三角線維軟骨複合体損傷(trianglar fibrocartilage complex:TFCC injury)

先生が「おっ!」って思う人ってどんな人ですか?

そんなん1にも2にも行動するヤツに決まってるやろ。

三角線維軟骨複合体損傷(trianglar fibrocartilage complex:TFCC injury)とは

三角線維軟骨複合体損傷の概要

さて、今日は三角線維軟骨複合体損傷、通称TFCC損傷についてや。

TFCC損傷は比較的よく遭遇する所見やで。まずTFCCはどんなものかからやな。

これは尺骨とその付近の骨との線維軟骨の複合体組織の事なんや。TFCCっていう靱帯や腱がある訳やないで。

つまり複数の靱帯から構成されてる集合体ってイメージが近いな。

TFCC損傷はこのうちのどれかが損傷や断裂になった状態の事を指すねん。

  • TFCC(三角線維軟骨複合体)が何らかの原因で損傷すること
  • TFCCは複数の靭帯などから構成される
  • 手首を使う(捻る)スポーツで負傷する事が多い(野球、テニスなど)
  • 発症年齢は45歳以下の男性に多い

TFCCの役割としては、手首(小指側)を動かす時に衝撃を吸収したり、小指側の安定や支持をしたりしてんねんで。

手関節の解剖

手関節の解剖

次に手関節やTFCCについての解剖や。

特にTFCCの解剖は正直、初学者にとってはメチャメチャ分かりにくいで。教科書によっていろんな言い方があったりするからな。

TFCCの構成内容についてまとめたから確認しておいてくれや。

【TFCC構成内容】

  1. 関節円板(triangular fibrocartillage:TFC) ※TFCは関節円板+背側橈尺靱帯+掌側橈尺靱帯と呼ぶ場合もある
  2. メニスカス類似体(meniscus homologue:MH)
  3. 三角靭帯(triangular ligament)
  4. 尺骨三角靭帯(ulnotriquetral ligament)
  5. 尺骨月状骨靭帯(ulnolunate ligament)
  6. 尺側側副靭帯(ulnar collateral ligament)
  7. 尺側手根伸筋腱鞘

この中やと、TFCとメニスカス靱帯がMRIで見るべきポイントにもなるから覚えておくんやで。

手関節解剖
TFCC解剖
①橈側側副靭帯(Radial collateral ligament) ②長母指外転筋腱(Abductor pollicis longus tendon) ③短母指伸筋腱(Extensor pollicis brevis tendon)
④関節円盤/三角繊維軟骨(disk proper/ triangular fibrocartilage) ⑤三角靭帯(Triangular ligament) ⑥尺骨手根靭帯/腱(ulnar carpal ligament)
⑦尺側側副靭帯(ulnar collateral ligament) ⑧メニスカス類似体(meniscus homologue)
TFCCの機能(役割)

TFCCには次のような機能があるで。

  • 遠位橈尺関節の安定性維持
  • 手関節尺側の支持
  • 手関節尺側の衝撃の吸収

つまり手関節尺側の背屈、回旋運動のサポートと衝撃の吸収剤としての役割があるって事やな。

三角線維軟骨複合体損傷の原因と臨床症状

TFCC損傷の原因

TFCC損傷の原因は大きく分けて外傷と変性の2つや。

外傷の場合はスポーツや転倒なんかやな。部活動なんかでオーバーユースで手首に負荷がかかりすぎて損傷してまうねん。

手関節尺側に対して頻繁に負荷がかかるような動作、つまりグリップ動作のような慢性外傷が原因になる事が多いで。

変性は加齢などやな。高齢者やと症状が無くても画像上で所見があったりする事もしばしばや。

他に先天的に橈骨よりも尺骨が長い事でTFCCが損傷しやすい人もおるらしいな。

臨床症状

臨床症状は尺骨付近の痛みや。

場所柄、手首を捻る動作の時に痛みを覚える事が多いで。

外傷の断裂は橈骨付着部に、変性の場合は中央に多くて、かつ変性の場合は症状が無い場合もあるとの事や。

治療法

治療法はまずは保存療法で、それでも効果があらへん時は外科的療法になるで。

保存療法はテーピングなどで固定して該当部位に負担がかからないようにして経過を見んねん。

外科的療法は修復術や再建術、尺骨が長いのが原因の場合は尺骨を短縮する(骨切り術)も行われる事があるらしいで。

画像所見

三角線維軟骨複合体損傷の画像所見

次に画像所見についてやで。ざっとまとめると・・・

  • 単純写真では診断が困難(っていうかムリ)
  • MRIではTFCの菲薄化や変形、不連続や内部の信号上昇など、靱帯損傷の所見を呈する
  • 損傷の分類にはPalmaer分類が使われている

