外傷性くも膜下出血(traumatic subarachnoid hemorrhage)

ワシな、読影用のモニタを新調しようと思ててん。ほんで、ええ感じのヤツがあってちょっと勉強してもらえるかなと思て先方さんにメール送ったんよ。そこで事件勃発や!

今度は何をやらかしたんですか?

普段メールするときに相手の名前の後に役職名をつけたりするやん?

今回の相手が部長さんやってんけど、そこでなワシ・・・

「部長」って書かなアカンとこを、「武将」と書いて送ってしもうたんよ!

しかもワシの上司もひどいんやで。CCに入れとったのをいい事に、わざわざワシだけ宛先にして、

「プオーン!出陣じゃー!馬を持てーい!殿が見積もりの戦を仕掛けるぞー!天下分け目の大戦やー!殿、拙者は何をすればよろしいでござるか?ホラ貝はいるでござるか?」

とか送ってくんねんで!ワシはちゃんと書いたつもりやん?最初、何の事が分からんかったんよ。コイツ頭おかしなったんちゃうか?ってな。そしたらやらかしたのはワシやってん。

しかもや!先方の部長さんも、

「貴殿からの文、誠にありがたく候。本件については我が殿と軍議をしたく、しばしお時間待たれよ」

とか返してくんねん。

みんなノリがいいじゃないですか。

ちゃうねん!ワシは笑かすのは好きやけど、笑われるのはちょっと違うねん。ちょっと違うねん!

外傷性くも膜下出血(traumatic subarachnoid hemorrhage)とは

外傷性くも膜下出血の概要

そんな訳で、今日はちょっとテンション下がり気味やねん。そこんとこ配慮を頼むわ。

御意!畏まり候!

さっそくイジんなや!ったく・・・どこでそんな高等技術身につけたん?

さて、今日から外傷シリーズをやっていこかな。その中でくも膜下出血から話していくわ。

外傷性くも膜下出血やけど、読んで字の通り頭部外傷が原因でくも膜下出血が起きた状態や。頭部の挫創や皮下出血と共にくも膜下出血があると外傷性が疑われるで。

簡単な解剖を話しておくと、頭部は外側から皮膚、頭蓋骨、髄膜(硬膜、くも膜、くも膜下腔、軟膜)、脳の順にあんねん。くも膜下出血は、その名の通り何らかの原因でくも膜下腔に出血を来している状態やで。出血によって脳が虚血状態になったりすると生命の維持にも関係してくるんやで。

外傷性クモ膜下出血が起きる仕組み

くも膜下出血は別の脳出血でも話してるから、そっちも参考にしてみてな。

外傷性くも膜下出血の原因

くも膜下出血は動脈瘤の破裂によるものと外傷が原因の場合を分けてるんや。前者をくも膜下出血、後者を外傷性くも膜下出血と呼ぶねんで。

外傷性の原因としては転倒や高エネルギー外傷による外傷性血管損傷(動脈解離、仮性動脈瘤)なんかがあるで。

この中でも外傷性動脈解離は椎骨動脈に多くて頭蓋骨骨折も伴う事が多いらしいな。仮性動脈瘤の発生部位は外傷機転と関係してて、頭蓋底骨折やと内頚動脈、脳底動脈に、鈍的動脈損傷の場合は、それより末梢で瘤を認める事が多いんや。

また一言で外傷性くも膜下出血と言っても架橋静脈の破綻のみの場合は予後良好な事が多くて、むしろ併存する脳挫傷や脳損傷の方が予後に関係する事が多いで。

ちなみに架橋静脈ってのは、脳表にある静脈の事や。覚えとき。

他の特徴として、外傷性くも膜下出血は通常のくも膜下出血と違って出血源が分からへん事も多いねんて。出血量も少ない傾向にあるらしいで。

臨床症状と治療法

臨床症状は基本的に頭痛や。外傷性くも膜下出血の他に脳挫傷なんかがあると運動麻痺や言語障害が出てきたりするで。

治療法は出血量が少ない場合は保存療法になる事が多いとの事や。出血量が多い場合は脳血管攣縮という一過性の血管収縮になる事もあるから、それの治療も並行して行うとの事や。

  • 外傷性くも膜下出血は動脈瘤破裂の場合と比較して出血量が少ない傾向にある
  • 出血源を判明させるのは難しい事が多い
  • 出血量が少ない場合は基本的に保存療法

画像所見

外傷性くも膜下出血の画像所見

続いて画像所見やけども、基本的に頭部の時にやったくも膜下出血と同じや。受傷直後の画像やと脳脊髄腔に高吸収を認めるで。シルビウス裂とか鞍上槽なんかをチェックしてみてーや。

この時に上でも話したけど、随伴する脳挫傷なんかもチェックやで。予後に関係してくるからな。

他の特徴としては、くも膜下出血が微量だった場合は発症後数日で洗い出されで高吸収域が無くなる事もあるで。

また後日に交通性水頭症を来す事があるから定期的に画像診断によるフォローが必要やな。

実際の症例

実際の症例や。

頭部CT画像 外傷性クモ膜下出血
Case courtesy of Henry Knipe, Radiopaedia.org

鑑別診断のポイント

鑑別診断について

さて鑑別診断やけど、これは非外傷性くも膜下出血があるで。

1番注意せなアカンのが、脳動脈瘤破裂からのくも膜下出血で転倒し外傷したパターンや。これはちゃんと診断せーへんとアカン。外傷性くも膜下出血と診断して保存療法になっても後日動脈瘤の再破裂して実は外傷性やあらへんでしたという事にもなりかねへんからな。

外傷性くも膜下出血は外傷部位か、もしくは外傷部位と反対側に認める事が多いんやけど、動脈瘤破裂によるくも膜下出血の好発部位はシルビウス裂や鞍上槽や。これらと鑑別が難しい場合は、適時MRIやアンギオを実施したりするで。

他には高度な脳浮腫で脳溝の血管が高信号を認める事があって、くも膜下出血との鑑別が問題になるケースがあるで。これをpseudo-subarachnoid hemorrhageと呼んでるわ。

まとめ

今日は外傷性くも膜下出血をレクチャーしたで。ポイントは2つやな。

外傷性によるものか動脈瘤破裂によるものかを鑑別する

基本的に画像所見は動脈瘤破裂の時と同じ(ただ出血量が少なく所見が微細な事も多い)

こんな感じや。外傷性か否か、ここを間違えると、後日再出血したとかにもなりかねへんからな。他には患者エピソードも確認する事も重要や。

後は高度な脳浮腫で脳溝の血管が高吸収を示すpseudo subarachnoid hemorrhage(pseudo SAH)も注意が必要やで。これも知っているのと、知らないのでは大きな違いがある点やで。

ちなみにこれは低酸素脳症の時に出てきたで。確認してみてや。

なんか見た事があると思ったら以前に出てきてたんですね。承知仕った!

イジった?

イジってへん!

ウソや!もう今日は終わりにするで。
ほな、精進しいやー!