮筋腫茎捻転の原因

次に捻転の原因やけど、外部からの直接刺激性や、妊娠による子宮の増大、分娩時の子宮の変化なんがきっかけで起きると言われとる。

よく聞くのが、妊娠や分娩のような子宮が急激に大きくなったり小さくなったりする時に発生しやすいって話やな。

子宮は前屈とか後屈があるくらいで、もともと固定が緩い臓器でもあんねん。

元々(漿膜下)子宮筋腫を持ってて、その上で子宮に何らかの変化があった時に発生する事があるって話やな。

あと未産婦に多いのと、筋腫が大きいほど不可逆性となりやすい(つまり捻転しにくい)と言われてるで。

臨床症状と治療法

子宮筋腫茎捻転の臨床症状

子宮筋腫自体の臨床症状は腹部違和感、過多月経、不正性器出血などがあんねんけど、無症状の事もあるで。

多くは筋腫が捻転すると下腹部痛や発熱、腹膜刺激症状、ショックなどの急性腹症症状が出てくるんやけど、これを放置すると静脈うっ滞からの出血性梗塞、さらに動脈も閉塞すると壊死にまで進行すんねん。

捻転で虚血、壊死になるって事やな。

そこに感染が加わると腹膜炎から敗血症にまでなって、致死的にもなり得るから注意が必要やねん。

ちなみに同じような病態の卵巣茎捻転と比較すると、子宮茎捻転の方が疼痛レベルは大きいらしいな。

何にせよ一刻も早く対処が必要な状態って事や。

子宮筋腫茎捻転の治療法

治療法は外科的に早急に捻転を解除する事や。

この時、筋腫切除術も行われる事があるで。

画像所見

子宮筋腫茎捻転の画像所見

子宮筋腫茎捻転の画像所見

続いて画像所見やけど、これも卵巣捻転と同様に茎捻転の同定が重要やねん。

捻転を疑う所見として、造影効果の欠損と腫瘤内の出血なんかがあるわ。虚血や壊死になってくると造影効果はあらへんで。

ワンポイントとして、どうしても横断像だけだと分かりずらい事も多いから適時、矢状断や冠状断を追加するんやで。

常に「どうやったら分かりやすい画像が撮れるか」を頭の中でイメージするんや。漠然と撮影しててもスキルは上がらへんで。

せやから見た事がある、経験があるっちゅーのは重要やな。

ちょっと話しの方向がずれたけど、以下が読影のポイントや。

  • 茎捻転の特定(多断面から観察する)
  • 虚血や壊死の判定には造影効果によって判断する(筋腫は比較的多血性)

実際の症例

40代 女性 腹痛精査

実際の画像を見ていこか。

有茎性(広基性)の漿膜下筋腫を認めるのと、DWIが高信号、ADCが低信号、造影効果無しなどの画像所見から茎捻転疑いとなった例や。

造影効果があらへんから、少なくとも虚血の状態にはなってるのが分かるで。

骨盤MRI 子宮筋腫捻転 2方向
左上段からT2WI、T1WI、T2FS、DWI、下段左からADC、T2FS-sag、CE、CE-sag

30代 女性 筋腫疑いで精査

別症例や。30代女性で子宮筋腫精査や。子宮から筋腫に繋がる所に茎を認めて、そこが捻転してるのが分かるやろ。

造影効果はあらへんから少なくとも虚血の状態にはなってるな。

単純検査の時点で、この捻転ポイントに気が付けるかが重要や。ちなみにCTやとなかなか分からん事が多いで。

骨盤MRI 子宮筋腫捻転
左からT2WI、T2FS-sag、CE

鑑別診断のポイント

婦人科領域の急性腹症

次に鑑別診断についてやけど、婦人科領域の急性腹症で鑑別が必要なのは卵巣腫瘍茎捻転と子宮筋腫赤色変性などや。

卵巣腫瘍茎捻転は正常卵巣を同定する事がカギになるで。

赤色変性は筋腫内に出血性病変(T1WIで高信号)を認める事から鑑別が可能やで。

他にも卵巣線維腫や莢膜細胞腫は子宮筋腫と同じような信号パターンを示すから間違えんように注意やで。

まとめ

今日は子宮筋腫茎捻転をレクチャーしたで。ポイントは2つや。

女性の急性腹症の原因の一つ

子宮筋腫茎捻転は漿膜下筋腫が最も高頻度

子宮と連続する捻転軸があったら造影効果の有無も確認する

こんな感じや。捻転から虚血、壊死、感染、敗血症までなると致死的になるで。

救急をやってる施設やあらへんとあまり遭遇する機会はあらへんかもしれん。でも偶然見つかる事も稀にあんねん。せやから画像所見を知っておくのは重要やで。

さて、今日はこんな感じにしよかな。

ほな、精進しいやー!