もくじ
部下の育成方法
昔の育成方法では今は通用しない?
自分が受けてきた方法が今の時代では通じない。若い人との価値観が合わない。イメージ通りにいかない。積極性が感じられない・・・
このような事で部下の育成方法について悩んでませんか?
今はちょっとの事でも簡単にパワハラと言われるようになりました。そのため育成担当や上司は、言うべき所で厳しく言えないという事が起きていると聞きます。しかしこれは中長期的に見ると、本人のためにならないばかりか、会社の成長にもなっていません。必要以上の指導や根拠の無い説教は論外ですが、言うべき時、つまり部下が間違いを侵した時に指導をしておかないと、将来的にその若手が指導役になった時にどのような事が起きるかは想像に難くありません。
平成の初期まではスパルタだった育成
一方で今の40代後半は覚えがあるかもしれませんが、1回教えて、2回目からは実際にやってもらう。3回目で出来なかったら鬼詰め。
今では信じられないかもしれませんが、このような育成方法をやっていた時代もありました。昔はそれが当たり前だったので、誰も疑問に思わなかったのです。むしろ、これが出来ない人はダメなヤツという烙印を押されたりもしていました。現代でこのような育成をしたら、1発でアウトです。良くて転職です。それくらい時代は変わったのです。
今はこの時代の反動とも言えるのかもしれませんね。
1番の目的は会社が成長出来る下地を作る事
ここで1番の目的を確認しておきましょう。何のために入社して育成するのか。それは会社のためです。会社が成長するためとも言い替える事が出来るかもしれません。会社とはなにか?
そもそも会社とは何でしょうか?それは、同じ目的を持った人達が集まった集団です。この目的は会社によって様々ですが、共通しているのは、誰かの悩みを解決するものを扱っているという点です。
悩みを解決するその対価としてお金が支払われています。つまり会社が成長するというのは、多くの人の悩みを解決するとも言えるのです。
そのためには多くの作業量をこなせる人を育てる必要があるかもしれません。新規アイデアを出せるような人を育成しなければいけないかもしれません。管理者を育てなきゃいけないかもしれません。でもミクロ的に見れば、各々育成する目的は違いますが、マクロ的に見ると会社の成長というところに行き着くのです。そのために会社はまだ半人前にもなっていない新卒を雇用し、育成するのです。言ってみれば将来のための投資とも言えますね。こういった観点からすると目指すべきゴールは組織やチームの成長だという事が分かります。育成方法は目的じゃなくて手段になるのです。ただ世の中には育成方法を知る事が目的になってしまっている人が多いように見えます。
若手育成の注意点
次に若手育成における重要な点を確認していきましょう。若手育成で重要なのは次の2つです。
- 育成環境
- 日頃からのコミュニケーション
順番に見ていきましょう。
育成環境のマトリクス
まずは育成環境についてです。環境は大切な要素です。いくら個人のポテンシャルが高くても環境が合っていないと十分に成長してもらう事が出来ません。
育成環境には色々なパターンがあると思いますが、今回は世話焼き度を「放置-お節介」、業務量を「緩い-厳しい」として、この2軸で考えてみましょう。だいたい次のような形になると思います。
左上のゾーンは個々への業務量配分を間違えなければ理想の環境です。1番成長しやすい下地が整っています。ここで全く成長出来ない人はそうそういません。ここで成長出来なかったら選んだ業種が間違っている可能性があるので、さっさと転職しましょう。
左下のゾーンはベンチャー企業のようなイメージです。業務量が多いけど人が少ないので自分がやらざるを得ない。これは成長意欲が高い人はガンガン成長出来ます。本人のポテンシャル次第ですが、ここが1番大化けするゾーンかもしれません。
右上のゾーンですが、これは企業が現状維持を望んでいる場合に多いです。昔ながらの町医者の平日午後みたいなイメージでしょうか。仕事内容は基本的にルーチンの繰り返しです。一定レベルまで成長すると頭打ちになります。それ以上の成長を望むなら転職するしかありません。
右下は書くまでもありませんね。成長という点から見ると1番いてはいけないゾーンです。