こんな感じや。

単純写真やとまず診断出来ん。軟部組織の損傷やからな。

MRIやと損傷の場合はTFCの菲薄化や変形、不連続、内部の信号上昇が認められるで。

これらの診断にはT2スター画像が有効だったりするから是非撮影してみてくれや。

Palmer分類

あとは損傷の分類方法でPalmer分類ってのが使われてるで。所見と合わせて記載しとくわ。個人的には技師はんは分類までは必須で覚える必要は無いんちゃうかなとも思うで。もちろん覚えとった方がベターではあるんやけども。

Palmer分類画像所見
ClassⅠ 外傷性ⅠA:三角線維軟骨(関節円板)穿孔
ⅠB:尺骨付着部の剥離(尺骨茎状突起の骨折を伴う事もある)
ⅠC:月状骨・三角骨付着部の剥離
ⅠD:橈骨付着部の剥離
ClassⅡ 変性ⅡA:TFC摩耗
ⅡB:TFC摩耗と月状骨・尺骨の軟骨変性
ⅡC:TFC穿孔と月状骨・尺骨の軟骨変性
ⅡD:TFC穿孔と月状骨・尺骨の軟骨変性、月状骨三角骨靱帯穿孔
ⅡE:TFC穿孔と月状骨・尺骨の軟骨変性と月状骨・三角骨靱帯穿孔と尺骨手根骨間の関節炎

実際の症例

50代女性で転倒した際に手をついたとの事で精査になった例や。

TFCに穿孔疑いなんやけども脂肪抑制画像で信号上昇を認めん事から外傷性は否定されて、かつ月状骨や尺骨にも変性を認めへんかってん。

Palmer分類でⅡAの診断となった例やで。

手関節MRI-TFC変性

次は50代男性で屋外での作業中に手首の疼痛が発症し精査となった例や。

背側尺骨靱帯が損傷しててTFCC損傷の診断になった例やで。脂肪抑制画像で信号上昇が認められると思う。

手関節MRI-TFC損傷

鑑別診断のポイント

尺骨突き上げ症候群(ulnolunate abutment syndrome)

次に鑑別診断のポイントやな。鑑別診断というよりTFCC損傷の原因の1つである尺骨突き上げ症候群(ulnolunate abutment syndrome)について話ておこうか。

概要は次の通りや。

  • 尺骨頭と月状骨、もしくは三角骨の衝突が原因でTFCに損傷を来す
  • 尺骨が橈骨に比較して長い場合に起こる事が多い
  • 月状骨や三角骨の近位側、尺骨遠位端に骨硬化や嚢胞性変化を来す
  • スポーツや労働作業が原因となる事もある
手関節MRI-尺骨突き上げ症候群

他には腱鞘炎なんかと鑑別が必要な時があるで。腱鞘炎についてはこっちで確認してみてーな。

近しい場所に疼痛を認めるものとしてキーンベック病もあるで。

この辺りも合わせて確認しておいてもらえるとええで。

まとめ

今日はTFCC損傷についてレクチャーしたで。ポイントは3つや。

TFCCは複数の靱帯などから成る複合体の事

外傷と変性によるものがあり、外傷性(スポーツ外傷)のケースが多い

TFCC損傷が疑われたら少なくともTFCとメニスカス類似体は観察する

こんな感じやな。TFCC損傷疑いでのMRI検査はよく遭遇すると思う。でもTFCCの詳しい解剖までは知ってる人は専門医以外やと少ないんちゃうかな。

せっかくこの場で学んだんやから行動せんともったいないで。行動するんが1番記憶に定着する方法やからバンバンやるとええ。大丈夫や、最終的な診断をする訳やないから、失敗してもリスクゼロやん。

知識だけやアカンねん。行動して自分なりの知見をためて初めて身になんねんで。

まずは行動する事や!

ほな、精進しいやー!