こう見ると成長には、一定量以上の業務量が必要だという事が分かります。つまり、やらなきゃ成長はしないのです。
いくら個人のポテンシャルが高くても仕事が無ければ成長は出来ません。そしてもう1つ重要なのが、日頃のコミュニケーションがあるかどうかです。実はパワハラとそうでない境目はこれがあるかないかの差だったりします。
日頃からのコミュニケーションの重要性
普段は放置プレイで何かあった時だけ説教しに来る。下からの提案は完全にスルーしてるのに、いざ問題が発生したら慌てて対応する。基本的に部下に関心が無い。
どうでしょうか。完全に上司ガチャ失敗ですね。部下を信頼していると言えば聞こえはいいですが悪く言えば無関心です。これらの問題点は何でしょうか?それは普段のコミュニケーションの有無です。
基本的にパワハラと言われる類いのものは、相手(上司)が自分(部下)の事を何も分かっていないと思われる事から発生します。つまりこの裏にあるのが自分を知っておいて欲しいという承認欲求。ここがちゃんと満たせていれば、多少強い言葉で詰められても(話しに筋が通っていれば)部下としては納得出来る事もあります。人は感情が大きく影響する生き物なので、納得がないと動けません。人は他人対しては厳しくなる
人は知り合いに対しては甘くなりますが、他人に対しては厳しいです。集合住宅で上の部屋がうるさくても、普段から挨拶を交わして家族構成などを知っていれば、子供が遊んでいるんだなと思って大目に見てくれる事もあります。これが全く見知らぬ人だった場合はクレームになります。
育成には今も昔もコミュニケーションが重要
こう見ると、いかに普段のコミュニケーションが重要かが分かると思います。なお注意点があって、放っておいても部下からはコミュニケーションを取ってきません。自分が若手だった頃を思い出してみると分かりますよね。上司に話しかけるというのは中々勇気がいる事なのです。なので上司側からコミュニケーションを取る必要があります。この辺りは1日1回は必ず声かけするなどのルール化してしまうのも手です。実はこれも先ほどの表のお節介度に関係してきてて、若手育成には適正な業務量とコミュニケーションが必要なんです。
コミュニケーションの注意点
次にコミュニケーションの内容についてですが、雑談のみでOKという訳ではありません。雑談は確かに有効な方法で、適度に自己開示をすれば親密度が上がります。ただ雑談が目的になってしまっている場合は注意が必要です。これでは本来の目的である、部下の成長が見込めません。会社は友達を作りに来てきる所ではなく仕事をしに来ている場所です。雑談によるアイスブレイクは重要ですが、雑談は手段であって目的ではないのです。
育成の実際
ゆとりか詰め込み型か
一時期、義務教育の過程により、ゆとり世代、詰め込み世代なんていう言葉が流行りました。
育成においてもあまりプレッシャーをかけずに育成するゆとり型と、ガンガンチャレンジさせて成長させる詰め込み型の2パターンがあります。ただ若手の成長においては、ゆとり型とか詰め込み型、どちらがベストなのかという議論はあまり意味がありません。なぜなら個々によって能力が違うからです。同じ業務量でも、ある若手は楽勝なのに対して、違う若手は業務過多かもしれません。ある人は業務ストレス耐性が強いのに対して、ある人は弱いかもしれません。この辺りはその人をよく見て判断する事が必要になります。つまりここでも普段からのコミュニケーションが必要になるんですね。
ゆとり育成と詰め込み育成の特徴
個々で育成方法が違ってくるのは上は述べた通りです。10人いれば10通りの価値観や能力を持っているので個々に合わせた育成方法、言ってみればオーダーメイド育成が必要になります。ただこれも各々の育成の特徴を知っておかなければ適応の判断出来ません。各々の育成方法のメリットデメリットについては次のように纏められます。
ゆとり型の1番の問題点は、プレッシャーがかかる場面を経験しにくいという事です。能力が大きく伸びる時というのは、例外無く仕事上で大きなプレッシャーがあってそれを乗り越えた時です。ある程度追い込まれた時に自分の頭で考えて、実行した時に始めて成長するのです。この時の結果は成功でも失敗でもどちらでもいいのですが、自分の頭で考えるという事が必要なのです。自分の頭で考えているので、結果と期待値に対してのギャップも細かな所まで気がつきます。これが成長の元になるのです。一方で詰め込み型はこの点は経験出来るチャンスが多いのですが、相手のキャパシティを見誤ると必要以上に追い込んでしまったという形にもなるので注意が必要です。プレッシャー耐性が無いと心身のバランスを崩してしまう事もありえます。そういった点で見ると、上司側の力量も必要な育成方法だと言えますね。ただ上手くハマると成長度合いは大きいです。1年で驚く程成長する若手もいます。
ただ重要なのはあくまで個々のタイプや環境、コミュニケーションの有無なので上記は参考程度が良いかもしれません。またどちらにも当てはまるのですが、出来た所や足りない所のフィードバックをしましょう。人はフィードバックされて始めて成長します。そうする事で自己肯定感が上がり部下が成長していきます。
一方でHSPと呼ばれる人達も一定数います。このような人達は特に感受性が高いと言われています。フィードバックには十分配慮する必要があります。
育成の実例を通して
実際に何人も育成してきた中で気がついた事があります。それは今の若手の育成はやはり難しいという事。
我々の施設でも過去には昭和の部活動みたいなやり方で育成した時期もありましたが、その時は成長出来る人と出来ない人が両極端でした。当然ついてこれない人は居場所が無くなり退職していきます。段々と退職者数が入職者数を上回るようになり、業務を回す適性人数以下になる事が多くなりました。
これを改善するべくある時期から実験的にお節介型にシフトしてきました。やり方は何度もレクチャーし、質問点も丁寧にヒアリングし不安点を完全に潰していくスタイルです。やるべき事のレールも敷きました。結果、このやり方だと満遍なく成長する一方で、突出した人材は出て来ませんでした。採用のレベルを特に変えたという事はないので、はやり育成方法が関係していると思われます。
そしてお節介型のもう1つの問題点として、本人達の責任感(自分事化)が進まないという弊害が出る事が分かりました。詰め込みと比較すると、積極性が見られる場面が明らかに少なくなったのです。両方とも原因は受け身の姿勢の割合が高くなったものと考えられました。あまり過保護なのもダメなようです。
アンケートなど色々と検証した結果、実はこちら側が思っている以上に若手は成長意欲があり、早く実践で結果を出したいと思っている事が分かりました。また緩すぎる環境も、逆に退職の理由の1つになっているとの事でした。
それを踏まえて、実験的に若手だけでやらざるを得ない環境を作り、試してみたところ大きく成長するケースが何度もありました。一応補足をしておくと、表面上は放置に近い形ですが、適切な難易度にして、いつでもヘルプに行けるように常に監視している状態にはしていました。またフィードバックも必ず実施しました。
このように適度に追い込まれると若手は成長するのです。重要なのは、ゆとり、詰め込みのどちらかではなく、双方の割合を変化させる事なんだと思います。この割合を個々の能力によって変えていく。そんな育成がベストなのかなと思います。ただそれには育成者の力量が必要とされるのは言うまでもありません。
まとめ
育成方法のまとめ
今回は部下の育成方法について述べてきました。個人的に考える部下育成のポイントは3つです。
- 部下の能力やストレス耐性を考慮したタイプ分類
- 適度な業務負荷がかけられる環境(ゆとりと詰め込みの比率を変える)
- 日頃のコミュニケーション(信頼関係の構築)
基本的にこれらがあれば部下は成長します。日頃からコミュニケーションを取り部下の能力値を見極める。その情報を元に適度な難易度や負荷の業務をチャレンジさせる。その結果、成長が実感出来れば自己肯定感も上がり、フィードバックする事で承認欲求も満たされる。次はもう少し上の課題にチャレンジしようという気になる。
もちろん当然若手のステージによって多少の変化はありますが、基本的にはこのサイクルにいかに早く入れるかになります。
若手の育成で悩んでいる人は、自分の施設やチームはこれらの内容が出来ているかを確認してみではどうでしょうか?
参考になれば幸いです。